第二章 [view02]
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「……寒い!」
あたしは小さく叫び、ピンク色の手袋をはめた両手に白い息を吐きかける。
もうそろそろ大掃除というこの時期の真夜中。しかも、毎度の事ながらひとけも車気もない裏路地。……寒くない訳ないじゃん!
「…いつものことだろ?」
兄貴は小首を傾げながらスタスタと前を行く。死会の総会の時はいつもそうだけど、今日は心構えが無かった分、余計に寒く感じるような気がする。
有ってないような灯りが転々とする中、黒いコートを羽織った兄貴の背中が闇夜に溶けて消えていく。
いや、消えていかないよ、遠ざかっているだけだよ、自分。
「……暗殺者の溜り場とかさ、固定すべきじゃないんじゃない?」
あたしは寒さ等を紛らわすため駆け足で兄貴に追いつくと、話しかける。
実際、あたし達家族は変則的に住所を変えている。
「場所がいくつかに固定されていても襲われない、それほどの影響力と自信がある組織ってことだろう。……良くも悪くも老舗みたいな物だからな」
「老舗ねぇ……」
暗殺者組合の老舗である死会。の総会場のひとつである建物。
正面以外を金網で囲まれた中ぐらいの規模のコンクリート建築物。
あたし達は裏口の冷え切った金網フェンスをあけてその敷地内に入ると、金属製の扉の横にある電子端末に暗証番号を入れ、建物の中に入る。しばらく、曲がりくねった廊下を歩いたり、怪しげな扉をくぐったり、ターンしたと見せかけてターンしなかったりS字カーブをL字に曲がったりしながら、ある壁にたどり着く。
廊下の突き当たりにある一見すると、ただの白い壁。実を言えば一見しなくても今のところはただの壁だ。
「2399960」
兄貴が壁の2歩ほど前に立ち、さっきの電話で事前に伝えられていたパスを告げる。
壁には何も変化は起こらない、少なくとも視認できる範囲では。
ゆっくりと兄貴は前へと踏み出す。
そして、壁へとめり込んだ。
兄貴は歩みを止めずにそのまま進み、壁の奥へと消えて行く。
昔から見ているが、いつ見ても、見慣れない。
あたし自身、化け物じみた能力を持っているが正直な話、どうでもいい。
マーホとかマジュツやらノロイとかどれだけあたしの楽しみの役に立つか、あたしの楽しみへの障害となるか。
重要なのはそれだけだ。
あたしはパスを告げながら、踏み出す
「239960」




