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人間レベル  作者: なるせるり
第一章
2/6

1の続きです。

 通学には電車を使っている。

 最初の頃は家政婦さんが送ってくれると言っていたけど、家事だけでも大変なのに通学の送り迎えまで頼めないと思い遠慮した。

 それに僕にとっては電車通学だってそんなに悪いものじゃない。

 混雑している電車に乗らなきゃいけない人は大変だろうけど、僕の乗る電車は空いているし座席も一つ一つ広くスペースが取られているから楽だ。

 30分程度乗っているだけだけど、今更あの車両には乗りたくないと心から思っている自分がいる。


 普通の生活を送っているだけでも人間レベルの存在を至る所に感じる。

 電車を見ても本数や車両の大きさ、もちろん乗っている人間のマナーなど、実際この制度は高いレベルの人間にはとても便利で幸せだが、逆に下位の人間にとっては疎ましいとさえ思われている制度なのだ。

「人間をレベル別なんて数字に表すなんて不愉快だ」と思う人がいるのも事実。

 特にレベル5と、レベル6の間にはかなり高い壁がある。

 なので真面目でちゃんとしたレベル5の人間が、この制度に対して一番悪意を持っているかもしれない。

 実際テレビのニュースで罪を犯す人間はレベル5が多いと言っていたし、ネットでも話題に上がる議題だったりする。


 確かに僕自身客観的に見ても、この壁は高すぎると思っている。

 基準が国や世界レベルで有益な事?

 普通の人は一生かかったってできることではないだろう。

 それでも人々はそんなこと疑問にも思わない。

 なぜなら生まれた時からそれが当たり前だから。

 疑問に思ったところで自分には何もできないし、例え自分が動いても何も変わらない。

 だから世の流れに逆らわずその世界の中で自分の最善を尽くすという考えが蔓延している。

 その考えを否定はできないし、悪いとも思わない。

 だって人は無駄な事が嫌いだし、自分に被害を被るのも嫌う。


『そんなことならこのままでいい』


 逆に言えばこの考えが根付いているからこそ、反乱やデモなどの抗議活動がこの世界ではほぼ皆無なのだ。

 それにそんなことしたら反逆罪に捕られかねない。

 一生を棒に振るリスクを犯してまでそれをやる人は多分もうこの世界にはいないだろう。


 僕は歴史や本が好きで昔のことなどを良く調べるから今のこの世界に多少ギャップを感じるけど、今を生きるのに精一杯の人はそういう知識を得る機会さえない。

 むしろ知識を得るのを拒んでいる空気さえある。

 だって知ってしまったら、生きづらくなってしまうかもしれないから。

 それが過去を知るのを拒み、未来さえ見ず、今を必死に生きているふりをするこの世界の人間の常套句になっているのかもしれない。


 そんな事を考えていると、あっという間に学校の最寄駅に着いた。

 学校までは5分ほど歩くが開閉式の屋根が取り付けられている通学専用の道なので、たとえ雨が降っていたとしても傘を使う機会なんて殆どない。

 むしろ皆無。

 だから僕は数えるほどしか傘を使ったことがない。

 一昔前は考えられない事だと思う。

 今の自分の生活を客観的に見ると、驚くほど優遇されているなと考えるたびにそう思う。

 でもこの生活を投げ打ってまで世界を変えてやろうなどとは微塵も思わない。

 その点は周りの人間と同じなのかもしれない。

 都合のいい考え方だと自分でも思う。

 この世界を創造した人は何を思い、考えこの制度を作ったのだろう?

 僕には知る由も無いけれど、知る手段があるのなら是非ともご教授願いたいものだ。


 校門が見えた。

 学校すらも雨が降ると大きな屋根を閉じて生徒が濡れないようになっている。

 例えるならドーム型のスタジアムの中に学校がある感じだ。

 この学校は世界有数の最先端施設で選ばれた人間しか受けることすらできない学校であり、生徒数は3学年併せても120人程しかいない。

 学費は無く、教科書や学食など学校生活に必要なもの全てが無料であり、国の予算から出ている。

 その代わり将来は国の中枢を担う仕事につくことが暗黙の既定路線として存在する。

 そんな通称『選ばれた人間が通う学校』に僕も通っている。

次もなるべく早めに投稿できるように頑張ります。

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