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9月14日 写真

 今日も、昨日と同じ7時20分にリビングに向かった。妹と父は、すでに家を出た様だった。

 母は、8時30分頃に家を出ることが多い。私は、朝食を食べ終え、いつものように自分の部屋に戻った。自分の部屋に戻って、机に向かった。

 机の目の前には、5人の写真が飾られている。写真の先には、当時仲の良かった優衣、真波、実咲、陽菜乃の5人で撮った写真だ。この四人には、負けたくない。仲がいいからこそ、そういう想いが強くなっていた。中学生の時には、こんなことは思わなかったが、今では、四人が遠く見えた。

 いつか、あの頃に戻れるのだろうか。そんなことを考えながら、机の上の教材を開いた。今日は、英語と国語のレポートに取りかかった。英語は、一昨日したこともあり、15分程度で終了した。だが、国語は、文章問題ということもあり、なかなか終わらなかった。

 今日は、お気に入りのラジオがなかったこともあり、勉強がはかどった。1時間ほど取り組んだ後、六件ほどのLINEがきていることに気づいた。優衣から二件、実咲から二件、川崎から一件、舞美から一件だった。優衣とは、田中優衣のこと。同じ中学校で、今でも私によく連絡をくれる。連絡の内容は、「今度どこかに行かないか」というものだった。

 実咲は、中学校時代に通っていた塾が同じで仲良くなった。連絡の内容は、よくわからない。謎のスタンプが二つ送られてきたのだった。川崎は、中学校時代に同じソフトボール部に所属していた。「最近の体調」を聞いてきたものだった。舞美は、同じ通信高校の高校三年生だ。連絡の内容は、「数学の問題がわからない」というものだった。

 それぞれに返信を送り、スマホを伏せた。病気になってからは、本当にスマホを使わなくなった。最初は、SNSなどに目を向けることが嫌だったという理由だったが、スマホにとらわれることなく一人の時間を過ごしたいという理由にいつの間にか変わっていた。

 今、私のおかれている状況は、再生不良の病気にかかっており、外で活動する体力がない。5月に手術を行い、8月からリハビリを始めている。今日も、病院に行ってリハビリを行う予定だった。

 しかし、4月の頃と比較すると、大きく全身していた。当初は、手術するのかしないのかとても悩んでいた。手術には、約百五十万程度かかる。決して安いものではないが、父も母も仕事をしており、払えない額ではないと思っていた。

 しかし、手術は、失敗するリスクもあった。手術を行なっても、大きく回復する見込みがない中で、手術をすることは、あまりメリットがないようにも感じていた。

 両親は、手術に対して、どちらかというと消極的な様子だった。両親からは、「自分で選びなさい」と言われていた。

正直、私は、どちらでもよかった。この状況を変えたいという思いはあったが、この状況よりもさらに苦しい思いが待っていることへの不安の思いも強かったからだ。

 私が手術を決めたきっかけは、健太郎の影響だ。健太郎は、幼稚園からの幼なじみで、中学校までずっと一緒だった。中学3年生になって、私が進路を変更した時も、私を一生懸命、説得しに足を運んでくれた。

 彼は、高校生になっても、一生懸命に生きていた。健太郎は、聖徳高校で硬式野球部に入っていた。野球でレギュラーになれなくても、ただ、ひたすらバットを振っていた。家が近所の私は、彼がバットを振る姿を毎日のように見ていたのだ。そんな一生懸命に生きる姿に、感化され、私は手術を決めたのだった。

 手術を決めた私だったが、健太郎に上手く伝えることはできなかった。手術を行うとは伝えずに、入院することしか伝えなかった。GW中に、彼が病院に来てくれた中で気づいている様子だった。

 この手術は、私にとって悪いことばかりではなかった。手術前と比べると、疲れることが減ってきたのだ。これから、リハビリを続ければさらに変わるのではないかと思っていた。

 そして、那奈との出会いも大きかった。那奈は、健太郎が通う聖徳高校の三年生。健太郎が病院に来た時は、三人で話してとても盛り上がった。那奈は、不眠症に悩まされていた。入院前は、家で治療を進めていたが、症状は改善されなかったらしい。それで、入院することになったらしい。

 那奈とは、5月の半ばまで一緒だったが、症状が改善できなかったこともあり、他の病院へうつったのだ。そこからは、主にLINEでやりとりをしていた。

 那奈がいてくれたこともあり、なんとか手術に耐えることができた。今は、お互いの近況を報告しながら日常生活に戻れるように頑張っていた。

 そんなことを考えながら、勉強を終えて、ベットに寝転んだ。

 

 

 

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