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軍神幼女メアリー~軍神に祭り上げられたら本当に公式軍神になってしまったメアリーちゃんなの~!

作者: 山田 勝

「「「軍神メアリー様!」」」


「メアリー様、さあ、次の策をお授け下さい!」


「みなしゃん。落ち着くの~!」



 ・・・ここは領都の騎士団の作戦室。

『ねーよ』と言ったらこの中年の騎士団長デブネリさんはどんな顔をするだろう。

 小太りの人の良さそうな親父ではあるが目が血走っている。



 私はメアリー・メリング6歳である。

 可愛い盛りの幼女だ。


 軍神に祭り上げられた。




 ☆☆☆回想


 私は私生児である。領主の愛人の娘だ。

 お母様が亡くなり。お屋敷に引き取られた。

 扱いは養女だ。


『まあ、顔は可愛いから政略結婚に使おう。最低限の教養はつけておけ。家門を名乗ることは許してやろう』


 とお父様は言ったが、愛人を作る男が言いそうなことだ。

 好きにはなれない。が、幼女では独りで食べて生きていけない。

 我慢だ。全く幼女は辛いぜ。


 お義母様も兄姉たちも冷たい目で見る。


『メアリーなの~、よろしく~お願いしますなの~』


 シーンである。


 だが、すぐに戦争になった。

 こんな田舎の我が領地まで軍がやってきた。



 お父様は。


『ワシは王都に報告し援軍を連れてくる。それまで如何なる犠牲を払っても死守せよ!』


 と家族をつれて逃げた。

 その家族に私はいなかったのだ。


 さて、領都を囲まれて攻城戦が始まった。領都は城壁でグルと囲まれている。

 騎士団も千人、民兵もその倍ぐらいいる。

 しかし、少しも安心出来ない。


 我が王国は100年以上戦争をしていない国であり。更に田舎騎士団である。

 せいぜいコソ泥が相手であった。


 火矢が飛んできたら大騒ぎになった。


『消せ!』

『騎士団長!水をかけても火が消えません!更に燃え広がります!』

『何だって、魔道の火か?』



 わたしゃ。知っているよ。前世はOLから寿退社をした主婦である。

 これは油の火だ。


 天ぷら鍋に火がついたら水をかけてはいけない。更に燃え広がる。

 だから私は子供用のドロ遊びのバケツに泥水を入れて現場に急行した。



『お嬢様、邪魔ですから引っ込んで下さい!』


『みんな、なってないの~、火矢はこうやって消すの~』


 と泥水をかけたら火矢は消えた。


『皆!泥水だ!』



 それから、攻防戦で投石が足りなくなった。

『騎士団長しゃん。お屋敷を解体するの~!』

『しかし、旦那様のお気に入りの白亜のお屋敷ですよ』


『お父様の命令は如何なる犠牲を払っても死守せよなの~』



 とやったら石が足りて敵は城壁に近づくのを断念した。


 それからワッショイ!ワッショイ!よ。






 ・・・・・・・・・・・・・



 さて、どうする?私は前世は自衛官でも歴史家でもない。

 戦争なんて分からない。

 一応、領主の娘らしく質問をしてみるか?



「民は無事なの~?」


「はい、略奪はされていません」


 何か分からないが手強そうだな。


 しかし、騎士道精神に則っているのなら話会いは通じるか?



「城壁に行くの~、皆はついてこないでなの~!」



 降伏をすると言うと皆は反対するだろう。

「メアリー様が動き出した!」

「軍神メアリー様の出撃だ!」


 ほら、下手に希望を与えたから降伏の二文字が消えている。


 見送られて1人城壁の上に立つ。



【お話合いをしたいの~、代表者しゃんは出てきてなの~】


 と大声と身振り手振りで呼びかけた。





 ☆☆☆攻城側陣営



「ザール騎士団長殿!城壁の上に幼女が出てきて・・・何か叫んでお遊戯をしています!」



「ほお・・・そう来たか」

「何なんですかね」


「馬鹿、あれはダキタ攻防戦の故事だ」



 ダキア城を攻めたとき。攻防数ヶ月、城は窮乏しているかと思われたが、着飾ったダキア夫人が城壁上で陽気なダンスを披露した。つまり余裕と示したのだ。



 最初は馬鹿にしていたが、段々と兵が集まり夫人のダンスを見物するようになった。

 それで時間を稼ぎ。援軍が到着してダキア城は落城を免れた。


 援軍が到着したときに夫人は息が切れた。

 正に婦人の鏡と歌われたダキア夫人を真似るか?


