精霊箱と魔法のランタン
『おいっ!火蜥蜴、お前はこっちに入ってろ。』
氷狼はそう言うと、小型のランタンを持ってきた。魔力を込めて炎を灯すランタンなのだそうだ。もともと俺の魔力を糧にしているサクヤなら、この魔法のランタンの方が精霊の力も高まるだろうと教えてくれた。
火蜥蜴をランタンに移す代わりに、空いた精霊箱に霜男=ジャックフロストを入れる。冷気の無いところでは存在できないので、この方法が一番よいそうだ。火蜥蜴を火種として持ち歩いていたのと同じ考えだね。
「もしかして、ちっちゃな冷蔵庫になるかも。」
『冷蔵庫? なんだそりゃ? それより、お前は精霊との共感力が高いようだから、そいつと契約してやれ。お前の力になるだろう。』
また、名前……。名前、霜、寒さ、雪、冬……。
「なら、霜男、君の名前はフユキだ。別の世界の冬を司る神様の名前だよ。よろしくね。」
〈―――っ!〉
どうやら気に入ってもらえたらしい。これで四人目の精霊と契約できた。魔力は使うが、きっと役にたってくれるだろう。
『おいっ! 別の世界の神ってのはなんだ? お前は別の世界を知っているのか?』
ドキッ!
まさか、そこに反応されるとは思ってなかった。悪なる神の使徒だもんね。そりゃ、神とか言われたら気になるか……。正直に言うべきか……。
俺は前世の記憶があり、それがこの世界とは別の世界であるとだけ伝えた。
『…………。』
無言が一番怖い……。氷狼はしばらく考えこんだあと、『わかった。』とだけ言って、また説明を始める。
『ダンジョン=レッチェアームに行ったら、霜男にブラドと繋ぎをとらせろ。今日のブラックウルフと同じで、ブラドの部屋までの案内者が来てくれる。お前に協力するように伝えさせるから、安心しろ。』
なんと、それはありがたい。どうすれば良いか見当もついていなかったし。
話が一段落したのを見計らって、俺は氷狼に質問をする。
「あの……、ヒルコとは悪なる使徒の一人という話を聞きました。そして、悪なる神ウカの今世の姿だと。フェンリルさん達は、悪なる神の使徒同士なのに、戦っているのですか?」
『どこでそれを……。まぁ、いい。その話はほとんど本当で、ほとんど嘘だ。だから、俺たちはヒルコとは相容れない。敵同士だ。』
敵同士という部分以外は、全く意味がわからない。
『とにかく、お前はまだまだ実力が足りなさすぎる。しっかり力をつけて、ある程度の実力までいけたら、また色々と教えてやろう。だから、簡単に死んだりするなよ。』
ハッキリと教えてはくれなかった。これは、また恐ろしい話が絡んでいるのか………。まぁ、教える気がないのなら、聞いても無駄だろう。
まずは、ナギちゃんを助ける。ケインさんの様子を確かめる。そこからだ――
♢
俺の荷物は此処に置かせてもらえることになった。
今の俺は、大きなリュックを背負い、リュックの上にケインさんに買ってもらったテント、リュック右に取り付けた鞘にショートソードを差し、左には魔法のランタン。ベルトには麻袋と精霊箱を下げ、右肩から袈裟懸けに水筒を下げている。
まるで登山に出かける重装備。頭の上におしゃべり妖精を座らせて、しっかり探索モードの装備状態だ。
まずは新月村、そしてレッチェタウンにむかう。気合い入れていこう!
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