表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強なのに表に出る気がない俺が、裏から世界を牛耳るギルドを作った話  作者: 月詠
第2章 所有しない剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/32

第15話 歪みの兆し

 異変は、音もなく始まった。


 朝のセントラルは、いつもと変わらない。

 商人は店を開け、子どもたちは広場を駆け回る。


 ――誰一人として、気づいていなかった。


 石畳の、ほんのわずかな歪みに。


 最初に違和感を覚えたのは、広場の端で露店を出していた老人だった。

 荷台の脚が、微かに沈んだのだ。


「……ん?」


 叩いても、割れてはいない。

 だが、石の下が“柔らかい”。


 まるで、大地そのものが呼吸しているような感触だった。



 一方、剣は沈黙している。


 封じられたまま、石畳に突き立ち、

 意志も、魔力も、深く奥へと押し込められている。


 ――少なくとも、そう見えていた。


(……違う)


 剣の内側で、何かが“揺れている”。


 理解できないまま否定された記憶。

 選ばれなかったという事実。


 それらが、答えを求めて反芻されていた。


『なぜ……』


 声にならない疑問。


『基準は、満たしていた』

『進める価値は、証明されていたはずだ』


 それでも、拒まれた。


 否定されたのは、力ではない。

 思想だった。


(……知る必要がある)


 剣は、結論に至らない。

 だが、“止まる”という選択もできなかった。


 理解できないなら、

 理解しに行くしかない。


 封印の奥で、

 意志が、静かに回転を始める。



 その頃、街の別の場所では。


「……空気が、重いな」


 巡回中の兵士が、足を止めた。


 理由は分からない。

 ただ、胸の奥がざわつく。


 魔物の気配でもない。

 魔法の残滓でもない。


 なのに、

 街全体が“何かを待っている”。


「気のせいか……」


 そう呟いて、歩き出した瞬間。


 遠くで、乾いた音がした。


 ――パキ、と。


 振り返ると、

 広場へ続く石畳に、細い亀裂が走っている。


 ほんの一筋。

 誰も気に留めない程度の、異変。


 だが、それは確かに――

 封印の外側に現れた、最初の兆候だった。



 拠点の屋上。


 悠人は、街を見下ろしていた。


 視線は、広場の一点に向けられている。

 まだ騒ぎはない。

 だが――


「……始まったな」


 隣で、エリシアが息を飲む。


「気づいたの?」


「ああ」


 短く答える。


「剣が、考え始めてる」


「考える……?」


「否定された理由を、だ」


 エリシアは、言葉を失った。


 封じたはずの存在が、

 なお“答え”を求めている。


「それって……」


「完全覚醒の前兆だ」


 悠人は、視線を逸らさない。


「封印は、破られてない」

「でも、歪み始めてる」


 世界はまだ平穏だ。

 誰も剣を抜いていない。

 誰も戦っていない。


 ――それでも。


 静かに、

 確実に、

 歯車は噛み合い始めていた。


 選ばれなかった剣と、

 これから“選ばれる”誰かのために。


 嵐は、まだ姿を見せない。


 だが、

 その中心は――もう、街の中にある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