1年2組
普通の高校と異なり、桔梗ヶ丘高校は入学時に既に文系と理系に分かれる。クラス替えもない。したがって、このクラスメイトが一生連れそう仲間となるのだ。冒頭の通り、慎太郎には中学3年時から片想いをしていた女子がいる。千葉景だ。明るく、差別をしない人柄の良さに慎太郎は惚れた。景だけが大会前の慎太郎に激励の言葉を掛けた、というのも慎太郎が好意を持つきっかけの一つだ。この女が、慎太郎の女性不信を増幅させることになるなど、まだ慎太郎も気づいていない。
そんな景とはなんとしても同じクラスになりたい。乙女のような純粋な気持ちで、クラス名簿の紙を覗いた慎太郎は、昇降口にうずくまった。文系は9クラス中2クラス。慎太郎は1/2の確率を逃したのだ。加えて、小学校からの貴重な女子友達枠の八田桜花も、慎太郎と別クラスだ。
「さよなら、俺の高校生活。」
想い人と信頼する女子の両方を失った慎太郎の撃沈度は尋常ではなかった。クラスの女子の半分から漂うガリ勉陰キャ臭。慎太郎の理想を打ち砕くものだった。しかし、不幸中の幸いだったのは男子の絆の強さだった。文系は男子が少ない。そのこともあってか、クラス開始当初からかなり仲が良かった。
「…あ、あれ?もしかして、たくきくん?」
「えー、うーんと…慎太郎君だ!」
「そう!正解!!」
菅田拓揮。慎太郎とは出身小中学校が違うが、父親どうしが職場仲間で、小学校1年時には一緒に競馬場へ行ったことがあった。それ以来疎遠になっていたが、実に9年ぶりの再会を果たした。
このクラスに魅力を感じていなかった慎太郎だが、1週間も経てばその念は消えていた。濃いメンバーばかりだったのである。特に男子は個性豊かでみんな仲が良いため全員の特性をお伝えしたいが、そんな余裕もないので、簡単な紹介と名前のみにさせていただく。高校生ながらクラブチームで野球をする阿部大斗、マッチョなバスケプレーヤー・山岡顕輔、イケボの声優志望・大川善逸、クールなテニスボーイ・丹野祐樹、あだ名がモンキー・朽木正彦、初岡村No. 1ギタリスト・田中堅樹、笑顔の裏に色欲あり・鳴門高弥、ネタ枠・本田大勇、毒舌キャラ・吉本新都、傲慢デブ親方・多和田浩介、髭男ファン・大木洋介、進撃の巨人・佐野宗憲、キ○ガイ・原田想起、そして駿希、拓揮、修、慎太郎だ。このメンバーが起こすドタバタ劇も、野球部と並行して、是非お楽しみいただきたい。
(第4話 終)