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最強なのに表に出る気がない俺が、世界の裏側に立つギルドを作った話  作者: 月詠
第6章 均衡の外側〜序章〜

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第44話 関連する報告

「――ただ」


 間を置かずに、第六席が言葉を継いだ。


 沈黙を挟まなかったのは、意図的だ。

 この場の空気が、まだ動ける状態にあると、

 彼自身が判断している証拠でもあった。


 円卓の誰も、驚かない。

 この流れで、ここで終わるはずがないことを、

 全員が理解していた。


 むしろ――

 ここからが本題だと、察している。


「関連しそうな報告がある」


 その一言で、

 円卓の空気が、静かに変質した。


 誰も身じろぎしない。

 だが、意識だけが、確実に一点へ集まる。


 “解決策”ではない。

 “答え”でもない。


 だが――

 無関係ではない、という示唆。


 それだけで、

 この場に提示される価値がある。


 第六席は、手元の書類を一枚、静かに差し替えた。

 紙の擦れる音が、妙に大きく響く。


「新大陸、東縁」

「未開拓区域にて、異常な記録が上がっている」


 声は淡々としている。

 感情を乗せる必要がないと、

 分かりきっているからだ。


「魔物の動きに、偏りが出た」

「生態変化では説明がつかない」


 円卓の誰も、口を挟まない。

 否定も、確認もない。


 “続きを聞くべき内容”だと、

 全員が理解している。


「接触なし」

「戦闘なし」

「にもかかわらず――消失が発生している」


 そこで、わずかな間が生まれた。


 エリシアの背に、冷たいものが走る。

 戦闘も、干渉もない消失。

 それが意味する範囲を、彼女は理解していた。


「痕跡は残っている」

「だが、魔力反応がない」


 あり得ない、とは誰も言わない。

 誰も、眉一つ動かさない。


 ここにいる全員が、

 それが“あり得る側の話”だと知っているからだ。


「現地の報告では――」


 第六席は、紙面から目を離さず、続ける。


「“何かがいた”という感覚だけが残ったそうだ」


 言葉を選び抜いた報告。

 事実として記録するには、

 あまりにも曖昧で、それでいて重い。


「姿は見ていない」

「音もない」

「ただ、視線を向けた瞬間に――」


 そこで、一拍。


 その間が、

 言葉以上に、状況を物語っていた。


「“見られていた”と、全員が証言している」


 円卓の空気が、静かに張り詰める。


 それは、情報ではない。

 分析可能な数値でも、戦況でもない。


 感覚の共有。

 そして、それが一致しているという事実。


「この件に関して」


 第六席は、初めて顔を上げた。


 誰かと視線を合わせるわけではない。

 ただ、円卓全体を見渡す。


「古い記録と、一致する表現がある」


 誰かが、無意識に喉を鳴らした。


「当時の記録では、こう記されている」


 抑揚のない声で、

 ただ文字をなぞるように読み上げる。


「――“カミの気配があった”」


 名前が、落ちた。


 重くも、軽くもない。

 ただ、そこに置かれただけだ。


 説明はない。


 神か。

 使いか。

 あるいは――それ以外か。


 誰も、その正体を口にしない。

 口に出した瞬間、

 議論が別の段階に進んでしまうからだ。


「以上が、現時点で共有できる内容だ」


 第六席は、そこで言葉を切った。


 円卓は、即座に答えを出さない。


 誰かが結論を急げば、

 それは“恐怖”として記録されてしまう。


 だが、

 先ほどまでの「分からない」は、

 確実に、別の重さを帯びていた。


 それは――

 偶然では済まされない領域に、

 足を踏み入れたという感覚。


 そして。


 この問題に対して、

 円卓の外から干渉し得る存在がいることを。


 それは、席ではない。

 役職でも、権限でもない。


 円卓が定義できない領域。


 だが確かに、

 “そこに触れる者”の存在だけは、

 誰も否定できなかった。


 次に名が呼ばれるとすれば――

 それは、円卓の外からだ。


 世界は、その瞬間に、

 均衡という言葉を失う。


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