25/28
アルスの日記 ルグーナ
人の数も、匂いも、声も全部が前に押し寄せてくる。
建物の張り出し方が無茶で、落ちそうなのになぜかちゃんと形を保ってる。
こういう国は歯車じゃなくて“人間の熱”で回ってるんだね。
壁が割れてて、屋根が残ってるだけの家というより小屋。
バルアードなら、こういう家はとっくに資材として解体されてる気がする。
でも――ここは残っている。
抱き合ってる背中が小さすぎて、胸の奥が痛くなった。
あの大人達より3番たちの方ががずっと強い。
せめて、この絵だけは“立ち向かった”って証拠にしておきたい。
ヴァルドは戦う前から姿勢が変わらない。
力を誇らないし、見せようともしない。
あの背中は祭りの中でも一人だけ“別の場所”に立っている気がした。
ただ、人が多くて、声が多くて、よく笑う国だった。
市場は朝からうるさくて、誰かが怒鳴って、誰かが笑って、
でもそれが嫌じゃなかった。
灰の国みたいに仕事の音だけじゃなかった。
急いでるから今日は短め。
――アルス




