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07 カミス


 布団をかぶったままの俺に、


 カミス君が、静かに語り出した。



「こういう時に言うことじゃないかもですけど、僕、うれしかったんです」

「その、さっきの固まっていた時の、アランさんの表情を見て……」


「僕、こっちに来てから、なんだか分からないけど、突然周りに女の子が集まってきちゃって」

「うれしい気持ちももちろんあるんだけど、本当、すごく怖くて」


「男だから、その、いろんなこと考えちゃったりするんだけど、もしやりたいようにやっちゃったら、今のみんなとの良い関係がおかしくなっちゃうんじゃないかって」

「だから、アランさんみたいに奥さんたち全員とちゃんと向き合える大人の男になれたらって、ずっと憧れてて……」


「でも、さっきの固まっているアランさんの表情を見たら、なんだか気持ちが落ち着いて、うれしくなっちゃったんです」

「大人の男の人でも、ちゃんと迷ってるんだなって」


「だから、僕が言いたいのは、アランさんは迷っててもカッコいいというか、迷っているから尊敬できるっていうか……」

「つまり、『異世界とっても良いところ』にできるように、これからもいっしょにがんばってほしい、です」




 だよな。


 俺、別にこっちに来たからって、なんも変わってないし。


 お調子者のままだし、


 むっつり『モンスター』のままだし、


 人から嫌われたくなくて布団に閉じこもっちゃうようなヘタレのままだし、



「ありがとう、カミス君」

「これからもこんな感じだと思うけど、異世界暮らし、いっしょによろしく」


 この期に及んで布団から顔も出せないアレな大人だけど、


 反面教師くらいになら、役に立てるよな。



「奥さんたち、すっごく心配してたんで、早く安心させてあげてください」

「えーと、僕とモノカはもう帰っちゃうので、その、このままの方が良かったら、奥さんたちを呼んできますね」



 このまま、布団のままって、


 あー、


 カミス君の方が、


 よっぽど大人、だよな。



 カミス君が部屋から出てすぐ、妻たちみんなが、来てくれた。


 俺、ずっと布団の中だったけど。



 リリシアが、疑った事を謝ってくれたり、


 マユリが、拘束魔法しちゃった事を謝ってくれたり、


 ユイが、疑いを晴らせなかった事を謝ってくれたり、


 ハルミスタが、何も出来なかった事を謝ってくれたり。



 俺、最後まで布団から出られなかったよ。


 だって、泣いてるところ、見られたくなかったし。


 さすがに声には出してなかったから、


 みんなには気付かれてない、と思う。



 でもなんだか、みんなの声を聞いてるうちに、


 安心しちゃったんだろうな。



 そのまま、寝ちゃった、俺……



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