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本好きの二人が、亡くなったことによって無くなる物語について語るだけのお話。

作者: 茶屋ノ壽
掲載日:2018/02/22

「この作品の続きがないのですが?」詩織さん、小学六年生の女の子が、優さん、お隣のアパートに住む10代後半のテーブルトークRPG好きにして本好きの親しい人に、書庫から持ってきた本を見せながら尋ねます。


 詩織さんの家のリビングにて、二人してそれぞれの読書をしています。


「ええと、これは、ああ、作者がここで亡くなってしまっていて、未完状態になっているシリーズですね」優さんが、タイトルを確認して答えます。

「え、そんなことがあるのですか?」

「意外と多いですよ?特にこのあたりの時代は、無理をしたりする若い作家とかも多かったようで、体調不良というか、体調管理がおろそかになったりしていて、急逝したとか、結構多かったようですね、あと検診とかおろそかにして、取り返しのつかないところまで病状が進行していて、お亡くなりになったとか?」

「そうなのですか、妙に最後の巻が薄いと思ったのですが、そのせいなのですね」

「そうですね。この作者は、結構自分で注意はしていたけれども、治らない病気で亡くなったのじゃありませんでしたか?……書いてあったところまで本にして出版してくださったのでしょうね」

「続きはもうないのですか?気になるところで終わっているのですけど?」残念そうな顔をする詩織さんでございます。

「一応、作者が代わってはいますが、シリーズ自体は続いていたと思いますけど、ああ、ありますね」タブレットで検索して答える優さんでございます。

「……うちの書庫にはなかったような気がしますね」

「亡くなられたお爺さんは、あまり好みでなかったのではないでしょうかね?作者が代わってしまうとつまらなくなったと感じたのかどうかは知りませんが」

「面白く無くなったのでしょうか?正直魅力的な世界だったので、続きがあるなら読みたいのですけど?」

「web上に電子書籍があるのではないですかね?人気の作品ですし」

「どうしてじい様は、買わなくなったのでしょうかね?」

「お爺さんはきっと、その作者がお好きだったのでしょうね、ですから、同じ世界であってもなんだか、読む気にならなくなってしまったのではないでしょうか?」

「?物語は誰が書いたか、ではなくて、どんな話であるのか、どう書かれているのかが大切なのではないでしょうか?」純真な目をして小首をかしげながら尋ねる詩織さんでございます。

「そういう考え方もありますね。ただですね、その作者の描く世界が好みにあっていすぎたので、代わりの作家さんが、作風が似ているが故に、少しの差異が気になって、面白みを減らしてしまったのかもしれませんね。だから、続きを読む気にならなくなったのかもしれませんね。または、亡くなった作者に義理立てしていたのかもしれません」

「ギリ立てですか?ええと義理人情のギリですか?」

「そうですね。つまりは、あなたの書かれてあるその作品以外は読み気はしませんというような気持ちでしょうか?その作者が亡くなってしまったのであるから、それ以降は偽物であるので、認められない、というと言葉がきついですが、そっとしておきたい?下手に幻想を崩したくない、というような気持ちがあるのではないでしょうかね?」

「でもそれですと、せっかく作られた物語の世界を見捨てることにはならないでしょうか?この登場人物たちは、作者が代わっても活躍しているわけですし、そういうものを見られたいと、楽しんで読んでほしいとか思ってたりするのではないですか?」

「その発想は良いですね。物語のキャラクターたちは、きっと読まれたいと思っているのは確かでしょう。ただ、お爺さんは、それでも亡くなった作者以外が描いた登場人物に、違和感しか感じなくなってしまったのでしょうね。もしかすると、喪に服していた気分かもしれません。さらには、いつかは読もうかな、と思っていたのかもしれません。まあ、亡くなった人がどんな考えであったのかは、推測するしかないわけなので、なんとも言えないわけでけどね」

「そうかー、そのうち買って読もうと思っていたけど、その機会が来る前に、おじーさんが亡くなった可能性もありますね。……いつも読み切れないほどの本を抱えていましたものね」


「読みたいものを読みたい時に、読みたいように読むというのが、幸せなんだと思いますよ」

「?それ、いつもしていますけど、普通のことではないのでしょうか?」

「……色々と、柵が出来てくるんですよねー、年齢を重ねてくると、こう人間関係とか」

「不思議ですね?ええと、そうですね、寿命がある生き物ですから、好きじゃないことに時間を割いている暇なんてないのですよ、とか、じい様はおっしゃられていたような気もします、で、じい様は、きっちりとそれを実行しておられましたよ?」

「……おそらく、周囲の人は苦労していたんじゃないかなー」どこか遠い目になって天井の隅を見つめる優さんでありました。


「ドラマですとか、映像作品でも途中で役者さんとか主要なスタッフが亡くなったりしたような事例はありますよね」詩織さんが話し始めます。

「そうですね、ありそうですね」

「で、その時にはまあ、いろいろと代役を立てたり、シナリオをいいように変更してつじつまを合わせたり、してたんでしょうか?」

「あったと思いますよ」

「でもそれは、その役者さんが生きていてやっていたお話とは違いますよね、でも、観たいものなのでしょうか?」

「人によるでしょうね。その役者さんとか、監督さんとか、シナリオライターさんとか、に思い入れがありすぎて、どうしても観るのが辛くなったりもする方もいるでしょうし、その人物がかかわった作品であるから、最後まで見てみようと、なる方もいるでしょう、それは、まあ自由なのではないでしょうかね?」

「やっぱり集団で作り上げたお話であるから、あまりこう、個人が一人かけても、見る気持ちにブレーキがかからずに見つづけられてしまうのでしょうか?」

「亡くなった方が、どれだけの存在感があったかとか、それに対して観劇する方が、それに、どれだけ思い入れがあったかとか、その方向性とか、いろいろな要素がありそうですね。まあ、一概に言えるものでもないのでしょうね」


「桃色の豹とかいうようなシリーズ物の映画とか、結構そのあたりうまく処理していたりしたようですね」優さんが、好きだったなーあれ、とつぶやきながら、言います。

「面白いのですか?」

「名作です、迷作でもありますが。私はあのパリの刑事さんが好きでしたねー」

「へえー」


「日本でも途中で役者さんが急に亡くなってしまった作品とかもありましたね、名脇役しか出てこないテレビドラマとか」

「それはどうなったのですか?」

「さてどうなったのですかね?」


 会話はそこで終わります。

 詩織さんは、優さんから同じ作者の別名義で出ているシリーズがあると聞いて、それを、探しに書庫へ行きました。


 優さんは、タブレットで検索し、詩織さんへ紹介したその小説のあらすじをつらつらと読みつつ、内容にちょっと顔を赤らめています。 


 そんなちょっと寂しくて、幸せな、本好きたちの昼下がり、とある休日のお話。


好きになりつつあった役者さんでございました。

ご冥福をお祈りします。

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