 援軍は来ない。何を考えている。しかし・・その時の敵軍も度胸を示すために矢の射程内に丸腰で見物に現れ夫人の度胸に応えたと言うぞ。


 これを仕掛けられたら武家の男子として出ていくしかない。


「なら、応えなければならない。我が1人で行く。敷物を用意せよ。我が殺されたららお前が指揮を執れ」

「了解・・・であります」




 ☆☆☆


 一生懸命に訴えていたら敵陣から1人やってきた。


 そして、城壁の百メートル前でシートを敷いて座った。

 話を聞いてくれるのか?


 私は一生懸命に話しかけた。


【お話合いをしたいの~!】


 と大きく身振り手振りで話しかけた。



「ほお、幼女のお遊戯、中々良いものだのう!」

 パチパチパチ!


 と拍手をしてやがる。



 数時間話しかけた同じ反応だ。


 やる気あるのか?


 憤慨して城壁を降りたら、デブネリが感動している。


「ダキア攻防戦の故事ですね」


「違うの~」


「敵もあっぱれでした。弓の射程内でメアリー様のお遊戯を見物するとは・・・これぞ戦場の華でございますね」


 話聞かないな。こいつ。


 しかし、地道の話会いこそが大事だ。



 次の日もやったら、向こうは人数が多くなって、ワインを飲み始めた。


「フヌー!何なの~」


 ふざけているのか?こっちは穏便な降伏をしたいのに・・


「メアリー様、私達も参加させて下さいませ!」

「はにゃ、誰でしゅか?」


「「「私達はメリング領令嬢防衛隊です」」」



 それから領内の上流階級がダンスを披露始めた。


 拍手喝采だ。


 ここ戦場だよな。


 そう言えば、第一次世界大戦の時は、クリスマス休戦が自然に発生したという。

 日露戦争の時も休戦ディがあって、旅順要塞攻防戦で、日ロ両兵が仲良く遺体の収容をしたとか。


 現在ではないな。

 昔に行くほど騎士道精神が生きていたのか?


 そうメアリー思うをしていたら、


 段々エスカレートしてきた。






 ☆一月後


「メアリー様に教えて頂いたチアダンスというもの好評ですわ」

「良かったの~」


 令嬢たちは婚約者と一緒になってアクロバットなダンスを城壁で披露するようになった。


 敵軍もお返しとばかりに、組み体操を始めた。



 ピピピ!と笛をならしてピラミットを作っている。


【組み体操!三角崩し!】


 ピラミットみたいな組み体操か?


 それに近隣住民が見物に訪れて小さな市が出来上がり商人は何となく入ってくるようになった。


 丁度良い。食料を買おう。


 しかし、お金はない。お父様が金目の物を持ちだした。お金はない。しかも、商人は現金、硬貨の支払い一択を要求する。


「お支払いは現金でお願いします」


「なら、家宝を売るの~!」


 さすがに、騎士団長や執事たちは止めるが、


「お父様は『如何なる犠牲を払っても死守せよ』と言ったの~」


 で問題なく宝物庫をあけた。


 と言っても古くさい鎧や聖剣ばかりだ。重くて換金しにくいから置いていったのか。


 商人を案内させて見せた。


「ほお・・・武具は高騰していますが、さすがにこれは古すぎます。アンティークとしての価値は分かりかねます」



「この聖剣を見るの~」


 これは資格のある者でしか鞘から剣を抜けないとの言い伝えである。

 お父様は鞘から抜けなくてふてくされて放置していたようだ。


 あれ、簡単に鞘から抜けた。


 そしたら、ピカッと刀身が光った。


 重い物のはずであるが、幼女の私でも片手で持てた。

 すると、商人は片膝をつき。恐縮した。


「な、何と、メアリー様は勇者でございましたか?」


「違うの~、おじさんも持つの~」


 と言ったが、おじさんだとズッシリ重くなり光らなくなる。


 光る剣なんて、夜は敵に見つかりやすくならないか?

