10月12日 春風未來
河田「もうちょい、足あげようか」
私 「はい」
河田先生のトレーニングメニューは厳しい。今日は、昼から病院でトレーニングをしていた。
河田「うん、いい感じ」
私 「はぁい」
私の足は、限界にきていた。
河田「はいー、終わり」
私 「あぁ、もうダメ」
うずくまりながら、足をさすっていた。
河田「よく頑張ったね」
私 「地獄すぎますよ」
河田「えー、そうかな。瀬戸さんだったらいけますよ」
先生のところにやってきたのは、いつぞやの春風という男の子だった。
春風「先生、これ」
数冊の本を手渡した。
河田「あー。どうだった?」
春風「まぁ、それなりにって感じですかね」
春風は、不機嫌そうに話をしていた。
河田「それなりにってなんなのよ」
春風「じゃあ」
春風は、歩き出そうとした。
河田「もう行くの?」
春風「なんで居なきゃだめなんですか?」
河田「もし、よかったらこの子に教えてあげてよ」
チラッと私たちは目が合ってしまった。
春風「なんで、こんなヤツに教えないといけないんすか?」
言い方こそ、キツイものの、なぜか嫌な気がしなかった。
河田「おいおい。そんな言い方ないだろ」
春風「じゃあ、失礼します」
そう言って、私たちのもとから離れていった。
河田「ごめんねー、瀬戸さん」
私 「いえいえ。大丈夫です。いつもあんな感じですか?」
河田さんは、あごを触りながら答えた。
河田「悪気はないんだけどね」
私は、歩く春風の姿を見つめた。
私 「たしか、海美の野球部だったんですよね?」
河田は、前のめりになる。
河田「そうなんだよ。強豪校ではなかったけど、大学のスカウトもたくさんきてて、凄かったんだよ」
大学かぁ。
私 「へぇー。そうだったんですね」
河田「僕も一度見たんだけど、県内では、三本の指に入るくらいだよ」
私 「えっ、そんなにですか。だって、県内だったら、道和とか白峰とかいるじゃないですか」
県内だったら、私もわかる。他にも江陵高校や純新学園など強い高校はたくさんある。そんな中で三本の中に入るのは相当だ。
河田「俺が見ていた感じだと、今年は、道和高校の高木、純新学園の藤田、そして、海美の春風だったんだよ」
そんなに凄いんだ。私は、驚きを隠せなかった。
 




