表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつのまにか女子扱いになっていったボクの中学時代  作者: 栄啓あい
第二章 女の子にされていく日々
23/30

第十九話 年末のスーパーマーケット

 ふう、あったかくて気持ちいい。


 出たくないなあ。


 えっと…みかんは…っと


 皮をむいて何房あるか数えて、一房ずつ、もしくは二房ずつ取ってパクリ。


 う~ん、おいしいー


 「あ~きいいいい~」


 そこに、恐い顔をした母がやってくる。


 今日は、ある冬の一日。


 12月30日という、とても年末の日だ。


 そんな日だっていうのに、私はずっとこたつの中でダラダラしている。


 冬は、とてつもなく苦手で、こたつからできれば出たくない!


 でも、冬休みの宿題もあるし、何しろ年末、お正月と続くので、大忙しのはずである。


 「そんな暇そうにしてるなら、大掃除手伝ってよ!」

 「だって~寒いんだも~ん」

 

 少し田舎の町に住んでいるから、都会とは気温が何度か違って、とてつもなく寒いのだ。


 「動いてればあったかくなるから!ほら、ここ拭いてー」

 「はーいい」


  そして、やっとこさの思いで、布団から出た。


 今まで食べたいくつものみかんの皮を捨て、母のもとへ向かう。


 「冬休みだからって、ずっとダラダラしてると、体なまるわよ」

 「大丈夫だよー」

 「今年も色々忙しいんだから、また手伝ってね」

 「はーい」

 「あ、そうだ、今年は女の子になった記念に、一緒におせちつくってみようか!っていうか、つくってね」

 「え?ほんとに?」

 「ほんとだよ!力仕事はほぼ全部お父さんに任せるから、あきは私の手伝いをしてちょうだい」

 「わ、わかったよ…」


 床や壁を拭きながら、そんな話をする。


 大掃除が終わると、お正月の飾りを玄関につける。


 そして、ちょっとほっとする。


 「あき、ありがとうね」

 「いや、大丈夫大丈夫」


 そして、お昼ご飯の時間だ。

 

 ご飯に、生野菜のサラダに、スープという、いたって普通のシンプルなご飯だ。


 これは、お母さんが作ってくれた。


 お昼ご飯を食べ終わると、私はまたこたつの中でごろごろし始めてしまう。


 「まだまだ明るいんだし、外でも行って来たら?」

 「え~やだよ、寒いから」

 「中学生になったからと言って、まだ若いんだから、外でにっこうでも浴びておかないと、損するよ」

 「え~。外に行っても特にすることもないんだけど」

 「することならあるわよ」


 そう言って、母はエコバックを取り出した。


 ああ、ああ、お買い物ね。


 「わーったよ、しょうがない、行ってくっか」

 「それが女の子の態度?」

 「あ、はいはい、わかりました」


 そして、こたつから十五分くらいかけて出て、買い物袋とお金とメモを持って、外に出た。


 う~寒っ!


 こんな日にスカートなんかで出るんじゃなかった。


 足元すっごい寒い!


 今日は一日外でないつもりだったからスカートにしたのにな…。


 そうやっていろいろ文句を一人でつぶやきながら、歩き出した。


 私の家から一番近いスーパーまで、徒歩五分くらいで着く。


 いつもそこで食材などを調達しているのだ。


 スーパーに入ると、さすが暖房がよく聞いていて、楽園だった。


 お肉コーナーとか冷凍食品コーナーとか言った時は死ぬかと思ったけど。


 途中、コンソメのコーナーにいたら、中山くんがいた。


 「お、藤本じゃん。なんか、こうやって話すの、久しぶりだな」

 「中山くんもお買い物?偉いね」

 「いやあ、俺は親に頼まれて嫌々な」

 「そっか~それなら私も一緒だわー」

 「藤本ってこういうの自主的にやりそうだけどな」

 「いやいや、寒いから、できるだけ外出たくなかったのにな」


 なんか中山君が少々顔が赤くなっているような気がする。


 「ふ、藤本…なんか、今日、か、かわいいな」


 なんですと!


 驚きしかなかった。


 でも、嬉しいは嬉しいな。


 かわいいって言われて喜ばない人はいないよね。


 「ありがとう」


 ちょっとだけ上目遣いをしてやった。


 「じゃ、じゃあな」

 「ばいば~い」


 そして、買い物を続けた。


 スーパーはすっかりお正月ムードになっていて、私の買っているものも、栗やら黒豆やら、おせちに入れそうなものだった。


 これを使ってあとで作るって思うと、ちょっと楽しみかも。


 そして、買い物を終わらせて、スーパーの中にあるコーヒーのブラックを飲んで、落ち着いてから帰った。


 色々持っているので、大変だ。


 「お嬢さん」


 という男の人の声が聞こえたが、私だとは思わないので、スルーしてたら、もう一度、


 「お嬢さん」


 と、今度はさっきよりも近くで聞こえたので、これは、私に向かってだな、もしや、何かあぶないやつかと思って、振り切っていた。


 なんだろう、恐い恐い。


 と思っていたら、


 「手袋、手袋、お嬢さん!」


 と聞こえたとたん、私は手袋をしていなかったので、あ、と立ち止まり、振りむいた。


 「あ、よかったよかった。さっきのコーヒーのところのテーブルに忘れていたよ。すたすた行っちゃうもんだから、焦ったよ」

 「あ、すみませんでした…ありがとうございます!」


 それだけ言い切って、恥ずかしさのあまり、逃げるようにスーパーを出てしまった。


 さすがに買い物袋を持ちながらは重かった。


 お嬢さん、って言われたのは、ちょっと慣れてなかったから、びっくりしたな。


 やっぱり冬の暖かいところはボーっとしてしまうのだな。


 あああ、寒い寒い、


 と、さっさと家に帰った。


 「おかえり、あき。変な人に会わなかった?」


 最近母はすぐにこうきいてくる。


 そんな、そうそう会わないって。


 「忘れた手袋を届けてくれた」

 「あら、優しい。きっとあきがかわいくてかわいそうに思ったのね」

 「う、そうなのかな?あと、中山君にも会ったよ」

 「そうなの。きっとあきのことかわいいって言ってたでしょ」

 「え、うん、なんでそれを…?」

 「だって、今日のあき、いつもよりもさらに一段と可愛いもん!」

 「そ、そうなんだ…」


 それから私は、冬休みの宿題をちまちまやっていた。


 お父さんが帰ってくると、お父さんも私のことを可愛い可愛いとべた褒めしていた。


 そんないつもと違うかな…。


 そして、明日のお正月の準備のために、早く寝た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