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最強なのに表に出る気がない俺が、世界の裏側に立つギルドを作った話  作者: 月詠
第7章 均衡の外側〜接触〜

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第49話 均衡の外側

 円卓の騎士団は、定例とは異なる名目で招集されていた。


 緊急ではない。

 だが、通常案件として処理できる段階は、すでに過ぎている。


 全席、埋まっている。


 第一席には、セナが座っていた。

 ブラックツリーの代理として。

 この場において、彼女の判断は、悠人から全権を委ねられたものとして扱われる。


「報告を」


 第二席が立ち上がった。

 セントラル近郊の警備と防衛を担う席だ。


「セントラル近郊、防衛線外縁で異常を確認た」


 声は淡々としている。


「夜明け前、哨戒部隊が接触を確認してた魔物の群れが消えた」

「交戦は途中まで成立してた形跡がある」


 資料が円卓へ回される。


「踏み荒らされた地面」

「血痕」

「爪痕」


「ただ」

「戦闘痕は、途中で途切れてる」


 誰も口を挟まない。


「討伐された形じゃない」

「撤退の兆候もない」


「“存在してた途中まで”が残ってる」


 空気が、わずかに張り詰めた。


「追加情報だ」

「索敵に入った後続部隊で、同じ事象が起きてる」


 視線が集まる。


「視線を感じた直後」

「兵の一人が消えた」


 一瞬の静寂。


「魔力反応はなし」

「転移兆候も確認できてない」

「外部干渉の痕跡も出てない」


「防衛線としては致命的だな」


 第三席が低く言う。


「ああ」

「続けば、防衛線は機能しなくなる」


「魔物だけじゃない」

「人が消える可能性があるなら、今の配置は維持できない」


 第二席は、最後に付け加えた。


「現場の証言だ」

「全員が共通して、“見られてた”と言ってる」


 短い間。


「……旧記録と一致するな」


「ああ」

「過去の異常事例と、表現が一致してる」


 誰かが、言葉を置く。


「――カミの事例か」


「否定できる材料はないな」


 空気が、さらに重くなる。


「仮にカミが絡んでるなら」

「旧記録じゃ、単独国家で対処できた事例はない」


「世界規模で動く前提だ」

「複数国家の協調が必要になる」


 だが。


「現実的じゃないな」


「セントラルを快く思ってない国は多い」

「この状況で足並みが揃うとは思えない」


「時間をかければ」

「その分、被害が広がるだけだ」


 事実だけが積み重なる。


「円卓の戦力じゃ対処しきれない」

「国家間連携も即応性がない」


 誰かが、静かに言った。


「……例外が必要だな」


 一拍。


「自由に動けるのは、悠人だけだ」


 その一言で、視線が第一席へ集まる。


「国家にも、円卓にも縛られない」

「状況次第で即断即決できる」


 セナは、黙って聞いている。


「彼なら」

「外部組織として動ける」


「円卓からの“依頼”って形にできる」

「政治的な軋轢も最小限で済む」


「現時点で」

「一番現実的だな」


「他に即応できる手はない」


 結論は、自然に固まった。


「ブラックツリーに依頼を出す」

「判断は一致してるな」


 円卓が、第一席を見る。


 セナは、短く頷いた。


「分かったわ」

「私が報告する」


 誰も異論を出さなかった。


 この異常は、

 円卓の内側だけで完結できる段階を、すでに越えている。


 そして次に動くのは――

 円卓ではない。

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