第3話 新たな仲間と初めての試練
山間の村に、朝の光が差し込む。アルミナは今日も森で薬草を採取していた。
手際よく草を選び、袋に詰める。毎日少しずつだが、魔薬の調合も上達している実感があった。
「アルミナさん!」
遠くから声がする。見ると、ルードが手を振りながら駆けてきた。
「今日、村の医師の助手、ロザリアが君に会いたいって」
「ロザリア……? どんな人?」
「村の医療技術に詳しい人だってさ。君の魔薬と合わせて何か協力できるかもしれない」
しばらく歩くと、村の小さな診療所にたどり着く。扉を開けると、整った服装の女性が立っていた。
「あなたがアルミナさんね。私はロザリア。魔薬の話は聞いています」
アルミナは少し緊張しつつも、笑顔を返す。
「初めまして……魔薬について、少し教えてほしいです」
ロザリアは微笑み、調合の基礎から医学的な応用まで簡単に説明してくれた。
「魔薬は、ただの薬草ではなく、対象や症状に合わせて力を引き出すのがポイントです」
アルミナはその知識に目を輝かせる。異血の力と組み合わせれば、さらに応用できそうだ。
その日の午後、村の広場で突然の騒ぎが起こる。
「助けて!息子が森で毒にやられた!」
駆けつけると、若い男性が苦しんで倒れている。アルミナとロザリア、ルードの三人で協力し、応急処置と魔薬を調合する。
アルミナの異血の力が少しずつ薬に反応し、毒の影響を和らげる。
「……大丈夫……助かる……」
患者の顔に色が戻る。村人たちは歓声を上げ、三人は安堵の笑みを交わす。
治療が終わった後、ロザリアが小声でアルミナに話しかける。
「あなたの魔薬、普通の薬では考えられない力がある。異血……ですか?」
アルミナは頷く。
「はい、母方の古い血筋の力です。ただ、まだ完全には使いこなせません」
ロザリアは真剣な目で言う。
「一緒に研究できれば、もっと多くの命を救えるかもしれません」
その夜、アルミナは月明かりの下で考える。
「魔薬で人を救える……でも、この力を王国の人たちに知られたら、どうなるだろう……」
同時に、仲間が増えたことに胸が温かくなる。
ルード、ロザリア、そして村の人々――私は一人じゃない。
翌朝、森の奥で、アルミナは再び薬草を採取していた。すると、ひっそりとした茂みの奥から声が聞こえた。
「そこにいるのは……アルミナさんか?」
振り向くと、薄暗い影の中に、一人の女性が立っていた。長く黒い髪に、野性的な雰囲気をまとった女性――村出身の薬草使い、ティアだった。
「あなたが……追放令嬢か」
「はい、そうです。あなたは……?」
ティアは軽く笑った。
「村で薬草のことなら私に任せろ。これから、色々と試してみようじゃないか」
アルミナの心が少し躍る。新たな仲間との出会い――これから、もっと困難で、もっと希望に満ちた日々が始まる予感がした。