太陽色のマニキュア
そっと引き金に指を差し込む
ひんやりした金属が僕の体温と混ざり合って同じ温度になる
静かに、だけどしっかりと照準を合わせて言葉という弾を撃つ
冷えていても、熱くてもいけない
僕と同じ温度でないといけない
言葉は僕自身なのだから
-弱い人は、率直であることができない-
5月17日。あの日までは全て持っていた。
何もかも。およそ誰もが欲しいものを持っていたんだろう。
一生は遊んで暮らせる金に、好きな仕事、国内外からのファンに名声。家庭に子ども、大切な恋人まで、全部。
他の人からみた僕は、きっと、完璧なひと
僕からは見えない俺は、きっと、強いひと
神さまから見た僕や俺は、きっと、まぬけなピエロ
何もないところから、わずかばかりの何かを得て、また無くした、ただのひと
与えられた役割すら果たせない、まぬけな道化師
目の周りに赤いハートを描いた振り付け師が、僕の姿で踊り出す
言葉を纏い、タップダンスでリズムを取る
僕はそれを、じっと見ている
夕暮れどきに友達と見ている街頭テレビみたいな白黒テレビの中にいるそいつを凝視する
そうしていると、テレビの中のそいつは結晶になって画面から出てきて僕に重なっていく
テレビ画面には街頭テレビをじっと見ている俺が、カラーで映っている
明日からではなく、今日から心の中にも化粧を施す
そんな感じで今日が始まる