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29.エピローグ

「おはよう」


 俺に気が付いた陽毬が右手だけをあげ、挨拶をしてくる。

 

「お、おはよう」

「声が小さいわね。相変わらず」

「だ、だって、人がだな」

「ほんとにもう、周りを気にするのね」

「そら、なあ」


 変わろうと思っているけど、そんなすぐにこれまでの習慣が消えるわけじゃあない。

 陽毬ははああとため息をつくが、俺は見逃さなかった。

 彼女の前髪を留めているヘアピンに。

 

「桜の花?」

「よく気が付いたわね。牡丹さん、桜の花びらが好きだったじゃない」

「それ買ったんだ」

「うん、帰りに100均でね」

「それなら、お、俺も」

「俺も?」

「最後まで言わせなくても分かるだろ」

「えー。分からないわー」


 ワザとらしい態度をおお。

 

「選ぶなら俺も一緒に行きたかった」


 ぶすうと彼女から顔を背けつつも、結局は口に出す弱い俺である。

 

「あはは。そうよ、最初から素直になれば可愛いのに」

「俺、男なんで可愛いってのはちょっと」

「まあいいじゃない」

「ははは」


 陽毬はいつも通り変わらない。

 あんなことがあったってのに。彼女は全く気にしていないのかな。それはそれで少しショックだ。

 

「何を暗い顔をしているのよ」

「あ、その、昨日」


 「昨日」というキーワードでかああっと真っ赤になる陽毬。

 ブルブルと首を左右に振り、大仰な仕草で俺を指さす。

 

「あれはノーカンよ。ノーカン。だって、あの時は私は牡丹さん、あなたが長十郎さんなんだから」

「そ、そうだな」

「まさか、あの時のことを想像していやらしいことをしていないでしょうね」

「してないわ!」

「そう、ならいいのよ」


 ふんと鼻息荒くそう言い放った陽毬は、一歩前に出て振り向かずに声を漏らす。

 

「……したいなら、ちゃんと挑んできなさいよ」

「お、おう。高そうなハードルだけど……」

「そんなことないわよ。あなた次第よ」


 と言いつつ俺の横に並び、極上の笑顔を浮かべる陽毬にドキッとした。

 やっぱり、彼女はとんでもなく愛らしく、可愛い。

 口は悪いけど。

 

「何か変なことを考えていなかった?」

「いや、何でも」

「全くもう」

「ほら、早くいかないと遅れるぞ」


 「ほらほら」と前を指さす俺の反対側の手をそっと握りしめる陽毬に笑顔を向ける。


「ん?」

 

 通学中なんだけどと彼女に目を向けたら、彼女は涙目で俺を睨みつけてきた。


「いいから進みなさい」

「へいへい」


 二人並んで、通学路を進み始める。

 その時、どこから飛んできたのか一枚の桜の花びらが俺の肩に止まった。

 

 

 おしまい。

これにて完結となります。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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