第7話 絶対無敵シャーロット要塞
義男がシャーロットの家に一歩踏み入れた時、目の前には異様な光景が広がっていた。
天井に取り付けられたミラーボール、部屋の中心にあるししおどしとそれを囲むように敷き詰められた畳、ピンク色で♡のちりばめられた壁etc···。
「いらっしゃい。これがわしの家、通称・絶対無敵シャーロット要塞じゃ!」
「きたー!やっぱクソババアの家はこうじゃなくっちゃなぁ!ババア!こりゃ最高の家だぜ!」
と叫んだ。
流石の俺も感動してしまった。
家に入る前まではこのクソババア、変わってる人だけど家は普通なんだなーと思っていた。
しかし、扉を開けてみるとあら不思議。やっぱり個性の強すぎる家ではないか!
いやぁ!期待を裏切らないなぁ!外装と内装のこのギャップ!こりゃ一本取られたわ!
「気に入ってくれれば結構じゃ。それでな、二階にちょうど一室空いてる部屋があるからそこをお前の部屋にしてやるからついてこい」
そう言ってシャーロットは階段の方へ歩き始めた。
そして、シャーロットが階段に一歩目を踏み出した時だった。
ゴゴゴゴゴゴ···
なんと、大きな音がしたと同時に階段が動き始めたのだ。
「すげぇ!階段がエスカレーターになるのか!」
「えすかれーたー?と言うものがなんなのかは知らんが、これはわしの弟子が腰の悪いわしのために作ってくれたんじゃ。すごいじゃろ?」
なんと!これを作ることができる弟子がいるというのか!
『発明家』とかそういう類の二つ名の持ち主とかがスキルで作ったんだろう
すげぇな···
義男は感心しながらエスカレーターで二階へ行った。
シャーロットは廊下を少し歩いて、一つの部屋の扉を開けた。
「お前の部屋はここじゃ。好きなようにカスタマイズしてもらって構わん」
案内されたのは二階の一番奥の部屋だった。
内装は一階とはまるで違い。床は木製で壁も白く、家具が何も置かれていない質素な部屋だった。
「え?自由にカスタマイズ出来るのはいいとして、ベッドすらもない感じ?」
「わしが勝手に家具を置いてしまってはお前の自由な空間を奪ってしまうことになるじゃろ?わしの弟子には個性溢れる自室を作って欲しいんじゃ。だから敢えて家具は置いとらん」
「なるほど、個性溢れる自室を作ることで自分特有のスキルを発現させようと。そういうことですな?」
二つ名。それは一人一人に与えられた個人特有のものだ。
つまり、二つ名が持つ秘められた力を引き出すには個性を解放することが必要。
今まで色んなアニメや漫画を鑑賞してきた俺にはシャーロットの意図がなんとなく推測できた。
このクソババア。師匠としての腕は中々なのかもしれないな。
「いや、全然そんなこと思っとらん。本当はお金かけたくないだけじゃ」
前言撤回。このケチババアめ。深読みして損したぞおい。
クソババアでケチババアってもう最悪のババアじゃねーか。
「ちくしょう!じゃあベッド買うまでは床で寝ろってか!」
「まぁ、頑張れ。みんなここから自分の要塞を作っていくんじゃ」
あー、まじか。こりゃ今夜はよく眠れないぞぉ〜?
少し先の未来の予想をしていると
「クソババアー!料理は終わってるから早くご飯にしようよー!」
ゴンザリーナが一階からそう叫んだ。
あー。気付けばもう夕方か。
おばあちゃんの夕食は早いって言うしな。もうご飯の時間なわけか。
「そうじゃな、夕食にしよう」
そう言ってエスカレーターで一階に降りるともう既にゴンザリーナが食器に料理を盛り付けてししおどしを囲むように丸く配置された机へ運んでいた。
それを見て義男も自分の分の料理を運び畳の上で正座した。