アルスの日記 バルアード
廃材置き場で出会った獣人のヴァルド
この人と一緒に旅に出る。いつも偉そう
なんだかんだ優しい
僕が生まれた国 バルアード
いつも煙くさい。けど僕はこの匂いが嫌いじゃない
バルアードの朝
煙で太陽は見えないけど確かにそこにある。
僕の知らない世界が
なんだかすごいことになった。
あのときの自分、
今思うとすごいことした気がする。
普通は逃げるよね。
先生たちもあんなに獣人のこと悪く言うのに。
それから剣を探しに工場へ行って、
あんな風に走れるとは思わなかった。
片手で僕を抱えて、もう片手で大剣を担いで
夜の街をまっすぐ走っていった。
正直、怖かったけど。
でも同じくらい、胸が熱くなった。
あのときから、なんか変。
ヴァルドが外の国の話をした時も、
胸が熱くなった。
“見たい”って気持ちが、自分の中にちゃんとあるのがわかった。
僕は昨日から旅に出た。
灰の国だけじゃない世界を見に。
知らない風の匂いを嗅ぎに。
知らない音を聞きに。
怖くないわけじゃないけど、
ヴァルドがいるから、大丈夫な気がする。
でもいつか僕もヴァルドを助けられるくらい強くなりたい。
歯車しか知らなかったこの手で、
もっと色々なものに触れて、作って、覚えて、
いつか帰ってきたい。
叔父さんの家の窓に、あの歯車を置いたままで。
今日から、旅が始まる。
――アルス




