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第3章 似た匂い、異なる温度、血と鉄と
アルスは息を切らせながら、男の体を引きずって家に着く。
鍛冶の音も止まった家々。
微かな風が鉄の粉を運び、灯りの消えた窓をすり抜けていく。
「……叔父さん、寝てるな。」
扉をそっと開け、獣人を作業机の上に横たえた。
手が真っ赤に染まっている。
水を汲み、布で血を拭う。
「……ひどい傷だ。」
皮膚の下で筋肉が切れている。
傷口からは鉄粉がこびりついた血が滲んでいた。
アルトは震える指先で包帯を巻く。
布を縛るたび、男の体が微かに動く。
「……勝手にしろ。」
アルスは驚いて顔を上げた。
男がわずかに目を開けていた。
「……起きたんだ。」
声は低く、まだ息が荒い。
「なぜ助けた」
少し考えた後
「助けない理由がないよ」
男は目を閉じる。
「そうか」
一瞬、男の口元がわずかに動いた。
それが笑いなのか痛みなのか、アルスにはわからなかった。
獣人が眠りについた後、アルスは灯りを落とした




