離れるわけない
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『全く! ヒロのお人好し! おバカ! あなたが貧乏くじを引くことなんてないのに!』
おしゃべり妖精は、新月村から三日月村への移動中、ずっとこの調子で俺を怒り続けていた。
もう面倒見切れないとか、もう知らないとか、何度も俺を突き放すような事を言うが、俺の頭の上から離れようとはしない。
この優しい妖精は、一生懸命に俺の事を考えてくれているのだろう。
「ごめんよ、ベルさん。でも、ナギちゃんもナミちゃんも、助けられるかもしれないのに、何もしないで見捨てるなんて事、僕にはできないよ。」
そして、この旅に同行してくれた2人に言う。
「三日月村でナミちゃんの様子を確認して、その後、リンカータウンの冒険者ギルドに討伐成功の報告をしたら、あとは僕一人でレッチェタウンに向かうよ。ベルさんとアメワは三日月村で待っていてほしいんだ。」
悪なる神に関われば、どんな事が起きるかわからない。危ない橋は、大好きな仲間達には渡らせられない。
『はぁ!? 何言ってるのよ! 私があなたから離れるわけないでしょ!? ついていくに決まってるじゃない!』
「でも、今回はどんな危険があるかわからないんだよ。大事な人を危険に晒すことはできないよ。」
『だめよ! 一緒に行く。 置いて行ったら承知しないから!』
これは、大人しく待っていてはくれないか。
「ヒロ君。私もついていくわよ。一人でできることなんて限られてるの。私は魔術師としては未熟だけど、私にだってできることはあるはずよ。だから、1人で行くなんて言わないで。」
アメワの決意も固いみたい。祟りがあるかもしれないのに……
――でも、ありがとう。二人とも……
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「ダンジョン=レッチェアームの守護者がヴァンパイアロードだと言われているんだ。」
新月村の村長の話によると、
リンカーアームには、フェンリル
レッチェアームには、ヴァンパイアロード
インビジブルシーラには、ハイエルフ
ファーマスフーサには、エンシェントドラゴン
ヘルツプロイベーレには、カオススライム
それぞれ、この国にあるダンジョンには悪なる神の使徒がいて、悪なる神の身体を守り続けていると云われている。
その中のひとつ、ダンジョン=レッチェアームの守護者がヴァンパイアロードだと云う。
あくまでも伝説であり、実際に出会った事がある人がいるかどうかもわからない。
とても手がかりは少ないが、先ずはレッチェタウンに行って調べてみるべきだろう。
のんびりしてらたら、ナギちゃんも、ナミちゃんも謎の仮面の少女となってしまうかもしれない。
俺が遠ざけようとしても、そうさせてくれない二人の仲間と、まだまだ一方通行でのやりとりしか出来ていない三人の精霊たち。そして、俺の中にいるもう1人の俺。
俺に力を与えてくれる仲間とともに、凄い冒険が始まりそうだ――
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