いじめられっ子、捨てられる
十三夜と申します。みなさんと一緒に楽しめる作品を作っていければと思っています。よろしくお願いします。
「――痛っっ……!」
街の大通りを歩いている少年に、突然、どこからか石が投げつけられた。その石は容赦なく、無防備な少年の額にあたり、彼は思わず悲鳴をあげた。
しかし、理不尽極まりないこんな状況にも関わらず、周りの人間から聞こえてくるのは、少年をあざ笑う声だけ。近寄って彼を助けようとする者はいない。
石が当たった衝撃で、よろめき、膝をついた少年は、周囲を見回して犯人を探すわけでもなく、静かに立ち上がり、再び道を歩きだした。
俯きながら歩くその姿は、街で見かける他の少年少女のような溌剌さはカケラもなく、虚な表情は、まるで存在感を放たない。
その少年を遠巻きに囲む街の住人たちは、その声が当人に聞こえているのもまるで構わず、悪口雑言を吐きまくる。
「――おいおい、相変わらずアイツは気持ち悪いなっ!さっさと街から出ていけばいいのに。」
「まるで化け物だよな……白い髪に、白い瞳なんて。きっと魔物の血を引いてるに違いないぜ!」
「見てみろよ。アイツ、石をぶつけられているのに、血も流れないぜ。やっぱり化け物だろ!」
少年を後ろ指さす住人たちからは、少年がその大通りから見えなくなるまでの間ずっと、その酷い悪口が止むことはなかった――
♢
――周りから聞こえてくる様々な悪口から察するに、どうやら、街の人達には、僕の姿は魔物とか化け物に見えるらしい……。
僕が街の人達にとくに何かをしたわけではない。
それどころか、むしろ目立たぬように、毎日ひっそりと生きている。
ただ、僕には目立ちたくなくとも、どうしても人目を引いてしまう理由があった……。
――僕には色という色がないのだ
僕の肌は透き通るように白く、また、髪も真っ白。瞳の色にしたって、ほんとはちょっとグレーがかった色をしているんだけど、街のみんなは、見たことないない白い瞳だと言って気味悪がっている。
そして、街の人達が気味悪がって僕を避ける一番の原因……、それは、何をされても怪我をしない僕の身体にあった。
さっきだって、石をぶつけられたにも関わらず、当たった額には傷一つついていない。勿論、血など全く出てはいないのだ。
街の人々は、血の出ない僕を恐れ、気味悪がり、僕のことを「化け物」とか「魔物の子」と呼んで蔑み嫌い、近寄ろうとはしない。
そんな僕の両親は、赤ん坊の僕の姿を観て、すぐに孤児院の前に僕を捨てたそうだ。
名前すらつけられることなく。
だから、僕は両親を知らない。
それどころか、自分の事だってよくわかっていないのだ。
仕方がなく、僕は、拾われた孤児院で名前をつけられた………。
名前が無いから、名無しのナナシ…… 。それが今の僕につけられた名前だ――