おかえりキシリトール
「ただいま!」
家に帰ってもおかえりと言う返事がない。
どうしたんだろうか?
リビングに行くと机の上に1つのメモが置かれてあった。
メモには『今日はお父さんとお母さんで友達のお葬式に行くからトオル1人で家でお留守番しといてね。』と書いてあった。
続きには『きっと明日の朝には帰ってくるわ。あなたって今年生だったっけ?お母さん頭痛いから忘れちゃった。とにかく友達が死んじゃうなんて思わなかったわ。実はね、あなたも連れて行きたかったたんだけど面会時間が過ぎるから嫌なのよ!ちょっと嫌でも明日は学校だし、そんな連れて行くわけにもいかないしね。とりあえず1人でお留守番できるよね!もう5年生なんだから』言い訳じみたメモが残されていて、それに対して僕は友達のお葬式なら僕も連れて行って欲しかったのに!と思った。
でも一体誰の友達なんだ?パパの?それともママの?それとも僕の?
それだったらなおさらだよ!
どうしたんだろう?
そんな急に!突然!とんでもなく急に!僕の帰りが待てないぐらい?僕も連れてって欲しかった。
でも僕の友達って事は無いよね?
僕の友達だっただったら学校側も大騒ぎになるはずだよ!そんなはずないよね?うん!
でも夜ご飯はどうしよう?
あー!何しようそうだ。そうだ。パンとピザを使って手作りピザを作ろう!
そうだ!その上に卵焼きをのせてもっと美味しくしよう!
そうだ!その上に僕の好きなものをたくさんのっけて!
えーっとラーメンでしょ!
いちごでしょ!
ミルクでしょ!
かにみそでしょ!
美味しそう!
楽しみ!
ぱくっ!
ってまず!
しかもクサっ!
(ですよねー。そんな組み合わせまずいに決まってるよねー。そんな組み合わせ臭いに決まってるよね。ですよねー5年生なのに頭おかしいね。)
そうひとりでいるとふとそんな声が聞こえた気がすると窓がパカッと開いて同じクラスの男の子が立っていた。
「なんで君そんなとこにいるの?って聞いたら(だってここマンションだから通り掛かったら、ちょっと窓から声が聞こえたんだ。ちょっと面白くてちょっとついツッコミたくなっちゃって)といった。
いやでも普通さぁ窓から突っ込まないでしょ!まぁ情報が多くて渋滞してるから関係ないんだけどね!
フフ…言葉渋滞しすぎだよね!
特に小説。隣からアイディアたくさん来て言葉が渋滞しちゃってもう意味分かんなくなっちゃうよね!
種類のつかないよ。(それにしても今日は君1人)少年はそう言った。
うんなんかパパとママ!友達のお葬式らしいよ!だからなんかもう1人でクッキングしてたんだ!退屈だから!でも出来上がったものを食べたらすっごくまずくて!何か病気にでもなったのかなぁ?とりあえず今食中毒起こしてるから病院行ったほうがいいかなぁ?僕はそういった。
窓から声をかけて来た少年はこの家の表紙に目をやった。
『岸』
岸 トオル。
小学校5年のトオルはその日初めてパパとママの居ない1人きりの夜を過ごした。
誰もいないひとりの家はとても寂しくて夜中も電気をつけっぱなしにしていた。
長い夜が過ぎるころ明るくなって来た空と、朝を告げる鳥の鳴き声とともにパパとママが帰ってきた。
「おかえり」岸 トオルはそうパパとママに言った。
留守番をおしまい
(おかえりキシリトール)
完