思い付き
最近なんかだるい。
こんな言葉で一日がいつもスタートする。
ただつまらない。マンネリ化した日常。使いまわしの多い映画みたいな、少しだけ変化はするけど、大枠は同じ。
機械的な毎日が通り過ぎていく。
淡々と続く無表情な日常にサヨナラしようと、彼は家から出てきた。死んだように生きる人生とサヨナラしようと、せっかくなら何か面白いことをしようと。
だが、死に方もつまらなかった。彼の人生と同じように。誰も喜ばない、誰も悲しまない、誰にも関心を寄せられないような、つまらない死に様。
冷酷な人間も、偉大な神様も呆れと同情を持つだろう。
その人は、彼を異世界に飛ばすことにした。
つまらない男を異世界に飛ばしたらどうなるかと気になったからだ。特に深い意味はない。同情心はある。しかし、微々たるものだ。
少しは改心して、何かに邁進するだろうと思うが、人間とはわからない。だから、サンプルとして飛ばすことにした。
最近は、物が足りすぎる世界に住んでいても、幸せを感じないし、何か大義をなそうと精進する奴もいない。果ては、他人に迷惑をかけながら死のうとするものが多数いる。なので、異世界に飛ばして性根を叩き直せば、改善するのではという望みも少しはもっていた。
今まで、何人か異世界に飛ばしてきた他の人々は、最初から多くの力を与えて、努力せずとも成功することが約束されており、決して尊大になることがない、人間的にも優れた人が多かった。
それは、頂上的な存在が何かしらの手違いから人を殺してしまい、贖罪として力を与えていた。
だが、彼の場合は違った。手違いもなく、ただお遊びのために異世界に行かされるのだ。
同情心も持って行ったが、それは建前であり、好奇心のほうが強かった。
彼は考えた。人間的に、人格的に優れている少数の人間を異世界に飛ばして観察するより、普通の人間を飛ばしたほうがおもしろいのではないかと。