1話「魔王を倒せばお姫様とセックス出来るって話じゃなかったの!?」
どうも、あれくすです。
この小説は、モテない腹いせに書いたハートフル童貞コメディです。
性的な描写はほとんどありませんが、とにかく下ネタが酷くなりそうなので保険にR15指定をしています。
「魔王を倒せばお姫様とセックスできるって話じゃなかったの!?」
城下町のとある酒場。
僕こと鍵峰ハルヒコは、机に突っ伏してさめざめと泣いていた。
「落ち着け、ハルヒコ」
僕の向かいの席に座って呆れ顔をしているこの男は木下ユースケ、僕らのパーティの剣士である。
僕は顔をあげ、ユースケを睨みつけて叫ぶ。
「だって!これじゃ何のために魔王を倒したんだか分からないよ!」
僕らはひょんなことで日本から異世界に召喚された「勇者パーティ」だ。
『勇者』の僕、鈴峰ハルヒコ。
『剣聖』の木下ユースケ。
そして僕の隣でジュースをちびちびと飲んでいる『賢者』、安藤ヒロユキ。
僕ら3人は先日、激闘の末に魔王を討伐した。
「……ハルヒコ。魔王討伐は世界平和のためだ」
ヒロユキが平坦な声で言うが、それでも僕は納得がいかない。
普通、魔王を倒した勇者はお姫様と結ばれるでしょ。そんで子宝に恵まれて二人で幸せに暮らすっていうのがテンプレでしょ?
僕、何か間違ったこと言ってる?
「そうだぞハルヒコ。いくら姫様にフラれたからって八つ当たりは良くないな」
「別にフラれた訳じゃないよ!ただ『いきなり結婚とかちょっと……』って苦笑いされただけだから!」
「世間ではそれを『フラれた』って表現するんだよ…ってかよくお前は初対面のお姫様に結婚を申し込めたな。羞恥心はないのか?」
ユースケは呆れ顔でそんなことを言う。
でも僕からすればユースケたちが楽観的すぎるんだ。
「ユースケは現実が見えてないよ!僕たちはもう元の世界に帰ることは出来ない!この世界に骨を埋めるしかないんだから、こっちの世界で彼女を作るしかないんだよ!」
この世界と元の世界をつなぐ魔導具は、魔王によって壊されてしまった。
僕らにはもう後がないのだ。
「だいたいユースケだってまだ童貞だろ!僕に偉そうに上から物を言う資格なんてないよ!」
「なんだとっ!ハルヒコォ!言ってはならないことを言ったな!」
ユースケが「表へ出ろっ!斬り殺してやるっ!」などと騒ぎ出したが、僕は気にせず先日フラれ……『結婚を断られ』たお姫様のことを思い出す。
「はぁぁ……あのお姫様、美人だったなぁ」
「……なにが良いんだ、あんな貧乳」
ボソッと呟いたヒロユキの言葉を僕は聞き逃さなかった。確かにあのお姫様の胸部は非常に慎ましやかなものだったが今の言葉は聞き捨てならない。
「ヒロユキは分かってないよ!おっぱいは確かに良いものだけど、貧乳には貧乳の魅力があるんだ!」
「……巨乳こそ正義だ。大きいおっぱいこそ至高。貧乳など犬にでも喰わせておけばいい」
「よし戦争だ。生きて帰れると思うなよ」
「……いいだろう。貧乳好きに人権などないことを今ここで教えてやる」
僕がヒロユキに教育を施してやろうと拳を構えると、横からユースケが騒ぎ立てる。
「おいハルヒコ!俺を虚仮にしといてヒロユキと喧嘩とはいい度胸じゃねぇか!」
「ユースケうるさい!僕の邪魔をするんだったら、たとえユースケでも容赦しないよ」
じっと睨みあう僕ら三人。
互いに牽制しあいながらじりじりとにじり寄る。
これは聖戦だ。
僕らのプライドをかけた戦い。
さあ。今この場で決着をつけようじゃないか。
いったい誰が正しいのかをッ!!
「ちょっとアンタたちッ!喧嘩するんなら他所でやりなさい!」
結局、殴り合いに発展した僕たちの喧嘩は、看板娘のミーナちゃんに店からつまみ出されるまで続いた。
***
世界を魔王から救った『勇者』『剣聖』『賢者』。
魔王を倒してなお、どの勢力にも下らなかった英雄たち。
民衆を魔族の脅威から救った彼らは、魔王を倒したのち、歴史の表舞台から姿を消した。
彼らはどこへ行ってしまったのか。
それを知る者はごく一握り。
知らない者たちは皆、勇者たちが今もどこかで人助けをしていると信じて疑わない。
しかし往々にして、真実はくだらないものである。
救国の英雄たちが、薄汚い酒場の前でこんな醜い言い争いをしているなんて、いったい誰が思うだろう?
「ハルヒコ、てめー!聖剣使うのは無しだろっ!」
「へへーん!勝てばいいんだよ勝てば!」
「……巨乳こそ正義だ。燃え尽きろ」
「うわっ!魔法はずるいってヒロユキッ!」
これは、三人の偉大なる童貞たちが織りなす、実にくだらない物語だ。