表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強なのに表に出る気がない俺が、裏から世界を牛耳るギルドを作った話  作者: 月詠
第1章 エリシアの旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/32

第3話 おいていけない理由

 朝の光が、宿の窓から差し込んでいた。


 目を覚ました私は、しばらく天井を見つめていた。

 身体は重くない。痛みもない。


 ――右腕も、ある。


 昨夜の出来事が、夢ではなかったと理解した瞬間、胸の奥がざわついた。


 カミと言う存在。

 そして、悠人という男。


 あれほどの攻撃を、基礎魔法で受け止める人間。

 あり得ない。常識の外側にいる。


「……起きてる?」


 ノックもなく、セナが顔を出した。


「朝よ。出発するけど」


「出発?」


「ええ。長居する理由もないでしょ」


 淡々とした言い方。

 昨日と同じ、何でもない日常の延長のような態度。


 私は身体を起こし、意を決して聞いた。


「……私、どうなるの?」


 セナは一瞬だけ考え、肩をすくめる。


「それは、あなた次第よ」


「悠人は?」


「まだ下、朝の準備してる」


 1階から物音が聞こえる。

 鍋の音、火を扱う気配。


 なぜだか、その音が妙に現実的で――

 昨夜の恐怖との差に、少しだけ安心した。



 宿の裏手。

 簡単な朝食を用意している悠人を、私はじっと見ていた。


 強者の威圧感はない。

 魔力も抑えられている。


 どこにでもいそうな旅人。

 ――なのに、なぜか世界の理から外れているような気がする。


「……どうした?」


 視線に気づいた悠人が、こちらを見て微笑んだ。


「聞きたいことがある」


「どうぞ」


 簡潔な返事。


「あなたといれば……私は、もっと強くなれる?」


 一瞬、セナがこちらを見る。

 悠人は、少しだけ目を細めた。


「なりたいのか?」


「……なりたい」


 即答だった。


 新大陸で引き返そうとした理由。

 限界を感じた自分の弱さ。


 あのままでは、いずれ死ぬ。

 生き延びたとしても、何も変わらない。


「今のままじゃ、届かない」


 私は、はっきり言った。


「昨日、分かった。

 あれを見て、それでも前に立てる人間がいるなら――

 私は、その場所を知りたい」


 悠人は、少し考える素振りを見せた。


「……強くなる方法を知りたいのか?」


「そう」


 即答。


 セナが鼻で笑う。


「欲張りね。普通なら、助かったってだけで満足するものよ」


「普通じゃ、足りない」


 私は視線を逸らさなかった。


「私は、強くなりたい。

 ただそれだけ」


 悠人はしばらく沈黙したあと、鍋を火から下ろした。


「強くなるのは、大変だぞ」


「覚悟はある」


「それに、俺が鍛えたからと言って強くなれるとは限らない」


「それでも、何もしないでよりはいい」


 ほんの一瞬。

 悠人の口元が、わずかに歪んだ。


「……セナ」


「なに?」


「面倒見る余裕、あるか?」


「あるわけないでしょ」


 即答。


 でも、続けて肩をすくめた。


「でもまあ……

 放っておいたら死ぬ子なのは確かね」


 悠人は私を見る。


「一つだけ言っておく」


「?」


「俺は、手加減しない」


 その言葉に、恐怖はなかった。


 むしろ――胸が、少し高鳴った。


「それでいい」


 悠人は、軽く息を吐いた。


「……じゃあ、ついてくるといい」


「正式に?」


「仮だ」


 あくまで、仮。


 それでも。


「ブラックツリーは甘くないぞ」


「承知してる」


 悠人は立ち上がり、背を向けた。


「まずはセントラルだ。

 新大陸での冒険は、一時中断だ」


 ――セントラル。


 円卓の騎士が治める、王のいない国。


 そして、ブラックツリーの本拠地。


 私は、知らないうちに笑っていた。


 引き返したはずの旅路は、

 いつの間にか――

 

 ブラックツリーという名の深淵へ、続いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