13 内緒
「みんな、ひとつだけ、答えて欲しい」
「俺とレバンナさん、どっちを信じる?」
流石に、真剣な、俺。
「だって、今日は五時間も一緒に過ごしてたって、それに前は四時間も……」
マユリ、困惑中。
あー、あの時か。
「心当たりがあるようだな」
リリシア、戦闘準備万端。
説明、しなくちゃな。
「真実を、お聞かせください」
ユイ、覚悟完了。
もちろん話すけど、他言無用って、約束して欲しい。
「やましいことでもっ」
違うよ、ハルミスタ。
ふたりの名誉と幸せのため、だな。
そのふたりって、俺は含まれてないんだぞ。
ごめん、マリエレンさん。
内緒に出来なかったよ。
以前、マリエレンさんから相談されたのは、内緒の再婚話。
旦那さんを亡くして数年のマリエレンさんに求婚した男性は、
ギルド職員のセルジェ君。
ついこの間、成人の儀を迎えたばかりのセルジェ君は、
実は某有名貴族の四男。
家を出て、本当の身分は世間には内緒にして、今は普通の真面目なギルド職員。
結構前から後継ぎ問題で揉めていたというその有名貴族、
予定通りに長男が家督を継いだら、セルジェ君は確実に自由の身になれるけど、
あと一年だけ待っていて欲しい、とのこと。
そのプロポーズの時、マリエレンさんは返事を保留。
なぜそんな大事な秘密の話を、俺なんかに。
「この町で、一番頼りになる方、ですから」
元々は旅の行商をしていたマリエレンさんご夫婦。
資金が貯まってようやく構えた店舗が、あの雑貨屋。
しかし、ご主人は帰らぬ人に。
町の人たちは親切だし、
頑張ってお店を続けてはいるのだけれど、
やはり外から来た人間、
どうしても外様感が拭えない。
そんな時、突然の再婚話、
誰にも相談も出来ずに悩んでいたけど、
町の外どころか、よその世界から来たのに、
なぜか信頼出来る人がひとり。
それが、俺。
「こんな経緯なんだけどな」
妻一同、無言。




