泰平の号泣
僕が小一になった頃、泰平はまた家に来た。
僕はその時、男の子の格好だった。
香華とは小学校が離れてしまい、そういうのはあまりしなくなった。
ま、それが普通なんだけどね。
しかし・・・。
「泰ちゃん!いらっしゃーい!」
「こんにちは!あき姉いますか?」
「あきー!泰ちゃん来たわよー!」
そして、玄関に行くと、何やら太平は困った顔をしていた。
「・・・だれ?」
今にも泣きそうな顔で、泰平は僕を見つめていた。
「あき姉は?あき姉は?」
そして、泰平が泣き出してしまった。
「僕だよ!泰平!僕があきだよ!」
「嘘だ!あき姉はこんなんじゃないもん!あき姉!あき姉ー!」
それなので、どうするかを母と僕で考えていた。
いきなり、母が考えついたように、顔を上げた。
「あき、ちょっと来て」
そう言われて、ついていった。
「原因がわかったわ。これ着て」
渡されたのは、香華からもらった服だった。
「ああ、なるほどねー」
うすうす気づいてはいたが、初めに会った時が女の子の服だったから、そのイメージで、あき姉は違うと言い出したんだろう。
それを着て、急いで戻った。
そうすると、泰平は喜びの顔でこっちを見ていた。
「あ、あき姉!よかったー。あき姉だー」
そうして、近づいてくる。
はあー。よかったー。
僕的にはあんまりよくはないんだが。
泰平と会う時には女装しないと誤解されるんだなあー。
しょうがないけど、泰平の前では女装するしかないか。




