2章第24話:『これからのこと』
戦闘でボロボロになった二人がそれぞれ隣に座り合う。
二人の間に静寂が流れる。
その静寂を先に壊したのはAだった。
「一夏太、なんで両親を殺したんだ」
責めるわけではなく純粋な疑問として一夏太に問いかけた。
「そうだな、最初は俺を虐めてたやつらを殺して帰った後に家に戻ったら服に血が少し付いてたんだ、それにお母さんが気づいてどうしたの?って聞いてきたんだ」
「ああ、それで?」
「うちのお母さんさ、過保護だからすごい心配して何があったか詳しく聞いてきたんだよ。それがなんか癪に触っちゃって思わず能力が発動しちゃったんだ」
「……そうか」
「それでお母さんを殺しちゃった事でパニクっちゃって上から降りてきたお父さんにも能力で……」
一夏太が泣きながら話す。
「そうか、……そうか。悔いているんだろ?」
「ああ、だから俺は世界を良くしないと、この力を人のために使わないとって……!」
「ああ、そうだな」
Aが一夏太の背中をさすりながら話を聞く。
「その後はどうしたんだ」
「その後は成神が家に来てもうすぐダークナイツがここに来るって言うからAが仕掛けたGPSを家のコートにつけて廃ビルに逃げた」
「そうか、じゃあ一回立ってくれ」
「……?わかった」
「一夏太、歯ぁ食いしばれよ」
Aが拳に息を吹きかけて思いっきり一夏太を殴る。
「ぐぉぉ、がぁ!」
続けざまに二発目を顔にぶち込む。
「え………?」
一夏太が困惑した顔でAを見る。
「今のは俺がお前が両親を殺したことを赦すための拳だ」
「お前が……?」
「ああ、そうだ。これは俺がお前を赦すための拳だ。お前が両親に赦されるための拳じゃない、お前が両親に行った過ちはこんな拳で赦されるものではねぇんだよ」
「そうだよな、わかってる。こんなことで赦されようとなんて思ってない、思っちゃいけない。ならA、俺はどうすればいいんだ……?教えてくれ」
その言葉にAが再度Aが一夏太を殴る。
「うぇ!いってぇぇ、今のは何の拳?」
「いや、なんとなく。なんかイラついた」
「何それ………」
一夏太が少し呆れたような顔をする。
それを無視してAが喋り出す。
「一夏太、俺は最初お前が宮國で事件を起こした犯人ってわかった時に殺そうと思った、でも殺すだけが罪の償いではないってある人に教えてもらったんだ」
「ああ」
「それで俺はお前をダークナイツに入れようと思った、人を殺した何倍も人を助けさせれば償いになると思ったんだ」
「そうか、なら俺をダークナイツに……」
「でも俺は今お前をダークナイツに入れる気はない」
「は?いや、え?どういう、じゃあ俺は」
Aの言葉に一夏太が困惑する。
「お前をダークナイツに入れても変わらないと思ったんだ」
「変わらない?」
「ああ、ダークナイツに入ればそのお前の罪の象徴とも言える能力を使うことになる。それに確かに人は救える、でもその能力でお前はまた人を助けるために人を殺すことになるんだ」
「そう、なるな」
「それじゃお前の罪は償われないと思ったんだ、それにお前だって救われないんだ。そんな方法じゃ」
「だったら尚更どうすれば」
一夏太なAに問いかける。
「漫画を描くんだよ」
「……は?まん、が?」
「そう、漫画だよ」
「なんで、俺が漫画を」
「お前が立派な漫画家になって人をたくさん笑顔にしろ、そうすればたぶんお前の両親は赦してくれるんじゃないか?」
その言葉に一夏太が感情的に反論する。
「ば、馬鹿なんじゃないか!?そんなことで俺の罪が、お母さん達が赦してくれるわけないだろ!」
「人を救う方法は幾らでもある、お前にはダークナイツに入るより漫画を描いて人を救う方が向いてるよ」
「漫画で人を救うなんて…」
「できないか?お前は漫画に救われたんじゃないのか?小さい頃に虐められてた時に漫画が心の救いであったからお前は人を救えるような漫画家になろうとずっと努力してたんじゃないのか?」
「…そうだよ、でも俺に才能なんて」
「才能がないから諦めるのか?また罪から逃げようとする気かよ」
「にげるなんて!…でも俺に才能なんてない」
「誰かがお前に才能ないなんて言った?どうせ杉田とか言うやつに言われただけだろ」
「ああ、だから俺は漫画の才能なんてないんだ!」
「そいつはちゃんとお前の漫画を見たか?見てないだろ、ただお前は怖がってるだけだ。自信を持つんだよ」
「自信を持つなんて俺には無理だ。……そうだよ、俺は怖いんだ!お前みたいに強くないんだよ!」
「だったら!」
Aが一夏太の襟元を掴んで立ち上がらせる。
「そんなぐだぐだ言い訳いってねえで漫画描けよ!お前は漫画描いて描いて描きまくって自信持てる作品にすればいいだろ!」
「そんな簡単な話じゃ!」
「簡単だわ!世界を変えようとしてたくせにそんなこともできねーのか!本当に世界変える気あったのかよ!」
「あー、もう!こっちの苦労は知らないで何好き勝手言ってんだよ!俺だって考えたんだよ!」
「考えたくせに面白い漫画を作ることもできねーのか!」
「はぁ!?作れるわ、作れるにきまってんだろ!舐めんなよ!」
思わず一夏太が売り言葉に買い言葉で言い返す。
「……自信あるじゃねえか、お前は本当は自分の漫画を面白くないなんて考えてないだろ。それにな、俺だってお前の漫画をつまらないなんて思ったことねーよ」
「いや、でも…………あー、もうわかったよ!描けばいいんだろ、描けば!」
「そうだよ、やっとわかったか?」
熱くなりすぎて二人は落ち着くために再度座った。
「でも、これでいいのか?本当に」
「そんなの俺にはわからん、でも俺はお前が世界変えるとかダークナイツ入るよりは漫画家になって人を笑顔にする方がいいと思った」
「じゃあこれで正解なんてわからないじゃないか」
「それはお前が頑張ってこの選択が正解だったと胸張って言えるようになればいい、たぶんそれでいいんじゃないか?俺は警察でも裁判官でもなくてダークナイツだからな、普通の償いなんて知らん」
「ははっ、そうか。まあ、そう、だな。頑張って償うよ、俺。だから前みたいに応援してくれよ、A」
一夏太が立ち上がり手を伸ばす。
「もちろんだよ、一夏太」
Aも立ち上がり一夏太の手を掴む。
そうして二人は手と手を合わせて握手を交わした。




