第十三話 女子の日々
あれから、あの"格好"で、大体二週間くらい経った。
期末テストもあり、多忙な日々を送っていた。
期末テストの最終日には、対象者による、二者面談があった。
四十人のクラスの中で、十人くらいが対象者だ。
香華も、その中に入っていた。
そして、私も入っていた。
「次、藤本さん、どうぞ」
「はい」
そう、相変わらず高い声で応える。
「いきなりだけど、藤本さん、大丈夫?」
「え?何がですか?」
「いや何がじゃなくて、今のこの状況」
「え?特に問題はないですが・・・」
「あらそう?」
「はい」
「それでさ、トイレはもう君も使っている通り、女子トイレでいいんだよね?何せ、紛らわしいからね」
「え?ああ、はい」
「遠慮しなくていいのよ」
「いや、大丈夫です。慣れたので」
本当は大丈夫じゃないのかもしれないが、期末テストで疲れているのもあるせいか、判断力が若干鈍っている。
そして、今の状況で特に問題はないから、大丈夫よ、きっと。
「それでね、相談なんだけど、」
「なんですか?」
「体育の授業ってどうする?」
!?
「女子になるには、そういうところも考えないとだよね?」
「えーと・・・」
「神田さんが、藤本くんが女子なら、丸く収まるって・・・本人も承諾しているって聞いたし」
?
何が丸く収まるんだ?
あと、承諾って・・・一応もう受け入れちゃってるけど。
「体育の授業も変わったら、男子と授業のカリキュラムも変わってくるけど・・・その辺も大丈夫なら
、お願いね」
これは・・・夢なのかなあ。
確かに、私は運動が得意な方ではなく、私のやりたい種目や授業などは、ほとんど女子の方にあった。
長距離走も、800mや1000mが限界で、その先は歩くくらい、嫌だ。
あと、男子は変なところでうるさい。
体育の時でこそ、熱血で力が穿いて大盛り上がりするので、それが怖くてついていけない。
あれ?こうなると、私って、体育は女子の方がメリットが多いんじゃない?
「どう?」
「・・・わかりました。それではお願いします」
先生は少し驚いているような様子だったが、微笑んで、
「そうですか。じゃあ、言っておきますね。次の授業からできるかもしれないので・・・お願いしますね」
「はい!お願いします!」
こう、軽はずみな気持ちで変えてしまったのが、これからどう転がっていくのだろうか。
明日は学校がない
今日は金曜日だからだ。
月曜日、体育のある日までに、色々と体育についてきいてみよう。
「ただいまー」
「おかえりー。泰ちゃんからさっき電話あったよ~」
「え?どうしたの?」
「わかんない。あき姉としゃべりたいって言ってた。」
「ふーん」
「かけ直してあげて」
「わかったー」
泰平かあ、そういえば久しく話してないなあー。
そう思い、電話をかけた。
ワンコールで、受話器が取れる音がした。
「もしもし・・・って、その息づかいは、あき姉だな!?」
「え?あ、うん」
「あき姉!制服ありがとおー!あき姉の制服着られるとは思ってなかったかんなあー!」
「で、何に使うの?あれ」
「あき姉の物を持っているだけで幸せなんだー!」
おお・・・なかなかちょっと気持ち悪い・・・
姉としては、こういうとこは、ちょっとやりすぎかな・・・と思う・・・ってあれ?
私って姉だっけ。
けど、泰平が姉好きなのは、私も嬉しいな。
従姉弟だけどね。
「それはそうとあき姉、女になったんか?ついに」
「いや、なんか泰平がズボン持ってったから仕方なく・・・みたいな?」
「だって、俺は、あき姉がもう使わないからって、避難でもらったんだぞー!」
「えそなの?」
「まあでも、あき姉が本当に姉になったら、俺は嬉しいぞ!俺はそれを望んでいる!」
「わ、私は、別に、どっちでもいいっていうか・・・?」
「あき姉がほんとにかあわいい女の子になったら、俺が守ってやるからな!」
「う、うん。ありがとうね」
「じゃあな!あき姉!」
「用件ってそれだけ?」
「うん!そうだぞ!あき姉!頑張れ!」
「じゃねー」
そして電話を切る。
うーん。やっぱりいいのかなあ、これで。
せっかく電話の前にいるんだし、ちょっと香華に電話してみよう。
体育のことも訊きたいし。
「もしもし。神田です」
出たのは、お母さんだった。
「もしもし、私、生高中学校一年二組の藤本亜貴なんですけど・・・香華さんいますか?」
「あら?亜貴くん?久しぶりー!元気だった?幼稚園一緒だったよね?」
「はい。お久しぶりです」
「今、香華に代わるわね。ちょっと待ってね。香華ー!亜貴くんからよー!」
確かに、香華のお母さんと話すのは久しぶりだった。
というか、幼稚園ぶりだったので、あちらが一方的に知っているだけである。
「もしもし、代わりました」
「あ、香華?ちょっとききたいんだけどさ」
「え?何?あ、今日の面談でなんかすごい先生があきちゃんのこと言ってたよ」
「え、なんて?」
「私があきちゃんに色々やってたからね。幼なじみなの?みたいな」
「ああ、そういうことね」
「それで、ききたいことって?」
言おうとしたが、少しためらった。
「ん?どした?」
「女子の体育ってどんな感じなの?」
「え!?えっとねえ・・・楽しいよ!」
「どんなことやってるの?」
「陸上で800m走やった。球技はバレーやって、次の単元はダンスだよ」
やはりどれも自分に合っているものばかりだ。
「あと、授業後には体育のノート書いて・・・」
「あーそれは知ってる。先生はどんな感じ?」
「真鍋先生?えーっと、できない子にはしっかり配慮してくれるよ。できる子の方が好きっぽいけど、できない子は一生懸命教えてくれるし、気持ちもわかってくれる」
「へえーいい先生だね」
「どうしたの?いきなり?」
「えーと」
「あ、もしかしてあきちゃんも女子の体育に入るの?」
っさすが香華、図星を突かれて一瞬戸惑った。
香華の声はうきうきしていた。
「ま、まあ、そうだけど・・・」
「やった!ほかの子も許してくれるだろうから・・・てか、来てほしいねーって話してたから、ちょうどよかった!よろしくね!」
本当にこんなもんでよかったのだろうか。
うん、まあ、自分の意志なんだから、自分が納得していないとね!
やはり少し書きすぎてしまいました。
会話文も多いですねを
でも、引き続きどうかお読みください。




