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最強なのに表に出る気がない俺が、裏から世界を牛耳るギルドを作った話  作者: 月詠
第2章 所有しない剣

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第16話 選ばれた者

 噴水跡の前に、男が立っていた。


 崩れた石畳の中心。

 かつて剣が突き立っていた場所で――

 男は、それを手にしている。


 抜かれている。

 完全に。


 封印されていたはずの剣は、今や男の右手に収まり、

 淡い光を帯びながら、静かに呼吸するように脈打っていた。


 街は、まだ騒いでいない。


 人々は気づいていない。

 いや――気づけていない。


 剣の周囲だけが、

 現実から一歩、ズレている。


「……」


 男は動かない。

 構えも取らない。

 ただ、噴水跡に立ち、剣を携えているだけだ。


 それなのに。


 空気が、張り詰めていた。


 ――そこに、悠人が降り立つ。


 屋根から地面へ。

 音もなく着地し、男と剣を正面から見据えた。


「やっぱり、選んだか」


 低く呟く。


 男が、初めて悠人を見る。


 年齢は二十代半ば。

 兵士でも、冒険者でもない。

 だが、視線は澄んでいた。


 迷いも、怯えもない。


 ただ、確信だけがある。


「君が……否定した人間か」


 男が言った。


 剣が、わずかに震える。

 だが、声は発しない。


 悠人は一歩前に出る。


「そうだ」

「そして、忠告しに来た」


 男は眉を動かす。


「忠告?」


「その剣は、持つべきじゃない」


 即答だった。


 周囲の空気が、わずかに歪む。

 剣が反応している。


 男は、笑った。


「選ばれたのに?」


「選ばれたからだ」


 悠人は、視線を剣から外さない。


「それは、力を与える代わりに」

「思考を縛る」


 男は剣を見下ろし、

 それから、再び悠人を見た。


「俺は、答えを探してるだけだ」


「何の?」


「進む価値があるかどうかを」


 ――空気が、凍る。


 剣が、強く脈動した。


 男の足元から、

 細かな亀裂が一気に広がる。


「……やっぱりな」


 悠人は、息を吐いた。


「君は、剣に近い」

「だから、選ばれた」


 男は剣を構える。


 初めて、明確な敵意が現れた。


「否定される理由はない」

「力があるなら、進めばいい」

「それが――正しい」


「違う」


 悠人も、一歩踏み出す。


 魔力が、静かに解放される。

 だが、剣は抜かない。


「力があるから進むんじゃない」

「進む理由があるから、力を使う」


 剣が、男の手の中で鳴った。


 喜びにも、怒りにも似た震え。


「選別は必要だ」


 男の声が、低くなる。


「迷い続ける世界は、停滞する」

「なら、誰かが決めるしかない」


「それを“誰か”に任せる時点で、終わりだ」


 悠人は、真っ直ぐに言い切る。


「世界は、選ばれない側も含めて回ってる」

「切り捨てていい命なんて、ない」


 一瞬。


 男の表情に、

 わずかな揺らぎが走った。


 だが、剣がそれを許さない。


 魔力が、爆発的に膨張する。


「――来る!」


 エリシアの声が、遠くで響く。


 次の瞬間。


 剣が、振るわれた。


 光の斬撃が、一直線に悠人へ迫る。


 悠人は、避けない。


 踏み込み、

 最小限の動きで――受け流す。


 衝撃が、広場を揺らす。


 石畳が、砕け散った。


「……止めるつもりはないんだな」


「止まらない」


 男は、剣を握り直す。


「俺は、選ばれた」

「だから、進む」


 悠人は、静かに構えを取った。


「なら――」


 視線が、正面から交わる。


「ここで止める」


 魔力が、ぶつかり合う。


 剣と、人。

 思想と、思想。


 戦いは、

 まだ始まったばかりだった。


 ――決着は、次の一撃の先にある。


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