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警視庁特別犯罪室特務ゼロ  作者: 日常癒桜
6/6

警視庁の迷子

 目的地までは私の自宅から車で三十分程度着く。

 着いた場所は高さ何十メートルもある大きな建物、警視庁本部である。

 私達、警視庁特別犯罪室特務ゼロの事務所はここにある。

 警察のエリート達が集う場所に何故私のような高校生が入れるのかというと、私も警視庁の人間だからである。

 最初ここに来たばかりの頃は警備の人に止められて、揉める事も多々あったけど、今は顔パスで行けるようになって来た。

 でもたまに。

「お嬢ちゃん、どうしてここにいるの?職場見学?それとも何か悪い事でもしたかな?」

 こうして優しく声をかけてくる刑事さんもいる。

「はぁ〜、違います」

 深いため息を吐く。

「そっか、でもここは警察の人しか入れないんだよ」

 何かあったの?と言わんばかりに5、6人の警察官がぞろぞろとやって来た。騒ぎがあると集まって来るというのは警察官の習性なのだろうか。

 見た事無い顔だな。

 年齢も若いし妙にキャピキャピしている。こういう人達は苦手なんだよなぁ。

 恐らくは今年入職してきた新人さんなのだろう。

「誰だ〜?ここに女の子連れ込んできた奴」

「可哀想じゃない。ちゃんと面倒見なさいよ」

「その手に持ってるのは竹刀かな?ここでそういうのを持ってちゃ駄目だよ。危ないから預かろうか」

 そういうと私から取り上げ袋の中身を確認する。

「え?」

 その場の警察官全員が固まる。

 そりゃあそういう反応になりますよね。

 竹刀かなにかと思っていたんだろう。

「おい、これ本物の刀じゃねーか」

「一体どう言う、、、」

「お嬢ちゃん詳しく話を聞かせてもらおうか」

 騒ぎが徐々に大きくなり始めてきた。面倒になる前に早く立ち去ろう。

「はい」

 私はポケットに入っていた警察手帳を見せる。

「え?、、、警視庁特別犯罪課、、特務、、、ゼロ」

 警察官達の表情が一瞬で強張った。

「特務ゼロってあの?」

「この女の子が?」

「まだ高校生ぐらいじゃない」

「す、すいません」

 全員が一歩ずつ後退り私から離れて行く。だが私はそんな新人警察官達に一歩ずつ間を詰めていく。

 何故ならまだ。

「あの、刀。返して下さい」

 刀を返して貰っていないから。

「おら、小童どもさっさとそれを返してやれ」

 そう言って新人警察の後ろから出て来たのは、白髪混じりの短髪に髭が生えて、ちょっとお腹が出てきた中年のベテラン刑事の辻さんだ。

「辻さん。お久しぶりですね。またちょっとお腹が出て来たんじゃないですか?どうせカップラーメンばかり食べてるんでしょ」

「うるせぇ。ガキんちょのくせにかみさんみたいな事を言うんじゃねぇよ。たまには野菜だって食べてるよ。たまにはな」

 悪者面をしているが、親しみやすく一応は良い人だ。

 この体型と親しみやすい人柄のせいか忘れてしまうが、部下からも親しまれる捜査一課の凄腕刑事で、これまでも難事件をいくつも解決してきたらしい。

 新人警察官から刀袋を受け取るとそのまま私に返してくれた。

「お前はこうやって良く絡まれているけど、特務ゼロと書いた旗でもぶら下げたら良いんじゃ無いか?」

「いやいや、これでもだいぶ減ったんですよ。それにそんな事したら皆薄気味悪がるじゃないですか」

「いや、女子高生がこんな所を刀持って彷徨っていたら充分に薄気味悪いよ」

「辻さんそれ、ハラスメントですからね」

 辻さんの冗談混じりのセリフにニヤけながら指差してハラスメント指摘をした。

 そんな下らない会話を済ませ廊下を歩き出した。

 まぁこういった感じに万引き犯で捕まった子供とか職場見学等と勘違いされて声をかけられる事もあるが、特務ゼロの手帳を見せれば皆が何も言わずに去っていく。

 というのも警察の中では裏の掟がある。

 特務ゼロには介入するな。黙認しろ。

 それは警察、特に警視庁の人間ともなれば皆が知っている事である。

 まぁそんな感じで警視庁では異例の存在として避けられているわけで。

 私はエレベーターを使い、八階まで昇った。八階の全てが特務ゼロのフロアとして使用されている。

 なので一般の警察官は八階には立ち寄る事は無い。

 エレベーターのドアが開くと左右に廊下が分かれており右へと曲がり突き当たりの部屋がゼロが拠点としている事務室になる。

 事務室に入ると室長と航がいた。

 特務ゼロ自体は人数がそこまで多く無い為、事務室も広くは無い。

 長めのテーブルと椅子が数個置かれており、窓際に室長用の立派なテーブルが並んでいるくらいだ。

 後は部屋の隅っこに観葉植物と壁に大きめのモニターが付いているくらいであとは、、、、コーヒーメーカー?

 また無駄な物を経費で買ったな。室長曰く特務ゼロの人間とは皆関わりたく無い為、何を頼んでもある程度は経費として落とせるのだそうだ。

 そんな状況を逆手に取って室長はやりたい放題にやっている。

「糸音ちゃんおそ〜い。待ちくたびれちゃった」

「すいません。道端でお婆ちゃんに道を聞かれ、、、」

「「嘘つけ」」

 入るなり室長と航から苦情が飛んで来た。

 目の前にいる女性こそが私達、警視庁特別犯罪室特務ゼロの室長、白谷緋奈である。

 まだ歳は三十過ぎと若いにもかかわらず、警視庁に属する一つの組織をまとめ上げるスーパーエリート、、、らしい。

 実際は私達が戦っている間、ずっとこの部屋で指示だけしているだけ。

 ようはただの引きこもりである。

 室長のテーブルに置いてあったボールペンが私の頬をかするように飛んで行く。

「声に出ているわよ。糸音ちゃん」

「す、すいません」

 本当に恐ろしい人だ。

「早く本題に入りましょう」

 このままでは話が長くなると思ったのだろう。

 航が一歩前に出て来て、話に割って入ってくる。

「そうね。では本題に入るわ。最近とある町の廃墟になった病院に悪霊が出て、肝試しに来た若者達を襲っているって話が舞い込んで来たの。実際通報があって駆けつけた警察官が一人怪我をしてしまってね。そういう事もあって上の方から特務ゼロに依頼が来た。何とかしろ!ってね。というわけで糸音ちゃん、航。今日夜12時に病院へ向かってちょうだい」

「断っても、、、」

 またしても顔の横をボールペンが通り過ぎて行った。

「行きます」

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