 売れないな~


 と思ったが、食料をどっさり持って来てくれた。


「お代は結構でございます」

「そうはいかないの~」

「未来への投資でございます」

「未来の子供に払わせられないの~、王都にいるお父様にツケるの~!」

「畏まりました」


 噂を聞きつけ商人たちがやってきた。

 生活物資を買い付け。全てお父様にツケた。


 領の一年分くらいの税収くらいか?

 お父様なら大丈夫だろう。

 それに命令通りだ。『如何なる犠牲を払っても死守せよ』だ。


 商人から情報も仕入れた。


 全ての物資が王都方面に流れている。

 買っているのは敵軍だ。


 ということは王都攻防戦が始まり。

 戦争の終結は近く。

 停戦命令の使者がくるな。


 それまでダンス合戦をしていればいいか。


 と思って、私も城壁に登って、剣で包丁のたたき売りみたいな事をした。



【さあ、さあ、淑女と紳士のみなしゃま。何でも切れる剣なの~!】


 と台の上に木材をおいて、キャベツの千切りのように切った。

 これは元主婦なのでお手の物だ。


【聖剣なの~!悪運を裁ち切り良運を招くの~!さあ、さあ、我が領は聖剣の加護があるの~!我が領自慢の鍛冶職人が作った包丁を買うの~!】



 戦争が終われば武器職人のバブルははじける。

 だから、その後の事を考えて宣伝を行ったが、これは不評のようだった。

 敵軍はシーンとしている。



 ☆


「ザール隊長殿・・・あれは勇者ではございませんか?」

「あの幼女は青く光っております」

「我らは勇者に弓を引く賊軍か?」



「・・・・とにかく女王陛下に報告だ!」




 ・・・・・・・・・・・・



 それからシーンとなった。

 戦争の終わりは近い。


 後は王都から停戦命令がくればはれてお役御免だ。

 普通の幼女に戻れる。


 と思ったら、


 大軍がやってきた。

 敵の本隊のようだ。

 これには驚いた。


 こんな田舎の伯爵領を攻めて何の得があるのか?

 停戦命令の使者ではないのか?



「ついに決戦ですね!こちらは勇者メアリー様がいらっしゃる!」

「軍神メアリー様!幼女用の鎧は作りました!」


「はにゃ!」


 作るなよ!と憤慨したが。


「おお、地団駄を踏んで、メアリー様はやる気だ!」

「なの~!」






 ☆☆☆攻城側陣営



「・・・以上、ダキア攻城戦の故事を持ち出したと思いこのような事態になりました。商人の侵入を許したのも民を傷つけるなとのご命令通りにいたしたまで。全ての責任はこのザールにございます」


「ザールよ。妾は正直に状況を話せと申したのだ。科などあるはずがなかろう」

「女王陛下・・」



 さて、面妖な。探していた聖剣がこんな辺鄙な伯爵領にあったとは・・・これで法王庁と対等に話ができる。

 しかも幼女が使いこなしているとな。


 天命か?それとも破局の始りか?


