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壊れた希望


          ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽




「【アイリス】というパーティー名は、みんなの希望になりたいっていう、俺の願いを聴いて、博識なライトが考えてくれた名前なんだ。」


 俺をダンジョンへ連れ出してくれたあの日、ケインさんが俺に話してくれた。

「みんなの希望になりたい」……ケインさんが目指した英雄の姿に、俺は憧れ、尊敬したのだ。


 そのケインさんが、ヴァンパイアロードと遭遇して行方不明になっている。パーティーメンバーのうち、パーンさんとユウさんも行方不明だそうだ。


 ブラースさんの話によれば、残りの二人のメンバーはなんとか生還したが、パーティーの解散届けを出した後、冒険者としての活動をやめてしまっているらしい。二人とも、怪我は大したことはなかったのだが、他の3人を残して帰還した事で、かなり精神的に不安定になっているという。


 俺は、残った2人のメンバー、魔術師のライトさんと聖職者のソーンさんの現在の居場所を聞いたが、ソーンさんは恐らく太陽神の教会にいるが、ライトさんの居場所はわからないとの事だった。


 神殿………正直、行きたくはないが、覚悟をきめて、俺はソーンを尋ねて、まずは太陽神の神殿を尋ねていた。



          ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



「こんにちは……。こちらに、ソーンさんがいらっしゃると聞いてきたのですが……。」



「はい、どちら様……でしょうか……?」


 太陽神の教会に行くと、予想通りの反応だった。

 白い髪、白い瞳の俺をみた教会の聖職者は、いかにもな嫌悪の表情を隠さず、眉間に皺を寄せながら言い放つ。


「ここは、太陽神の教会だ。お前のような、魔物の血を引く輩の来るところでは無い。帰りたまえ。」


 ……うわぁ……、あからさまだ。


 魔物の血を引いているって……、確かに使徒の眷属の子供だけどさ!……あれ、それって、魔物の血を引いてるってこと? 確かに両親は人間で、だけど使徒の眷属にされて……。


 まぁ、今はそんなこと関係ない!



「すいませんが、ソーンさんにお取り次ぎください! どうしてもお話ししなければならないのです!」


 罵倒されようが、ここは引くことはできない。最低限、ソーンさんから探索時の経緯を聞かせてもらうか、ライトさんの居場所を聞かないと、この先、情報無しでケインさんを探さなくてはならなくなる。

 だって、ケインさん達は、あくまでも行方不明なだけであって、死亡を確認されたわけではないのだから!


「なんだって言うんだ! 取り次ぎなどしない!」


 目の前の聖職者の男は、まったく聞く耳を持たない態度で俺を追い返そうとする、

 しかし、引けないっていってるだろ!


『ちょっと! なんでそんなにヒロの事を毛嫌いするのよ! ソーンてのに合わせなさいよ!』


 おしゃべり妖精の声が響く。すると、教会の奥から、ひとりの女性が顔を出した。


「なんです?随分と騒がしい……。あら?あなたは……。」


 騒いでみるもんだ。顔を見せた女性こそ、ソーンだったのだ。



            ♢



「――それで……、ナナシ君だったわね。態々、あなたを嫌う聖職者に会いに来るなんて、いったいどんなご用事なのかしら。」


 一応知り合いという事で教会の一室に通されたが、彼女は、あの時と同じように、俺に対しての嫌悪を隠さない。



「あ、あの……、ケインさん達が行方不明になったとお聞きしましつて……。」


「―――。」



「それで、良かったらその時の場所や状況を教えていただけないかと……。」


「―――。」



 目の前の聖職者からは返事がない。顔は俯いたまま、視線は目の前に組んだ手をじっと見つめている。心なしか、以前に会った時よりやつれたようにも見える。



「……なに!? 私たちの醜態を笑いにきたの!? それとも、ケイン達を残して逃げてきた私を責めるために来たの!?」


 突然、弾けたように大声で叫び始めたソーンに、俺は諭すように話し続けた。


「ソーンさん。僕はそんなつもりは全くありません。冒険者は危険な仕事です。常に生命の危険と隣り合わせの仕事だと知っています。今回、僕があなたを尋ねてきたのは、なんとかケインさんを助けてあげられないかと思ったからなんです!」


 目の前の聖職者は、鬼のような表情で叫ぶ。


「助けるですって!? ケイン達が行方不明になってから、何日経っていると思うの? もう2週間よ? 生きているわけないじゃない!」


 テーブルに突っ伏して泣き出すソーンに、俺ははっきりとした態度で応える。



「2週間ですか……、でも、まだ誰もケインさんたちの死を確認したわけではありません。可能性がある限り、僕は諦めません。だから、その時の事を教えて下さい! 僕が助けに行きます。」



 そう、俺はまだ諦めない――

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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