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最強なのに表に出る気がない俺が、裏から世界を牛耳るギルドを作った話  作者: 月詠
第1章 エリシアの旅立ち

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第2話 少しは、やる気を出すか

正直に言えば――

私は、少しうんざりしていた。


(また、これ)


新大陸の夜。

あの“歪み”を感じ取った瞬間、嫌な予感しかしなかった。


この大陸には危険が多い。

魔獣、魔族、呪い、異常環境。

けれど――これは別枠だ。


「……ねえ悠人」


焚き火の向こうで、黒い外套の男が淡々と魔力を整えている。


「今度こそ、避ける選択肢はないの?」


「あるぞ」


即答。


「無視する」


(それが一番危険なんだけど)


次の瞬間、空間が軋んだ。


世界の法則が、ほんの一拍遅れて悲鳴を上げる。

それだけで、分かる。


――来た。


“カミ”。


魔力でも、存在感でもない。

もっと根源的な違和感。


(この世界のモノじゃない)


新大陸でも、遭遇例はほとんどない。

魔族ですら正体を知らず、

関わった者は例外なく――消える。


普通なら、思考より先に逃げる。


でも。


「……先客がいるな」


悠人は、そう言った。


視線の先。

焚き火のそばに、一人のエルフの女性。


魔力制御が異常に綺麗。

経験も、実力もある。


(でも――)


あの距離。

あの位置。


(間に合わない)


カミが、彼女を“見た”。


次の瞬間、右腕が消える。


血も、音も、抵抗もない。

存在だけが切り取られた。


「……っ」


私の喉が、僅かに詰まる。


(遅かった?)


「セナ」


悠人が、前に出た。


(はいはい、いつもの流れ)


基礎魔法。

防御。


誰もが最初に覚える、あの術式。


――それだけ。


衝撃が叩きつけられる。

地面が沈み、空気が弾ける。


二撃、三撃。


それでも、悠人は動かない。


(……おかしい)


この存在を受け止められる術式は、

理論上、存在しない。


なのに。


「……あいつ、遊んでやがるな」


悠人がため息まじりに言うと、少しだけ肩をすくめた。


「……少しは、やる気出すか」


悠人が、ぽつりと呟く。


「その台詞、何回目?」


私が呆れると、彼は少し考えてから言った。


「……四回目くらい?」


(覚えてない時点でアウト)


「その子頼む。腕治して、離脱」


私は舌打ちしつつ、エルフを抱えた。


近くで見ると、やはり只者じゃない。

エルフ王族――それも、かなり上位。


(……面倒なの拾った)


治癒魔法を流す。


普通なら“接続できない”はずの欠損部位が、

何事もなかったかのように再構築される。


彼女の目が、大きく見開かれた。


「……再生?」


(気づくよね、そりゃ)


「うるさい」


短く告げ、意識を落とす。


説明は、後でいい。



宿に戻ってからも、私は考えていた。


(エルフ王族)


(カミ)


(そして――悠人)


頭の奥で、

“触れてはいけない知識”の索引が、静かに軋む。


(……やっぱり、近い)


名前は出さない。

出してはいけない。


でも、確実に――


(この現象、あれに繋がってる)


コンコン。


悠人が部屋に入ってきた。


「起きてたか」


「そりゃね」


私は肘をつき、彼を見る。


「……で? あの子、どうする気?」


「放っておいたら死ぬ」


即答。


(判断、早すぎ)


「拾うの?」


「必要なら」


必要かどうかは、まだ分からない。

けれど――


(もう、半分決めてる顔)


ブラックツリーは、いつもこうして増えた。


枝は少ない。

一本一本が、異常。


そして。


(あなたが、一番異常)


それを、本人だけが自覚していない。


「ねえ悠人」


「ん?」


「今回も、表には出ないんでしょ」


「ああ」


迷いのない返事。


「面倒だからな」


世界が壊れかけても、

彼の理由は、いつもそれだけ。


眠るエルフを横目に、私は思う。


彼女はまだ知らない。


――もう引き返せない場所に来たことを。

ブラックツリーに拾われた時点で、それは確定している。

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