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カルドとメイド

「これはミストレイ様の刻印!?

どうぞお通りください!!」


「あ、ありがとうございます……」


隣町についたのは夕方前。

体力には自信があったがそれでもこんなにも長い道のりを歩いたことがなかった為に、休み休みで歩いていたらこんなにも時間がかかった。

しかしこんな時間でも隣町に入るための検問は人が多くどうしようかと考えた時に思い出した。


あの刻印を見せたらどうなるだろう。と。

なので試しに検問している人に見せてみたら並ばずに町に入ることが出来た。

その代わりに検問待ちしていた人や検問していた人に「一体何者なんだあのメイドは」「メイドが持てるもんじゃねぇだろう」「でもアレは偽装出来る品物じゃねぇぞ」などなどとコソコソと話し声が聞こえてくる。


やっぱり凄い人だったんだ、あの人は……

サルヴァ様に感謝しながらとにかく宿を探さないといけない。

このままだと野宿することになる。それだけは回避しないと!と気合を入れて宿屋を探そうとすると


「あの、メイドさんは宿屋はまだ決まっておりませんよね??」

「えっ?は、はい……」


すると私を通してくれた検問をしている人。

一体なんだろう。とおもっていると


「俺の実家が宿屋をやってますので良ければメイドさんを泊めますよ」

「い、いいんですか!?」


「もちろん。ミストレイ様のお知り合いでしたら下手な宿屋よりも、俺の実家の宿屋の方がいいと思いましたので是非とも」


それはいい話だ。

私が拒否する理由がない。


「よろしくお願いします」


「決まりだな!!おい、サンドー!!

休憩ついでにこのメイドさんを宿屋に連れいていくなー」

「ちょっと!僕の休憩はっ!!?」

「俺が帰ってきてからなー!!」


「横暴だ!!先輩だからってこんなのは横暴だぁー!!!」

「うるせえうるせえ。あとでなー」


叫びながらもキチンと検問をしているサンドという人。どうやら私を宿屋に道案内してくれる人はそのサンドの先輩らしい。

というか、いきなり口調が変わったな。

まぁ、こっちの方が私も喋りやすいからいいけど


「良かったんですか??」

「いいのいいの。あいつ、今日寝坊してきたからな。これでチャラだ」


ちゃんとした理由があるなら私が口出しするのはおかしいな。しかしこんなにも順調にいっていいのだろうか?もう少しトラブルみたいなものに巻き込まれると考えていたのに、まぁ、何もない方がいいに決まっているけど。


「俺はカルドってんだ。姓はねぇよ」

「私は、シズクといいます」


そういえばこの世界では姓のない方が圧倒的に多い。姓がある人のほとんどは貴族か王族。もしくは没落貴族というパターンもある。


そういえばサルヴァ様には姓を言ったような気がするけど……まぁ、特に言われなかったし気にしなくてもいいかな。

サルヴァ様もなんか普通の貴族とは違うから気遣ってくれたのかもしれないし。


「シズクちゃんか。ここには観光…ってわけじゃねぇよな。何か調達でもしにきたとか??」


「えーーと……」

「まぁ、言えないこともあるよな。気にしないでくれ!!」


ほとんどあのお屋敷から出ることがなかったのでよくは知らないけど、ほとんどのメイド達は複数人でこの隣町に食材等を買い出しにくる。


基本的には荷車がお屋敷にくるというものだが、お客様を招き入れるときは材料が足りずに馬車を出して買いに来ることがあるみたいだ。


そんな時に私はほぼ何もしない。というかさせてもらえなかった。私が何かをすればトラブルを招いてさらに忙しくなる。

それは私も分かっているからこそ部屋で1人モクモクと何かを作っていた。


それもあってか色んな物を作れるようになったけど、それがこれからの生活の要になるなんて……何が転機になるか分からないものだなー


「あのギルドにも行きたいんですけど」

「シズクちゃんがギルドに??」


「ちょっと職員さんに渡しものがあって」

「あぁーでももうすぐ営業時間がすぎるからな。明日の朝一にでもいいなら案内するぜ」


それならそうしてもらおうとお願いしたところで案内してくれる宿屋に着いた。


「猫の寝床、ですか…」

「変わった名前だろう。変えたほうがいいって言ってるんだけどなーなんでコレに…、って、イテッ!!!!」


猫が丸くなって寝ている看板。

そこに猫の寝床と書いてある宿屋。

確かに不思議な名前だけどいい名前だと思う。

しかしカルドさんは違うらしく反発していると宿屋の入口から何かが飛んできてそれがカルドさんの額に直撃した。


蹲ってしまったカルドさん。あれは痛いだろうなーと思っていると、カルドさんの額に直撃したお玉を地面から拾った女性が


「この宿屋を潰すつもりかい!?そんな悪評を言ったらどうなるか分かるだろうが!!」

「うるせぇババァ!!こっちは親切に言ってるんだろうが!!」


「先祖代々受け継いだ名前を変えるわけないじゃないか!!そんな罰当たりをしたほうが潰れちまうよ!!!」

「俺がこうして客を連れてこないと潰れかける宿屋やなんて勝手に潰れるわ!!!」


となんか言い合いが始まった……

というか、私以外にもこうして実家の宿屋に客引きしていたんだ。それが悪いかどうか知らないけどこの親子の会話は見ててちょっと安心した。


お互い憎まれ口を言っているけどそれは信頼しているから言える言葉。それを私は知っている。………早くママに会いたいなー


「あ、あの!!私はここに泊めてもらえませんか??」

「あぁ、すまないね。もちろんいいよ。このバカ息子が変な事を言ったかもしれないけどちゃんとした宿屋だから安心しな」


「んなこというかよ。こっちは親切で……」

「だったらその喧嘩腰をやめな」


と、再び口喧嘩が、始まった。

どうもこの親子はこれが日常茶飯事みたい。

この宿屋の周りにいる人達も「また始まった」「よくやるよなー」と微笑ましくこっちを見ている。


でも、その中で置いてけぼりになっている私の身にもなってほしい。これはこれで恥ずかしい……


すると宿屋から男性が出てきて私の方に近づいてきた。


「済まないね。うちの妻と息子が」

「い、いえ……」


「2人はそのままにして、こちらへどうぞ」

「……では、お願いします」


ちょっと気が引けたが、こうやって注目の的になりたくないので避難も兼ねて先に宿屋に入ることにした。

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