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勝者??

やっと会議が終わって部屋を出た。

それぞれ、帰るもの。王宮に泊まるもの。

自分の進む方向に足を進める。


おれは、王宮に泊まることになった。


当事者たちを、明日の昼過ぎに王宮の謁見の間に呼び出す事となった。

通達は、会議が終わる前にすでに出されている。





黙ったまま、殿下の部屋まで歩き

部屋付きの騎士に、軽く頭を下げ2人で部屋の中に入った。

酒でも飲まないと、やってられない……


酒の用意をしようと、部屋の中の応接セットへ向かうと

手紙が2通、テーブルの上に置かれていた。


「殿下、部屋に誰か入られましたか??」


部屋着に着替えるためにベッドルームに引っ込んだ殿下に声を掛ける。


「いや」


訝しげに出てきた殿下に、手紙を見せる。


「テーブルの上に載っていましたが」


一応、外に控えている護衛たちに聞くと、

誰も入室はされていない。

‥‥と


「私が開けてみます」


殿下に渡した2通の手紙から、

厚手の方を開ける。


中から出てきたのは、魔石が3つと手紙。

小さな封筒もさらに入っていた。


「‥‥‥トルスタイン様からです」


中の手紙のサインがトルスタインだった。


そうすると、もう1通はローリック侯爵からか‥‥


内容は、わび状だった。

エドワルド殿下に仕えられなかった事。

アイリス嬢の卒業パーティーに間に合わせなかった事。


‥‥やっぱり、トルスタインの仕業だったのか。


納得してしまう。

同封されていた魔石は、魔力が付与されている物だった。

エドワルド殿下が在命中の期限までついているらしい。


1つ目はローリック侯爵から魅了

2つ目はダイアナ嬢から治癒

3つ目はトルスタインから防御


彼らの魔力を考えると、

それぞれ、国宝級の一級品だろう。


「マフィー、こっちは、お前にらしい」


封筒を受け取ると、メッセージカードと魔石が1個


「悪い!!あとよろしく」

一言だけ書かれたカードと

『回復』が付与された魔石。



はぁ~


殿下と目を合わせて、

お互いに大きなため息をつく。



殿下は、もう1通の手紙を読み終わると、

俺に渡してきた。



ローリック侯爵の手紙だ


ダイアナが生きている。


ローリック家が抱える暗部、隠密部隊を5年の期限で貸し出す。

5年後、暗部の者に認められるようなら、

そのまま使用する権利を認める。


自分たちは出奔するが、

ローリック侯爵一族は、今までと同じように

領地を管理し、魔物を狩り、魔石を取り続ける。



王家に必要な物を

エドワルド殿下の名のもとに残すことが約束された手紙であった。


王ではなく、エドワルド殿下へ

ローリック侯爵家の忠誠が誓われたのだ。



手紙を読み終わった時、どこからともなく

『木漏れ日亭』で昼間に会った2人が入ってきた。


もう、驚きを通り越して

笑ってしまう


「ガス、お前もそうなのか‥‥」


今、ここにいる。という事が証明だろう。

それでも、ついつい聞いてしまった。


「ローリック家からの依頼により、

エドワルド殿下にお仕えすることをお約束します。

‥…‥5年の期限つきですけどね」


ニヤリと笑う


「感謝する。何かあれば『木漏れ日亭』に使いを出す」


「使いは不要です。後ほど、王宮内の連絡係を紹介します。

‥‥‥こちらから連絡しますので、少々お待ちください」


どれほどの組織なのだろうか??


恐ろしくなる。




認められたのだろう、次期王と宰相として


手に入れた物は大きすぎる。


この度の外交での成果を始め、


外交や内政に仕える『魅了』の魔法

‥‥ローリック侯爵が持っていたことは薄々感じていたが

使い方によっては危険だ


『治癒』『防御』

これがあれば、外敵から身を守ることが出来る

アイリス嬢に持たせても良いのだろう


「付与の魔石については、我らの判断で使い方に不明な点があれば、

破壊する事となっております。ご理解ください」


ストッパーまで用意されている。


「では、失礼いたします。

お二人とも、お疲れのようですので、

『治癒』『回復』の魔石を握ったまま、お休みになってください」


そう、言い終わると

消えるように部屋から出て行った



「寝るか」


用意しようとしていた、ブランデーを横目に

殿下が告げた。


「そうですね」


ブランデーを棚に戻しながら


「長い一日でしたね‥‥‥

エド様、おやすみなさい」


挨拶をして、外に出た


手には、いただいた魔石を握りしめている。

疲れが吸収されているように感じながら、

自室に戻った。













「おい、これで良かったのか??」


木漏れ日亭亭主ガスが隣を歩く女性に声を掛けた。


「はい。ローリック家の総意です」

ニコっと笑う女性


彼女は、少し前までディーと呼ばれ

『誘導』の魔法を使える侍女であった。


ダイアナの為に首を切った‥‥‥

そこまでは、真実である。

ただ、それは致命傷ではなかった。


彼女の『誘導』の力は、強くはない。

その力を威力を高めるためには、

相手の動揺を誘うのが一番だ。

その為に、実際に自分を傷を付ける必要があった。

傷を治すのには、すでに治癒の力が必要だが、

侯爵により用意された魔石があった。


トルスタインがディーに対して、

興味を持っていたのは周知の事実であった。

まだ、愛情というほどのではなく

親愛に近い形だった事も。


ディーも彼を好きであれば、問題なかったのだが、

孤児であるディーは、親よりも年上であろうガスを好きだった。

‥‥‥ファザコンを拗らせたか。


ダイアナの身代わりが欲しいローリック侯爵と

ダイアナを救い、ガスにも嫁ぎたいディーの思惑が一致した。



血まみれのディーに動揺したトルスタイン。

ダイアナの死に動揺した、司祭と医師の思考を

誘導するのは、難しくなかった。



結果、ディーは『木漏れ日亭』に押しかけ女房となった。


マフィーの知りたがった、庶民の調教師は彼女なのだ

暗部だけでなく、食堂の女将としても、優秀だ。




この事実を、トルスタインが知るのは

もう少し、後になるだろうが

きっと彼は、ディーの幸せを喜んでくれる‥‥たぶん。

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