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若筍冒険者とレッチェタウン


             ♢



 俺は今、レッチェタウンへ向かって歩いている。


 今更慌ててもしょうがないのかもしれないが、ナギちゃんが行方不明になってしまったからには、早くヴァンパイアロードに会って協力を仰がなくてはならない。


 正直、フェンリルさんの話を聞いて、安心して気抜けていた点は否めない。



『――まぁ、ブラドに限ってヒルコの嫌がらせに反応していないって事はないだろうさ。アイツの事だ。もう既にその嬢ちゃんの所に言ってるんじゃねぇか。アイツが一番率先してヒルコの企みを防ぐために動いているわけだし――』


 フェンリルさんは、ヴァンパイアロードのことを随分と信頼しきっている様子だった。それだけの長い間、二人は、人知れずヒルコの攻撃を防ぎ続けていたのだろう。


 しかし、今回はヴァンパイアロードが動かなかった。いや、動けなかったのかもしれない。そこは、当人に会って確かめるしかない。

 どちらにせよ、ナギちゃんを探し出し、ヴァンパイアロードの元に連れていかなくてはならないのだ。眷属にしてもらい、助けてもらう為に……。

 

 その為にも、まずは一度ヴァンパイアロードに会って、話をしてみようと思う。ナギちゃんを連れて行っても、協力してくれない可能性も出てきたからだ。フェンリルさんの話からすれば、そんなことは無いと思いたいが……。


 俺は、自分でも気付かぬうちに、かなりの早足となって、レッチェタウンへの道のりを進んでいた。



             ♢



――レッチェタウン


「魂を悪なる神にささげる右手」と呼ばれる、ダンジョン=レッチェアームを中心に発展した街である。

 不死身のヴァンパイアロードが、悪なる神の右手を守護し、気まぐれに出没する、ヴァンパイアの王に魂を奪われた者は数知れず……。太古の昔より存在しているが、未だにダンジョンの最奥に辿り着いたものはいない。



             ♢



 俺はレッチェタウンに到着してすぐに、冒険者ギルドを目指した。

 全く土地勘もない為、しっかりとダンジョンの情報を聞くためだ。合わせて、ケインさん達の情報も貰おうと考えている。



『リンカータウンとたいして変わらないわね。』


 旅の間、ほとんどリュックの中で眠っていたおしゃべり妖精は、街に着いたのがわかった途端に外に出て飛び回り始める。

 珍しい妖精族を見かけた街の人々は、すれ違いざま、驚いた顔で俺たちを振り返っていた。


 流石に俺の事を知らないせいか、俺に注目が集まることはない。

 ところ変われば、俺を見る人々の目も変わるのだろうか……。

 


             ♢



 街の中心部にある広場、そこに隣接して冒険者ギルドは建っていた。ダンジョンがある広場を中心に街が広がっているのは、リンカータウンと同じ成り立ちだからだろう。


 初めて入るレッチェタウンの冒険者ギルドの雰囲気に、少し緊張しながら、受付のカウンターを目指す。


「す、すいません。リンカータウンから来たばかりで、こちらのギルドは初めてなのですが、ブラースさんはいらっしゃいますか?」


 カウンターの受付嬢は、「少しお待ちを」と言って、後方の机で事務作業をしている女性へ声をかけている。


「私がブラースですが、何か御用でしょうか?」


 受付嬢に呼ばれてやってきた女性は、キリっとした、いかにもキャリアウーマンをしている感じのスーツの似合う女性だった。


 俺は、フィリアさんからの紹介状を渡し、色々と情報が欲しい旨を伝える。

 ブラースは、紹介状を読んで机に置くと、俺を隣のカウンターへ案内した。


「フィリアとは同期の仲なんです。あの子、相変わらずカウンターに出てるのね。いい加減、昇進して指導側に回っていてもも良いはずなのに。まぁ、フィリアらしいか。」


 そんな話をしながら、ブラースさんに色々と質問した。


 まず、ダンジョン=レッチェアームと守護者のヴァンパイアロードについて。


 このダンジョンは、スケルトンやグールなど、ゾンビ系の魔物が中心で、聖職者の浄化の力や魔術師の火系統の魔法がないと、奥に進むことは難しいらしい。俺が挑むとしたら、火蜥蜴に頼らなければならないだろう。


 ヴァンパイアロードについては、実は遭遇した冒険者はかなり多いらしい。気まぐれにダンジョン内に出現し冒険者の前に姿を表すのだが、大体の場合、「低層で大人しく魔石集めをして満足しろ」と忠告し、こちらから攻撃しなければ、襲われずに見逃されるらしい。


 ただ、探索者の目的の一つには、守護者の討伐がある為、ヴァンパイアロードに遭遇すれば、ほぼ確実に戦闘になってしまう。それで返り討ちにあい、パーティーが崩壊することが多いらしい。でも不思議と全滅することは少ないという。

 

 そのヴァンパイアロードだが、実は最近、あるパーティーが遭遇し、かなりの深手を負わせたそうだ。ただ、そのパーティーにも深刻な被害が出ていて、リーダー含め3人が行方不明。2人だけが帰還したのだそうだ。


 もしかしたら、その深手のせいで、ヴァンパイアロードはヒルコの企みに対策を取れなかったのかもしれない。



 もう一つ教えてもらいたかったことがあった。ケインさん達、【アイリス】の同行についてだ。


 ブラースさんにこの名前をだすと、驚いた表情で応えた。


「ヒロさんは、【アイリス】の方々と知り合いなの? ヴァンパイアロードに深手を負わせ、その代償としてリーダーを失い、崩壊してしまったパーティーが、【アイリス】なのよ……。」



――あのケインさんが行方不明だって!?



 恩人の悲報に、俺は頭が真っ白になった……

みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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