「面白い。妾は1人で幼女に会いに行く」


「それはなりません!私は王配です!女王陛下と共に」

「ダメだ。これで死んだらそれまでのこと。妾は死んだら軍をまとめて国に帰れ」

「・・・御意にございます」



 妾は夫を説得して幼女に会いに行った。

 そこには・・クククッ、笑ってしまった。鎧を着た幼女がいた。



 ・・・・・・・・・・・



「メアリーなの~!お姉さんは誰でしゅか?」

「妾はガーリー王国のクラウディアよ。少し散策をしながら話そう」



 城壁の上を歩きながら幼女と話をした。



「王国で陥落をしていない領地はこのメリング領だけよ」

「はにゃ?」


「まさか、武家の心をついた作戦を思い付くとはね」

「偶然なの~。それよりも停戦したいの~」


「フ、貴殿の父上、メリング卿は何故か借金が出来たと言っていたぞ?これもメアリーの策略か?」

「ち、違うの~、命令をきちんと守っただけなの~『如何なる犠牲を払っても死守せよ』とお父様は言ったの~!」


「アハハハハハハ!」


 妾は思わず笑った。お互い父で苦労しているな。

 気に入った。



「そなたは勇者だ。我が義妹になれ、そしたら領民の命は保障する」


「それだけではダメなの~!領民の尊厳も守って欲しいの~」


「・・・承知した。これで和議成立だな」



 ・・・・フフフフ、妾は幼女に背を向けている。メアリーは聖剣を持っているが、斬りかかろうとしない。

 これは信頼が出来る幼女だ。





 ☆メアリー視点。


「やったの~、これで次の就職先が決まったの~」


「「「メアリー様!」」」


「みなしゃま、お世話になりましたなの~!」


 チョコンと頭を下げて


 皆に見送られて女王陛下の義妹になった。

 これで人生は安泰か?


 武器職人は生活用品を作り始め。


 包丁売りを始めた。

 これで良い。



 お父様とお義母様と兄姉たちは、石を取るために解体された屋敷を見て呆然としたそうだ。デブネリさんが説明してくれたそうだ。お手紙に詳細が書かれていた。



「はあ、何故だ!」


「だって、『如何なる犠牲を払っても死守せよ』とのメリング卿の命令でございます」


「ワシはどこに住めば良いのだ!」


「はあ、ここはメアリー様の化粧料になり。財産管理人が来ます。その下で働いて下さい。借金はお給金から三代先まで割賦で払うことになります。これぞメアリー様の策でございます」


「な、何だって!それじゃ、平民と同じ生活ではないか?」


「いえ、平民以下です。メリング卿は自ら犠牲を払って領地を死守しました。貴方には名誉があります」


「いらん!いらねえ!グスン、グスン」


 と泣き出したそうだ。




 私はほくほく顔で馬車に乗ったが、行き先が違う。ガーリー王国ではない。


「はにゃ、女王陛下、どこにいかれますの~」


「お義姉様と呼びなさい。法王庁よ。免罪符を乱発する法王庁を勇者メアリーが討伐するのよ」


「聞いてないの~!」

「あら、話していないわよ」



 と軍を進めて、いざ戦争になったら。

 法王庁についた国の半数が中立宣言をして。

 もう半数が正式にクラウディア側についた。


 道行く先の人々は口々に


「ゆ、勇者様だ」


 と言うが。

 私は何も変わっていないメアリーちゃんである。


「メアリーなの~!」


 元々は勇者が優先される世界だ。

 魔王軍との戦時には勇者が優先される。


 法王庁に近づくにつれ聖騎士団が出てきたが、これも聖剣を見せたら戦いを止めた。


 私は戦いが嫌なので、法王様に会見を懇願する。話会いで解決だ。


「欲しーの!欲しーの!無能で良いから清廉潔白な聖職者が欲しーの!グスン、グスン!」


「ヒィ、メアリー殿、聖剣を振り回さないで下さい!まさか・・・この話会いと称して・・ヒィ!命の方が大事だ!」



 と何故か法王様が交代になった。


 その後、私はガーリー王国で。



「何でも切れるの~!悪縁を絶つ切る聖剣なの~!」


 と記録官の前で聖剣を使ってのみじん切りを披露している。

 何でも軍神メアリーの攻城戦いの一場面として絵本デビューするそうだ。


「軍神メアリー様!」


 と人は言うが・・・ただのメアリーちゃんである。



最後までお読み頂き有難うございました。

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