泰平との出会い
―幼稚園の頃
ある日、僕はいつものように、女装させられていた。
いつものようにというとおかしいかもしれない。
しかし、この時は、一週間に三回くらい香華と母にさせられていたのだ。
あーあ。
そんな時、インターホンが鳴った。
「こんにちはー」
『こんにちは。俊成の兄です』
「まあ!夫のお兄さんですか!」
そう言って、急いで戸を開ける。
「まあ、こんにちは。いつもお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそ。弟がいつもすみません」
「とりあえず、上がってらして」
「いや、そんなすぐですので」
「そんなこと言わずに。お茶でも飲んでいってください」
「では、そちらは?」
「あ、うちの子の泰平です。ほら、あいさつしなさい」
「こんにちは」
「あら、かわいいねー。何歳ですか?」
「四ちゃい!年中さん!」
「おお、あきの一個下なんだ!さ、どうぞどうぞ」
「やったあー!」
玄関ではそんな会話をしていたらしい。
私は、和室に香華といた。
「あきー。お客さんよー」
「いや、ちょっと待って!」
とは言ったが、もう遅かった。
客は目の前にいた。
自分と同じくらいの子だ。
しばらく僕のことをこの子は見ている。
結構見られて時間が経った。
えっでも、今僕って・・・。
香華をちらっと見てみると、くすくすと笑っている。
そして、この子は口を開いた。
「お姉ちゃん!名前なんて言うの?」
えっ、お姉ちゃん?
不運なことに、この格好が初対面なんだ。
「お姉ちゃん!名前は?」
なんか面倒だな、この少年。
「ふじもとあきだよー」
「ぼくもふじもと!ぼくは泰平!よろしく!」
「よ、よろしくー」
「ぼくは四ちゃい!お姉ちゃんは?」
「五、五才だよー」
「じゃあほんとにお姉ちゃんだ!あきだから、あき姉!」
「え、えええー!?」
「あき姉!あき姉!」
「ちょ、泰平くーん」
「泰平くんじゃない!たいへい!」
「う、うん、泰平・・・」
香華に助けを求めようとして振り向くと、そこには香華の姿はない。
ちょっと!
泰平と話していると、お母さんが来た。
「泰ちゃん、あき、おやつ出来たから来てー」
「はーい!」
泰平、すっかりなじんでる・・・。
そして僕は、この姿で居間に向かった。
そこにはちゃっかり香華も座っていた。




