01 アラン
『リヴァイス 31 特使勇者たちの挨拶回り』の続きで、
チームアランのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
アランです。
異世界暮らし、相変わらずいい感じです。
夫として、四人の妻からお世話されたりお仕置きされたり、夫冥利につきる毎日です。
一家の主人として、ふたりのメイドからお世話されたりお説教されたり、満足感いっぱいです。
冒険者として、自分たちの頑張りがしっかりとフィードバックされるあの感じ、たまりません。
ただひとつ、問題が。
いろいろあって、特使公爵などと呼ばれているのですが、
俺、ちゃんと出来てるのかな、特使公爵活動。
「リグラルト王国からの式典出席の依頼、どうするのだ、アラン」
妻のリリシアが、少し、不満そう。
俺たちチームアランへの指名依頼は、討伐やら退治やらの荒事ではなく、落成記念式典とかお偉いさん絡みの結婚式とかの出席依頼なんかが、とても多いのです。
騎士道一筋の無双乙女騎士であるリリシアの不満はもっともなのだが、困ったことに断りづらい案件が多いこともまた、事実。
なにせ、出席依頼のほとんどが、アレな紐付き。
妻のユイは、隣国アルセリア王国の元王女様。
けっこう強引に結婚しちゃったため、アルセリア王家の方々とは、いろいろあって気まずいのです。
ユイのパパことジオサニア王、ママのシルメイア王妃、兄のゼルサニア王子。
皆様、とても家族想いな良い方々なのですが、大切に育ててきたユイメイアさまを、よその世界から来たド平民の平凡男に娶られちゃったわけで。
つまり、俺の立場は、国家レベルで相当に微妙。
ユイ自身は、婚姻の儀の際に王女としての王家との繋がりを絶ったのですが、もちろん溺愛していたユイメイア姫をあの方々が家族として放っておくはずも無く。
つまりは、今の指名依頼のほとんどが、アルセリア王家絡みなわけです。
迂闊な対応は、俺が暮らしているこの国エルサニア王国にも波紋が疾走しちゃうのです。
国際問題が嫌なら、大人しく出席・欠席の『出席』の方に◯をすれば良いのでしょうが、
こうも指名依頼内容が偏ると、各方面から不満も出てくるのです。
主に家庭内から。
「依頼の件、もう少しだけ、考えさせてくれないか」
リリシア、我慢させてすまん。
妻のリリシアのご両親はすでにこの世を去り、身内といえば我が家でいっしょに暮らしているメイドのメリルさんのみ。
実家も、近しい親戚付き合いも無い、リリシア。
ここは、俺たち家族が支え合わねば。
妻のマユリは俺と同じ、あちらの世界から召喚された召喚者。
親戚付き合いどころか、実家とも交流不可能。
つまり、俺たち家族が支え合わねば。
妻のハルミスタは、ここからはかなり遠方の小さな村の出身。
得意の『転送』魔導具で、いつでも里帰り出来そうなものだが、なぜかそうしたがらない。
詳しい家族の事情に触れるのもアレだし、何よりハルミスタ自身がその事を気にしている素振りも見せず。
それなら、俺たち家族が支え合わねば。
という具合に、幸か不幸か、ユイ以外の妻たちのご実家とは、縁遠いのです。
幸いなことに、妻たち四人は、とても仲良し。
夫へのお仕置きはもちろん、それ以外のことにだって一致団結することが日常茶飯事。
そして優しい妻たちは、お互いをとても気遣い合っています。
ご実家からの過干渉にユイが悩まないよう、気を使うほどに。
つまり、指名依頼の偏りに不満はあれども、断ったりはしないのです。
だからなおさら、チームリーダーで家長でもある俺が、なんとかしないと。