第七話 ホールへ歩く道
朝起きて
昨日もらってしまったあれを持った。
―やっぱりなんかおかしいよ。どうなってんの!?
でも今日という日が来たら仕方がない。
念のためズボンもバックの中に入れておく。
スカートを穿くのは、初めてではない。
幼稚園の頃、小学校の頃、何度も何度も着せられたことがある。
まあ、一応慣れてはいるけど・・・。
やっぱり足元がすうすうするのは変わらない。
ああ、みんなに見られるのか・・・。
そう思うと、気が重くなった。
階段を下りて、お母さんと会う。
なんかやっぱり落ち着かない。
「亜貴ー香華ちゃん来たわよー」
「何で!?」
「一緒に行きたいって」
急いで残っていた味噌汁を飲み干す。
体がやけに熱くなった気がするが、あまり気にしない。
足元の方が気になるって!
ドアを開けると、目の前に香華が来た。
「おはよう。わあ、あきちゃんすごく似合ってるじゃない」
「おはよう」
なんだかとっても恥ずかしい。
それに、寒い・・・。
駅まで香華と一緒に歩いて行った。
「そうだ、ピンはどうしたの?」
「あっ。一応持っているよ」
「まああきちゃんはなしでもかわいいから大丈夫だったね」
「うう・・・」
やっぱり褒められてんだかからかわれてるんだかわかんない。
何なんだろう。
「そうだ、なんでこういうことになったの?」
「ふふふふ。教えてほしい?」
何か怖い・・・。
「おととい、女子たちの中で話してたの」
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―昼休み
「あきちゃんって女装させたらかわいくない?」
私、神田香華はいくらかの女子にそう問いかける。
「う~ん。でも似合うとは思うな!」
「やっぱ!!っていうか、あの子、昔からよく女装してたし」
「えっほんと!?」
「見てみたいなー」
「ま、私や周りの人がさせてたんだけど」
「一回亜貴が女子の格好で行かせられてたことあるよ」
そう言ったのは、同じクラスの平城 五月だった。
「本当に!?いつ?」
「小学校低学年の頃・・・かな。結構かわいかった」
「これはもう作戦実行するっきゃないっしょ!」
「うん!そうだね」
「題して、あきちゃん女子化プロジェクト!」
わー、と数人の女子が小さな歓声を上げる。
「まずはどうするの?」
「やっぱ合唱祭でこの制服で出てほしいよね」
「それはいいね!!言い出しっぺは香華だから、香華がいろいろやってね」
「言うのはみんなで一緒に言おうよ。楽しみね」
「まずは国本先生に言ってみる?」
「さんせー」
と言うと、みんなで国本先生のところへ行った。
「国本先生ー」
「何でしょう」
「あの、今話してたんですけど、えっと、その、藤本くんってソプラノじゃないですか。それで、合唱祭で、より統一感とか、協調性とか、そういうものを持たせたいんですよ」
「うん」
「だから、その、藤本くんに制服はスカートで出てもらうってだめですかね?」
「う~ん。本人は大丈夫なの?」
「本人は・・・まあ、大丈夫です。承諾してくれるので。先生も藤本くんにあんま変なこと言わないでくださいね」
「まあ、本人がいいんならいいですよ。念のため校長先生とかにも言っときます」
「ありがとうございます!」
「作戦実行するぞー!」
「まずは明日交渉しよう!」
「うん!」
こうして、次の日、あきちゃんに交渉をした。
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「ま、そんなとこね」
「そういうことかー。ま、しょうがないわけじゃないけど・・・それで今私がこんな格好をしているんだね」
「そうね。かわいいんだから、まあいいじゃないの!」
「うっまっまあ・・・」
これは認めてもいいのだろうか・・・?
まあ、今日はこれで過ごしてみるか・・・。