12月4日 切り替え
正直、昨日の今日で上手く切り替えることは難しかった。そう思い立った時に、頭の中に浮かんできたのが健太郎だった。昔から、何か嫌なことがあったら家が近所の健太郎に助けてもらうことがあった。病気になってからは、なかなかそういう機会も減ったんだけど。優衣もそうだけど、私にとって昔を思い出せることはかなり大事なことだ。過去をふりかえることは何の意味もないけど、それでも大事だと病気になった私は感じていた。
健太郎「えっ?」
私 「なによ」
思わず、私は健太郎に素直に話をしていた。
健太郎「久しぶりに会ったと思ったら、アイツと知り合いになってたなんてな」
私 「驚いた?」
健太郎「まぁ、俺は喋ったことはないんだけどな」
私 「喋ったことないのか」
それだったら、共感はしてもらえなさそうだ。
健太郎「対戦したくらいだよ」
私 「打ったの?」
健太郎「いや、打ててないよ」
私 「ダメじゃん」
健太郎「ダメじゃねぇよ」
すぐさま否定する健太郎を見ているとなんだかおかしかった。
私 「今、勉強どうなの?」
健太郎「全然だよ」
私 「ダメじゃない」
健太郎「そうなんだよなぁ」
やっぱり、野球をしてからすぐに勉強っていうのも簡単じゃないんだろうな。
私 「でも、諦めないんでしょ?」
健太郎「ああ、絶対に諦めない」
健太郎の顔は、覚悟に満ち溢れているように感じた。
私 「やっぱり、健太郎は凄いよ」
健太郎「どこが凄いの?」
私 「うーん?全部かな」
健太郎「そんな褒めちゃっていいの?」
健太郎の話に思わず笑ってしまう。でも、やっぱり健太郎は凄い。たしかに、私は病気でずっと勉強してこなかった。でも、それは私だけではない。ここにいる健太郎も同じだ。ずっと野球の練習ばかりして、まともに勉強に取り組む時間なんてなかったはず。だけど、健太郎は私と違った。合格なんて到底できない大学に果敢に挑戦しようとするのだから。きっと、健太郎はいつか合格する。私は、そう信じていた。
私 「私も頑張らないとね」
健太郎「何を?」
私 「そりゃあ、勉強だよ」
健太郎「いいねぇ」
昔は、私も健太郎も学校の中じゃ、頭がいいレベルのはずだった。だけど、気がつけばお互いもう頭がいいなんて言ってられない。ここから這い上がるには、もう努力しかないのだ。




