9月16日 学修館塾
今日は、いつもの通信教育をしながら、真波のことを考えていた。昨日、優衣と話していた時に聞いた真波との仲直りだ。高校1年生頃までは、頻繁に連絡していたが、最近は、ほとんど連絡していない。
高田真波。聖徳高校に通う3年生。真波に、初めて会ったのは私が、中学1年生の春だった。当時、真波が、バスケ部の部活動見学をしていた私に声をかけてきた。何を話したかは覚えていない。当時は、後の真波であることに気がつかなかった。中学3年生の時に、真波から言われて初めて、あの時の少女が真波であることがわかった。あの時、私が、バスケ部に入っていればまた違った中学生活になっていたのだろう。
その後は、中学3年生になるまで、私たち二人が話すことはなかった。中学3年生になると、再び私たちは、話すことになる。当時、私が通っていた塾に、真波が入ってきたからだ。私たちが通う塾は、「学修館」というところ。10人程度の集団で授業を受ける塾だった。受験生である3年生は、3クラスに分かれていた。クラスは、塾で行われるテストの成績順によって決まる。私がいたクラスは、Sクラス。最も成績がいいクラスだ。そこには、優衣、真波、実咲、陽菜乃がいた。そういったこともあり、私はみんなと仲良くなれたのだった。
〈学修館のSクラス〉
・土屋陽菜乃 八代東中学校
・高田真波 八代南中学校
・高橋歩 八代西中学校
・杉原美佑 八代西中学校
・栗原大喜 八代西中学校
・瀬戸明日花 八代南中学校
・若林希 八代西中学校
・五十嵐実咲 八代東中学校
・世田優斗 八代南中学校
・川上竜希 八代東中学校
・田中優衣 八代南中学校
当時は、成績上位を目指して、勉強していたのを覚えている。しかし、成績上位は、陽菜乃と真波で決まっていた。この二人のどちらかが1番になるので、私たちは、どんなに頑張っても3位以下にしかなれなかった。真波が入るまで2位だった杉原美佑ですから、真波とは、大きな差があったくらいだ。
真波が入塾してから、二人で一緒に座ることも多くなってきた。少しずつ会話も増え、行動も共にするようになった。塾の休憩中は、優衣、実咲、陽菜乃、真波とおり、みんなでカラオケや映画に行くこともあった。優衣、真波は、第一志望の聖徳高校に。実咲は、准南高校。陽菜乃は、海美高校に進学した。
私の真波の印象は、協調性があり、誰にでも優しい。可愛くて成績も優秀。部活動では、バスケットボールをしており、中部大会まで出場した。その試合を見ていた高校のスカウトがスポーツ推薦を打診したという噂もあった。本当になんでもできてしまう。
なんでもできてしまう天才が故に、どこか他者を寄せつけないオーラがあった。私とも仲良く話してくれる場面はあったが、お互い自分のことを親身に話すということはなかった。
優衣と真波がケンカしたのは、約1年ほど前。原因がわからない以上、どのように仲直りをさせたらよいのだろうか。
優衣と真波が直接話しても問題は解決しない気がしていた。優衣は、感情の浮き沈みが激しく、真波は、人の動きをよく見ている。二人が話しても、優衣の感情を察知した、真波が折れるのが目に見えていた。それでは、表面上、問題が解決したように見えても、本質的な問題は、何も解決しない。
私は、この二人の問題を解決してくれるある人物を思いついた。それは、五十嵐実咲だ。実咲なら、真逆のタイプである二人を仲直りさせてくれる期待があった。
私は、すぐさま、スマホを取り出し、実咲に連絡を入れたのだった。