第二十話 年越し
今年365回目の朝がやってくる。
いや、今年はうるう年だから366回目だ。
12月31日という特別な日。
今年ももう終わりか。
とりあえず、お母さんに挨拶する。
「おはよー」
「ん、あき、おはよ。今日は早いのね」
そう言えばそうだ。
今日は七時に起きたのである。
休みなのに、学校に行く時間より早く起きることなんてめったにないのに。
「まあ、大晦日だし」
「そうね。じゃあ、今日はとことん手伝ってもらうよー!まずは朝ご飯を作ってあげる」
「ありがとっ」
そうして、こたつに入り、朝ご飯をゆっくり食べて、みかんを何個も食べながら、テレビで大晦日の番組を見ていると、あっというまに三時間経ってしまった。
「あき、そろそろ着替えちゃいなさい」
「はーい」
私は、自分の部屋に戻り、ズボンをはいて、シャツを着て、その上に厚めの服を着て、またリビングへと戻った。
「あー寒い寒い」
と言いながらこたつに入ろうとすると、こたつが付いていなかった。
つけようとすると、影が見え、上を向くと母がいた。
「こたつあるとなんもしないから、だーめ」
「えー」
「今日は大晦日なんだし、スカートにしないの?」
「寒いんだもーん」
「でも、ちょっとくらいおしゃれした方がいいんじゃない?」
「そーお?じゃあ、そうするよ」
お母さんからの圧迫を感じたので、替えることにした。
いろんなのがあるが、ちょっとかわいいめのスカートを手に取り、それをはいて、ニーハイをはいた。
「あき、ちょっと手伝ってくれる―?」
「はーい」
その足で行ってみると、お母さんが台所で作業をしていた。
「今日は、一緒に、おせち作るわよ」
「うん、わかったー。」
まず、昆布巻きを作った。
そして、筑前煮、黒豆、高野豆腐と、煮る系を作っていった。
私はその横で、なますを作っていた。
なますとは、大根とニンジンを混ぜて味付けしたものだ、
大根を細かく切り、ニンジンをピーラーで皮をむき、細かく細長く切っていった。
意外と切るのが、大きさなどの関係もあり、大変だった。
そしてなますは味付けをして、その他もお母さんが作ってくれたらしいので、黒豆は一緒に長呂儀を載せる。
最近は長呂儀を知らない人もいるらしいが、こんなおいしいもの、もったいなすぎる!
というわけで、チョロギと黒豆のセットが私は大好物なんですが。
一旦ここで休憩をした。
「あき、お疲れ。どうだった?」
「すごい楽しいねー。なんか、やった感がある」
「まだまだあるよー」
「楽しみにしてるー!」
そして、伊達巻を作って、他にもいろいろ作った。
私が尽力を尽くしたのは、やはり
栗きんとん。
さつまいもを切って、煮て、
裏ごしは、少し難しく、とにかく見たことあるような感じにまで仕上げた。
そんな感じでたくさんやって、おせちがとりあえず完成した。
「できたー!」
「あき、ありがとう。手伝ってくれて」
「本当に、楽しかったね」
「そう言ってもらって、お母さんも嬉しいわ」
それからは、残っていた大掃除をさくっとやり、お母さんがおそばを作ってくれていた。
お父さんは今日は家にいたのだが、結構いろいろ家のためにやってくれていた。
例えば、門松を飾ったり、お正月用のリースを玄関に飾ったり、高いところのものをとったり、神棚の掃除をしたり、重いものを動かしたり。
私も、手伝うといったのだが。
「かわいい娘に傷つけるような頼みはせん」
とバッサリ言われてしまった。
そして、色々な忙しい労働をたくさんし、
「全部終わったー!」
「すごい、今年中にいろいろやること終わったねー」
「ありがとう。みんなが頑張ってくれたからね」
「冬なのにすごい汗かいたー」
「それじゃあ、母さんが作ってくれたおそばを食べるか」
「さんせー♪」
「あらあら、二人ともご機嫌ね」
そんな勢いでおそばを食卓に並べて、
「いただきます」
「うん!あったかくておいし~」
「ほんと。この天ぷらもいいな」
「おそばは細く、長くっていうのだから、どんどん食べてね。天ぷらはまだあるし」
「うん!ありがとう!」
そんな調子で、どんどん食べ進めていった。
お父さんなんか、本当に天ぷらをおかわりしちゃって、すべてきれいになくなった。
「ごちそうさま!やっぱりお母さんの作るおそばは美味しいね~」
「そりゃよかった。また作ろうね」
そして、お風呂に入って、歯磨きまでして、みんなで、リビングでテレビを見ながら、年を越すのを待った。
「今年も終わっちゃうねー」
「ほんと、短かったよね」
「今年一番の出来事は、やっぱり空きが中学入学したことかな」
「確かにな。中学生になって、さらに可愛くなったと思うし」
「むお、お父さんったら」
「でも、大人っぽくなったわよね。香華ちゃんたちのおかげかもしれないけど」
「でも、楽しかったな~今年は一段と」
「みんなで成長するのを感じると、やっぱりいいものだな」
「あら、お父さん、たまにはいいこと言うじゃない」
「ちょ、母さん、俺はそんなたまにでもないぞ」
そう言って、みんなで笑いあった。
テレビは「ゆく年くる年」に変えて、あと数分で越す年を、じっと待つ。
そしてついに、
「ゴーン」
外で除夜の鐘が鳴った。
「あけましておめでとうございます!」
「今年もよろしく!」
「頑張ろうね!」
それで少し会話を交わして、私は眠くなり、さっと寝た。
なんだか気持ちが清々しかった。




