妻が可愛すぎる
俺はデュラハン・マルクス・キンブリー。
歳は28で根っからの軍人家系の長男だ。
他には姉と弟がいる。
理解はしてる、長男だし貴族だししないといけない。
だが、流石に……
「デュー!聞いてるの?貴方の話よ!」
「……おぉ」
鬱陶しいぜ姉貴。
大体姉貴の話は長いしいつも似た様なもんだ。
ダラダラと結婚しろと言う事ばかりで飽き飽きする。
「デュー貴方ももう28でしょ!良い加減にお遊びは辞めて落ち着きなさいって!デュー‼︎聞きなさい‼︎」
姉のステイシーは口煩い。
嫁に行った癖に毎日俺の事に口出ししてメンドくさい。
最近は親まで口出ししてくる。
趣味は特にないが、遊びは俺の自由だろ。
何となく趣味の代わりに女遊びしてるだけだ。
じゃなきゃ金が溜まってしょうがないんだ。
「ねぇ〜お願いょ?デュラハン様」
「ーー何をだ」
「ん〜〜もぉ、だからね。アタシを身請けしてよ」
「……はぁ」
ここでもかよ。
豊満な胸を押しつけながら上目遣いでくるお願い。
ハッキリと言えば顔は整ってるし綺麗系で好みだがメンドくさい。
通いの娼館に来たら娶れと言われる様になり、別のとこにしてもまた続いた。
「キンブリー師団長?いかがなされましたか?」
「ん〜〜何でもねェ」
「それでしたら、すいませんがーー」
部下が言いにくそうに俺に進言する事は最近ではわかりきってしまった。
「……またか」
「ーーはい、申し訳ありません」
冷や汗流し本当に申し訳なさそうに部下が言うが、俺の方が申し訳ない。
詰所の方まで押しかけてくる女が多々いるからだ。
俺は面食いだと言うのが噂らしい。
間違ってはいない。
顔に自信があるらしく馴染の遊女から平民はたまた、貴族までもが押し掛けて仕事に手がつかない日々だ。
ここ数ヶ月で更に増えた。
あぁ、ここまで来ると一層の事もの静かで口出ししないなら何でもいいと思える。
「失礼するよ。君は席を外してくれ」
「は!アルテミス閣下、失礼したします」
そんな日が一月続いたある日 急な来客が来た。
シュバルツ・フォン・テルミナ・アルテミス王弟閣下の登場だった。
宰相を務める敏腕閣下で愛妻家としても有名な方で、噂では、王位争いをしていたが奥方に一目惚れしアッサリと放棄し宰相に収まったらしい。
俺の部下を下げてまでする話にある意味予想はついた。
「すまないね。今日は君にお願いがあって来たんだ」
「いえ、何様でありましたか?」
閣下には息子が2人に娘が3人居たはずだが大体結婚してなかったか?
ああ、子煩悩でも有名で恋愛結婚推奨派だったはず。
「今のこの状況は好ましくない。わかるね」
「……はい、それについては大変申し訳なく」
「まぁそこで何だかね」
ほら、来た。
「私は今軍と繋がりが欲しい」
「そうでしたかーー」
王位を求めて反乱か?
「何、兄上に反旗を起こす気は無い。慎ましく愛しい我妻がそれを望まないからね」
じゃあ何で軍と繋がりが欲しいんだ?
「軍の上官達に少し探りを入れたいのさ、そこでだ。うちの三女を娶ってくれないか?お飾りで良いからさ」
「、ハァ⁈」
お飾りで良いからさ、じゃねェよ。
娘が愛しくないのか?堂々と政略結婚の人形にする気かよ。
アンタ愛妻家で子煩悩で有名だっただろ!
「うちの三女はね、成人したばかりで聞き分けが良くて手のかからないいい子でね。浮ついた話一つもないんだ。行き遅れるのが心配でね〜」
「あ、はい」
王弟で宰相の子だろ。
行き遅れはないだろ普通。
「上の娘はさ、相手が早く見つかってたんだけど下の娘はいないみたいなんだよね、それで、ほら変に野心家のとこに嫁がせたら可哀想でね。でも結婚はしないといけないしさ。私自身恋愛結婚推奨派だけどさ、可愛い娘の安全の為にはね〜」
瞳孔開いてる、閣下。
不本意なのはわかったが戦場でもないのに殺気まで当てられたくない。
トントン拍子で話が進んで結婚する事になった。
顔合わせすらなく各手続きが済み次第式を挙げてしまうになり、正直な話唯のお飾りのお人形で良いなら助かる。
親と姉が大人しくなり詰所に押し掛けて来る女どもが居なくなるなら、ありがたい話でしかない。
これでいつも申し訳なさそうに報告して来る部下の負担もなくなり、仕事に集中できる。
手続きは本来なら半年かかるが閣下が持ちうる全ての権力を使って一月後に決定した。
式当日小柄な花嫁のベール越しに見える目は特に事もなさげに堂々とヴァージョンロードを歩いてる。
本当に成人したのか?
