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4話「一盗二婢三妾四妓五妻?なにそれ?」

そこの非童貞のアナタ。


あらすじで忠告したのにどうしてこの小説を読んでいるんですか?

法に触れますよ。即刻立ち去ってください。


「……ハルヒコ。『一盗二婢三妾四妓五妻いっとうにひさんしょうしぎごさい』という言葉を知っているか?」


ヒロユキが突然こんなことを言い出したのは、僕とヒロユキが広場のベンチで日向ぼっこをしている時のことだった。


「ふぁぁ…一盗二婢三妾四妓五妻?なにそれ?」


心地よい日の光に包まれて微睡んでいた僕は、眠い目をこすりながらそう聞き返した。

するとヒロユキはぼーっと空を見上げながら答える。


「……古い諺でな。昔の偉い人が考えたセックスの極意というやつだ」


「セックスの極意!?」


ヒロユキの言葉に僕はくわっと目を見開く。

セックスの極意だって!?

なにそれ、詳しく聞きたいんですけど!!


「……『一盗二婢三妾四妓五妻』とはセックスすると気持ちが良い女性のランキングを表している」


僕が興味を持ったことに気を良くしたのか、ヒロユキが普段より饒舌に語り始める。


「……5位が『妻』。つまり自分の嫁のことだな。この諺を考えた人間は、すべての女性の中で自分の嫁とのセックスが1番気持ち良く無いと言っているんだ」


…なるほど。

清々しく下衆だね、この言葉を考えた昔の偉い人は。奥さんとのセックスが1番つまらないと断言する何て中々出来ることじゃない。

逆にロックでワクワクしてくる。


「……4位が『妓』。これは娼婦のことだ。娼婦とのセックスは妻とのセックスより気持ち良いというのが、昔の偉い人の意見らしい」


うんうん。

まあ、娼婦さんはその道のプロだしね。奥さんより気持ちいいのは確か納得は出来る。


……あれ?ちょっと待って。


娼婦が4位?

この上にあと3枠残ってるんだけど、僕の聞き間違い?


僕がふと気づいた衝撃の事実に困惑している間にもヒロユキは話を続ける。


「……3位は『妾』、愛人だ。愛人を抱くのは娼婦を抱くより気持ちいいらしい」


へー。愛人かぁ。

…まあ「不倫は文化」って言っちゃう人がいるくらいだし、愛人というのはいつの時代も魅力的なものなのかな。

それにして本当に下衆な諺だなぁ…


「……2位が『婢』。これは昔で言う下女、つまり使用人や侍女のことだ。要は、権力で脅してメイドを抱くのが2番目に気持ちいいってことだな」


うーん…そっかぁ…

これはもう、擁護しきれなくなってきたなぁ…

これを考えた人、ただのクズ人間じゃないか…


だけどこうなってくると1位が気になる。

僕はワクワクしながらヒロユキの言葉を待つ。


「……そして栄えある1位は『盗』。盗む、つまり他人の女を抱くのが1番気持ちいいんだと」


はいアウト。

お巡りさんこっちです。


寝取りは犯罪だからね。

侍女云々も犯罪だけどそれ以上に人妻を寝とったらダメでしょ。しっかりしてよ、昔の偉い人。


昔の人に呆れかえっていた僕は、そこではたとあることに気づく。

一盗二婢三妾四妓五妻はわかったけど、何でヒロユキはいきなりこんなことを言い出したんだ?何が目的で?

僕のそんな疑問は、次のヒロユキの言葉で霧散する。


「……つまりだな。何が言いたいのかというとーーー俺たちの童貞は人妻に捧げるのが最高なんじゃないか?」


すっかり忘れてた。

僕の親友も昔の偉い人に負けず劣らず下衆な人間だったことを、僕はたった今思い出した。



***



「お前ら、一回医者に診てもらった方がいいぞ」


ユースケは開口一番にそんなことを言った。


ここは宿の一室。

お昼の散歩から帰ってきた僕とヒロユキがユースケに一盗二婢三妾四妓五妻 の話をしたのがついさっき。

僕らの話を聞いたユースケは予想通り、苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「でもユースケ。よく考えてみてよ。寝取りは確かに犯罪だけど、優しい奥様に筆下ろしをしてもらうっていうのは魅力的じゃない?」


「倫理的にアウトだろ……」


僕の必死の説得にもユースケは耳を貸さない。

さすが僕らの中でも比較的常識人のユースケ。

言っていることが凄くまともだ。


「ユースケ。童貞の性欲の前には、如何なる倫理も無意味だよ」


ぽんぽんとユースケの肩を叩きながら僕がそういうと、ユースケは盛大なため息を吐く。


「屑どもが……」


「はっはっは。それ程でもないって」


「褒めてねぇよ」


屈辱と諦めが混じった顔をするユースケ。

ひとしきり僕とヒロユキを睨みつけたユースケは、もう一度ため息をついて口を開く。


「で?どうやって人妻を捕まえるつもりなんだ?」


……。


僕は無言でヒロユキを見る。

ヒロユキも同じく僕の方を見る。


「もしかして、考えてなかったのか?」


「そ、そんなことないよ。……ナンパ!そうだよ、今から広場に行って人妻をナンパしようよ!」


瞬時に作戦を考えた僕がそう言うと、ヒロユキがうんうんと首を縦に振って追随する。

ヒロユキ……考えてなかったの……?


「ナンパねぇ……」


顎に手を当てながらユースケが唸る。

なんだよ。何か問題でもあるのかよ。


「お前ら気がついてるか?人妻にナンパする勇気があるんだったら―――もうとっくに童貞なんざ卒業出来てるだろ」


ユースケのもっともな指摘により、僕とヒロユキの「適当な人妻で童貞卒業計画」は頓挫した。



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