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打ち明け

 それからしばらく、泰平とは会っていなかった。


 小六になった頃、私たちの方が家族で泰平の家に遊びに行った。


 その時の私は、男の格好だ。


 とは言っても、Tシャツも上着もズボンもレディースだから、男の子の格好とは言えないが。


 むしろ、これも女装というのか?


 髪は男子の中では長めだが、まあ、いつも通りだ。


 家に入ると、真っ先に泰平が飛び出してきた。


 「あき姉ー!久しぶりー!」

 「泰平、久しぶりー。元気だった?」

 「俺はいつでも元気だ!」


 そうして、案内してもらう。


 泰平の家は、けっこう落ち着いていた。


 「あれ、あき姉、今日はスカートじゃないの?」

 「うん・・・っていうか、いつもそんなんじゃないし!」


 今日はそもそも、遊びに来たのもあるが、私が本当は男だということを伝えに来たんだ。


 でもなんか、言うのためらうなー。


 「ん?どうした?あき姉。ずっとこっち見て。あ!もしかして俺に見とれちゃってんのー?」

 「いやいや、別に、何でもないよー」


 そう言って、目を反らしてしまう。


 こいつもめんどくさい奴だなあー。


 でも、タイミングが・・・つかめない。


 思い切ろう!


 「たいへ―」

 「あき姉!公園行こう!」


 あーまたダメだった・・・。


 私たちは公園に行き、一緒に遊ぶ。


 「あき姉、サッカーできる?」

 「私はあんまりやんないけど・・・まあできると思う」

 「女の子でもサッカーするの?」


 いやわかんないわ!


 「よくわかんない。けど、あんまりしないと思う」


 サッカーボールでいつのまにかパスし合っている。


 「あき姉、友達いないの?」

 「いるよ」

 「彼氏とか、ボーイフレンドとかは?」

 「え?」

 「いるの?いないの?」

 「・・・」


 いやそんなこと聞かれたって・・・。


 こいつ、無邪気すぎる。


 「どうしたの?ごめん、悪いこと言っちゃった?」


 サッカーボールが転がっていく。


 日は少しずつ落ちていく。


 いうなら今だ!


 「・・・ごめん」

 「え?何が?」

 「今まで、ずっとだましてた」


 私の声は、若干低めになっていた。


 声変わりとは違うが。


 「え?どうしたの?」

 「とりあえず、ベンチ座ろう」


 それからお互いに黙っていた。


 私から、話し始めた。


 「あのね、泰平って、今まで私のこと『お姉ちゃん』って呼んでたじゃん」

 「あき姉だよ」

 「そうじゃなくって・・・その・・・最初に会った時から・・・その・・・」

 「だって、一歳年上だよね?」

 「それは間違ってないんだよ。でも、本当は姉じゃなくって・・・」


 そこで一息おいて、私は泰平の方を見つめた。


 「え!?もしかして、お兄ちゃん!?あきにい・・・だったのか!?」

 「まあ、そういうこと。私、いや僕は、男なんだ」

 「えええー!でも、なんで今まで女の子の格好してたの?」

 「私・・・えっと僕が小学一年生の時、」

 「一人称、言いやすいのでいいぞ」

 「私が小一の時に、泰平がうちに来て、その時に『あき姉がいない!』って泣き出したのがかわいそうだったから・・・」

 「え!?そんなこと会ったんだ・・・なんかごめんね・・・俺の為なんて・・・」

 「いやまあ、大丈夫だけど」

 「でも気にすんな!あき姉は、あき姉だ!」

 「え?」

 「性別なんか関係ない!今更あき姉は変えられない!」

 「そっか・・・」


 まあそれは泰平の気持ちなんだから、しょうがない。


 「俺に止められないボールをけったら、男と認めてやろう」


 泰平はそう言って、私の前にボールを置いて、私から離れた。


 むちゃくちゃだ!


 「さあ来い!」


 そう言って、ベンチの間に泰平が立つ。


 私は本当に運動は出来ない。


 でも、思いっきりけってみる。


 そのボールは優しく転がっていき、案の定、止められてしまった。


 「まじめにやってる?本当に女の子じゃないの?でも、あき姉はこれからもあき姉だ!」

 「うん。もういいよ。もう慣れてるから」


 別に私的には、男だ!って認められなくてもいい気がする。


 「今日一緒にお風呂入ろう!本当は男同士なんだし!っていうか、あき姉が本当に男なのか、確かめてやる!」

 「はいはい。いいよー」

 「じゃあ、もうちょっと思いっきり遊ぶぞー!」

 「え?でももう暗いよ?」

 「大丈夫大丈夫!あとちょっとだけだから!」

 「わかった」

 「じゃあ行っくぞー!それ!」

 「ああ!」

 「しっかり取ってねー。もう一回、それ!」


 そうして、ボールは夕暮れの中に吸い込まれるように跳ねた。


 そして、そういうことで、私と泰平のこんな関係は、これからも続いていったのであった。

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