隣を歩いてる閣下の方が挙動不審だ。
若干青ざめている様にも見える。
何があった。
花嫁は誓いの言葉も淡々と済ませ誓いの口付けになりベールを上げて初めて嫁の顔を見た。
艶やかな黒髪を編み上げ、黒い瞳は堂々と俺を見据えていた。
ルーシィ・フォン・アルテミスは幼げな平凡な顔立ちで本来なら曲がりなりにも結婚式には笑顔で迎える事もせずに、作り笑顔すらなく無表情だった。
まるでサッサと終わらせようと言うように。
今この時までキスなんてする気は無かった。
思い上がられてもメンドくさいから。
でもこの無表情を崩せるなら良い。
「んッ」ちゅう
アァ、イイなぁこの顔。
自分のペースを崩されても必死に隠そうとする表情に少し興味が湧いた。
これなら初夜をしてもいい。
ついつい抱えて退場してしまった。
軽いなァ俺の入るか?とか考えながら。
「ルーシィ、どうかしたか?」
「…いえ、デュラハン様。その、お伺いしたいのですかよろしいでしょうか?」
妻の些細な質問に答えて仕舞えば後は頂くのみ。
既に妻はベットの上更にその上には俺。
放置する気だったけど偶には相手をしてもいいかもしれない。
とその時俺は思い知った。
「ルーシィ、可愛い最高だ」チュ
初夜が終わって疲れて眠る幼げな妻に本気で恋をした。
安い言葉だがそれしかない。
スヤスヤと寝る妻を抱きしめてそれまでの考えを正した。
ーー放置?無理、だって可愛すぎる。
「そう言うのはデュラハン様だけです」
ーー人形のお飾りの妻?却下、ルーシィは俺の妻着飾るのは夫の特権。
「だからって、休暇を取らなくてもいいです」
ーーもの静かで口出ししない妻?それよりルーシィが良い、可愛い声で話してたい。
「仕事を途中で切り上げてまで無理しないでください」
それから、女遊びはしなくなって趣味が出来た。
妻ルーシィのドレスや小物を選ぶ事だ。
商人を呼び必ず一緒に選ぶ。
「ですから、休暇をいちいち取らなくてもいいですから……」
「ん〜〜これ良いなァ」
「しかも、小物は3日前に買ったばかりです。更にドレスは今シーズンのは仕立てて頂いたばかりでまだ着てないのもあります」
「後は〜これも良いなァ。ルーシィはどれがいい?」
「……後生でございますから、私の話を聞いてくださいデュラハン様」
「ん?ルーシィの話なら一字一句逃してないぜ」
「ーー左様でございますか。ならば申し上げま「けどよ、こうでもしないとルーシィは買い物しないだろ?」
そう俺の妻は恐ろしく謙虚だ。
謙虚で慎ましく可愛い。
「……でしたら、せめてデュラハン様の膝から降ろしてくださいませ」
俯いて頬を染める妻は可愛い、可愛すぎる。
アァ、心臓が保たねェな。
「ヤダ」
更に強く腰に手を回す。
するとルーシィは真っ赤になって俺の胸元に身体を預けた。
顔を手で覆って悶絶してる。
こうなると話が聞こえなくなるらしいのでしょうがない可愛いから。
商人はこの様子にも慣れた様に商品を見せる。
気に入ったのをいくつか買って特注で注文もする。
もうすぐ結婚記念日だから。
ルーシィの好きな白薔薇のアクセサリーがいい。
アンクレットにする事にした白薔薇をモチーフに細い金のチェーンで作る事にした。
俺しか見ない様にアンクレットにした。
ルーシィは記念日に滅多にルーシィからしてくれないキスと可愛い告白を貰い。
後酒も。
可愛すぎる反応に男の性は抗えなかった。
「ーー待ってデュラハン様、まだ「ルーシィ?前にも言っただろ手短にって俺は待てはニガテなんだ。潔く喰われてくれ」
ベットに沈む俺達に庭の白薔薇は呆れているだろうか?
「んっ、デュー、すきぃ」
「アァ、ルーシィ可愛すぎるナァ。もう外に出したくないぜ」
白薔薇は金のチェーン(俺)のモノだと言う名札をつけた。
庭はオマケ程度、本命はコッチ。
「愛してる俺だけのルーシィ」
書き殴っただけです。