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6話「オーク殲滅戦」

考えてみれば当たり前の話だ。

オークの巣から凌辱された女性が保護された。それはすなわち、あの巣に棲んでいるオークは経験済みということだ。


「ヒロユキ。探知魔法をお願い」


「……了解した」


僕が頼むと、ヒロユキがオークを探すための探知魔法を森中に展開する。


僕ら3人は今、オークの巣があるという森へと足を運んでいた。

目的はもちろん、非童貞……じゃなくてオークを血祭りにあげることだ。


「あぁ……斬りてぇ……斬りてぇなぁ……無性に豚を切り刻みてぇ気分だ……」


ユースケは今『剣鬼モード』に入っている。冒険者ギルドを出てからずっとこんな調子だから、おそらく僕の『オークは非童貞』発言が余程堪えたのだろう。

『剣鬼モード』とは僕が勝手に名付けたユースケの精神状態のことだ。その剣聖としての能力ゆえに普段から強いユースケだが、本気でキレて全力を出すときは必ず『剣鬼モード』に入る。

『剣鬼モード』に入ったユースケは、腰に()いた二本の剣のうち、より剣身の長い方の剣『魔剣ガルガード』を引き抜く。

もともと一刀でしか戦わないユースケが二本の剣を佩いているのは、自身の本気度のよって使う剣が変わるからだ。


「ヒロユキぃ……豚はどこだぁ……?」


間延びした口調と焦点の合っていない目は、普段の常識的なユースケの姿からは想像もできない。

剣鬼モードのユースケは確かに強いのだが……


「ヒヒッ……今夜は豚の血を啜れそうだなぁ、おいぃ……」


怖い。とにかく怖い。

魔剣ガルガードを嘗めながらヒヒヒと笑うユースケの姿は、さながらどこぞの妖怪のようだった。


……我ながらやり過ぎたかも。ユースケをここまで焚きつけることはなかったな。

今更ながらに自身の行動をちょっと反省する僕。


「……見つけたぞ。ここから北西に3キロ。数は……400はいそうだ」


自省をしながら森の中を歩いていると、探知を終えたらしいヒロユキがそう報告してきた。

それにしても400匹とは……随分と大規模な巣だ。通常のオークの巣なら50匹が精々なのだが、かなり発展してしまっている。


「そっか。いずれにしろ、この街の新人冒険者たちじゃ無理な数だったね」


この城下町にいる冒険者の数は4桁に届かない程度だ。その中でオークと対等に戦える者となると数はさらに少なくなる。

いずれにせよ、僕たちが出なければならない事案だったようだ。


「それじゃあ、殲滅戦を始めようかーーーってユースケは?」


「……俺の言葉聞くなり、1人で飛び出していったぞ」


まあいいか。

どうせ剣鬼(どうてい)に人の言葉は通じないし。


「……焼き加減はどうする?」


「んー……僕はミディアムがいいな」


僕とヒロユキはそんな会話をしながら、急いでユースケの後を追った。

……今夜はおいしい豚の丸焼きが食べられそうだ。



***



現場に着くと、そこには荒れ狂う鬼がいた。


「キハハハハハ!!逃げ惑え豚共!!ミンチになりたくねェンならなァァアア!!」


無論、鬼とはユースケのことだ。

顔を愉悦に歪め、「ぶもぉおお」と鳴きながら逃げ惑うオークたちを目にも留まらぬ剣技で一刀に斬り伏せている。魔剣の力も相まって、一振りで二、三匹は切り飛ばしているのではないだろうか。

返り血で服と顔と剣が赤く染まり、その姿はまさに『赤鬼』と表現するにふさわしいものだった。

ヒロユキが再度探知したところによると、もう既に100匹は斬り殺しているらしい。


まったく、どっちが化物かわかったもんじゃないな。


「あーもう……ユースケが暴れすぎたせいでオーク達が逃げ始めてるよ。ヒロユキ、お願い」


「……まったく。このままだと俺が戦う分が無くなりそうだな」


ヒロユキに頼んで、オークの巣の周囲に簡易な結界を張ってもらう。オークが逃げ出さないようにするための結界だ。ただでさえ冒険者ギルドに秘密で討伐に来ているのに、逃げ出したオークに近くの村を襲われてはたまらない。


そんなことを考えていると、前方からユースケの咆哮が聞こえてきた。


「その汚ねェ包茎チ◯ポ、俺が切り落としてやンよォォオオオ!!!テメェらがセックス出来てなんで俺がセックス出来ねェンだ!?フザケんじゃねェェエエエエ!!!」


「ユースケ、いつにも増して荒れてるなぁ……」


よく見てみれば、ユースケの目元にキラリと光る物が。余程悔しかったんだろうなぁ。


よし。

その情熱に免じて「ユースケも包茎だよね?」なんて野暮なことは言わないで置いてあげよう。


以前一緒に銭湯に行ったときにチラッと見たけど、モロに被ってたよね。僕は忘れないよ。


「……ハルヒコ。結界を張り終わったぞ」


「よし。それじゃあ僕たちもオーク狩りを始めようか。……といっても、僕らは化物ユースケの援護をするだけになりそうだけど」


ヒロユキの言葉を聞いた僕は自分の腰に視線を落とす。佩いているのは『聖剣ジグラシオン』。魔王すらも切った名剣だ。


よろしく頼むよ、相棒。


そして僕は腰から『聖剣ジグラシオン』を引き抜き。

ヒロユキは『黒杖(こくじょう)ハルルカ』を構え。

手近な場所にいるオークの一団に飛びかかった。




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