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母の願い

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「………ありがとう、元気な娘を産んでくれて。」


「ふふっ、あなた、涙で顔がグチャグチャよ。この子に笑われるわ。」


「うん、うん、そうだね……」


 俺は初めて抱いた我が娘の小さな小さな身体を、とても愛おしく思った。


「元気で明るい子になってほしいわ。」


「君に似ているから、きっとそうなるよ。」


「名前は考えてくれた?」


「ああ、いつでもこの子が幸せであってほしいから、幸=さち と。」


「まあ、単純。でも良い名前ね。さっちゃん。幸せになってね――。」



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 やっと前世の娘の名前を思い出した。

 幸せに暮らしているだろうか……。

 自分は、彼女達と幸せな日々を過ごすことができなかった。

 幸せであってくれと、唇を噛み締めた――



 唇を噛む俺の姿を見たナギの母親が、申し訳なさそうに、しかし、強い眼差しで俺に懇願する。


「こんな事、私達が頼むのが都合の良い願いだとはわかってるの……。」


 でも、なんとかナギを助ける方法を探してくれないかと。もし、ナギが助かるのであれば、人としてじゃなくても良いと。生きて人生を全うしてくれたら良いと……。



「どういうことでしょう?」


 俺に変わって、アメワが尋ねる。


「その昔、ヒロ君……、君の母親はヴァンパイアロードによって、その眷属にしてもらい、助けられた。ナギにも同じ事をヴァンパイアロードにしてもらえるように、手伝いをしてもらいたいの……。」



 なんと都合の良い事を言うのかっ!

 散々と俺を罵倒し、母を虐げ、未だに恐れているというのに。

 ましてや、もし、ヴァンパイアロードを探し出し、少女を助けることができたとして、ヴァンパイアの眷属となった少女を、また俺や母のように虐げるのではないのか?


 人は自分と違うものを、恐れる。そして、遠ざける。

 その上、自分達にその存在から反撃がこないとわかると、今度はそれを虐げる……。

 なんと狡く、情けない生き物であろうか。



 しかし、目の前で必死に頭を下げる母親を前にして、「やらない」と応えることなどできようか。

 もし、助けることができても、少女が虐げられるなら、そこには俺がいよう。そうだ、そんな状況からも守ってみせようと。



( 俺は、俺がされた酷い事を、他人にするなんて

ことは真っ平ごめんなんだ! )



 そうだよ。俺は優しい英雄を目指すんだよ。

 俺に手を差し伸べてくれた、あの優しい剣士のように。

 できるかはわからない。……が、俺は仮面を被せられて眠り続けている少女の為に、力を尽くそうと強く誓ったんだ――



とうとう100話まで来ることが出来ました!


弱いながらも強く優しく生きようとする主人公を、ぜひ応援してください!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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