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03 -薬草採取のお手伝い

こんどるるわわ!!

 あれから、気づけば外は暗くなりかけていた。

ようやく落ち着いた私は、二人に謝罪して屋根裏部屋へ戻ってきていた。


 ベッドに腰かけ、今の状況を整理することにした。

まず、日本の東京、渋谷のとあるビルから組織の男と落下して死んだと思っていた。

しかし何故か私は、ヴェルシアン王国のモギナ村の近くにある森で倒れていたという話しだ。

サンリさんの話しでは、私は血だらけで傷もあったそうだけど、回復魔法で治してもらえていた。

状況からみても、私が異世界へ転生、あるいは転移?したことは間違いないようだ。


 そこで私はふと思った。

私がこうして生きているということは、もしかしてあの組織の男も一緒に転移されているのではないだろうか。

そう思って、先ほど私の近くに誰かいなかったか聞いてみたけど、サンリさんは見なかったと言っていた。

もしかしてソフィアなら、何か知っているかもしれない。


 私はベッドに横になると、急な眠気がやってきた。

恐らく泣きつかれてしまったんだろう。


「久しぶりに、あんなに泣いたなぁ」


 一人小さくぼやき、目を閉じると、私の意識はすぐに眠りについた。




そして翌朝。

目を覚ますと、視線を感じてそちらを振り向く。

するとそこには、にこにこした顔でソフィアが私を見ていた。


「あ、お姉ちゃんおはよう!昨日はよく眠れた?」

「おはよう、ソフィア。起こしに来てくれたの?」

「うんっ。お母さんが、昨日お姉ちゃん晩御飯食べずに寝ちゃってたから、お腹空いてるだろうって」


 そういえば、昨日は状況把握をしていたらそのまま寝ちゃったんだっけ。

それにしても、私の感も鈍ったのかな。組織にいた頃は、寝ている時でも気配を感じてすぐに目を覚ましていたのに。

ここは安心だと、無意識に油断しちゃっているのかな。


「そっか、ありがとう」


 そう言って、私はベッドから起き上がり、ソフィアと一緒に1階へ下りた。

食堂へ入ると、サンリさんがちょうど、カウンターにパンと目玉焼きを置いているところだった。


「サンリさん、おはようございます」

「あらルナちゃん。おはよう。朝ごはんできたから、食べてね」

「ありがとうございます、いただきます」


 私はカウンターに座ると、ソフィアも隣に座る。

なんだかソフィアを見ていると、新しく妹ができたみたい。


 カウンターに置かれた朝食を見ると、こんがり焼けたパンに、目玉焼きとベーコンにウィンナー。

海外の朝食って感じがする。任務で数回行ったくらいしかないけど。


 私はパンを取り、匂いを嗅ぐととてもいい匂いがした。

一口サイズにちぎり、食べてみると、とても美味しかった。


「そういえばお姉ちゃんの名前、ルナって言うんだね」


 そうだった。忘れていたけど、ソフィアにはまだ名前を教えてない。

恐らく、サンリさんがさっき私を呼んだことで知ったのかな。


「自己紹介がまだだってね。そうだよ、私の名前は月渚っていうんだ」

「へぇ~!かわいい名前だね!」

「あ、ありがとう」


 ソフィアは屈託のない笑顔で言う。

名前をそんなに褒められたことがないので、思わず照れてしまった。

ソフィアって名前も、私からしたら十分かわいいと思うんだけど。


「ルナちゃん。ソフィアはね、お姉ちゃんができたみたいで嬉しいのよ。昨日もお店の手伝いが終わったあと、お姉ちゃんとお喋りしたいって言ってたけど、ルナちゃん疲れて寝てたでしょ?起こすわけにもいかないからってソフィアしょんぼりしてたのよ」

「お、お母さん!それは言っちゃダメ!」


 サンリさんの言葉に、ソフィアは頬を赤く染めて怒っている。

その様子がとても可愛くて、私は思わず口許が緩む。


「ごめんね。昨日は疲れちゃっててすぐ寝ちゃってたんだ」

「ううん、いいの。お姉ちゃん、怪我もしていたし、しょうがないよ。これからいっぱいお喋りしようね!」

「そうだね。今のところ、私に行く当てもないし、しばらくはお世話になるつもりだよ」

「本当?やったー!」


 ソフィアは相当嬉しかったのか、両手を広げて喜ぶ。

そこまで喜んでもらえると、やっぱり嬉しいものだね。

そうだ、サンリさんにお店手伝ってもいいか聞いてみよう。

なにもせず、お世話になるわけにもいかないし。


「サンリさん。その、もしよかったらですが、お店のお手伝いしてもいいですか?このまま何もせずお世話になるわけにはいかないですから」

「そんなの気にしなくてもいいのに。うちの店、大体くるのは村の住人だし、そんなに忙しくなることはないのよ」

「でも、怪我の治療までしてくれて、衣食住までお世話になっているのに何もしないわけには・・・」

「ん~そうねぇ・・・。あ、だったらルナちゃん。薬草取り行ってみる?」

「薬草取り、ですか?」

「そうよ。薬草を取ってきてほしいの。森の中なんだけど、そんな遠くない場所に薬草が生えているの」

「薬草ですか。私薬草とか詳しくないからできるかな」


 異世界の薬草を見たこともない私にとっては、さすがに難しい。

記憶力はいい方だし、見本でも見せてもらえれば大丈夫かな?


「わたしがお手伝いする!」


 右腕を勢いよくあげ、ソフィアが言う。


「そうね、ソフィアも薬草採取しているから大丈夫でしょ。ルナちゃん、ソフィアを連れて行ってみてくれる?森の中と言っても、奥に入らなければ危険はないからね」

「・・・わかりました。よろしくね、ソフィア」

「うんっ!」


 こうして、私はソフィアと一緒に、森の中へ薬草採取をすることになった。




 朝食を終え、さっそく私とソフィアはサンリさんの宿屋(サンドリーという名前らしい)から出て、森の入り口へと向かう。

森の入り口には、2人の槍を持った男性の村人がいた。

二人の男性は私とソフィアに気が付くと、


「おはようソフィアちゃん。今日も薬草採取かい?」

「うん!今日はお姉ちゃんと一緒なんだ~!」

「お姉ちゃん?ってことは、君が昨日ドルド隊長が言っていた、森で保護をした人かい?」


 男性の一人が私を見て、


「話しは聞いてるよ。大怪我をしてたそうだね。その様子だと、もう大丈夫なのかい?」


 一瞬怪しまれているのかと思ったけど、そうじゃなかったことに少しほっとする。


「はい、サンリさんと、この子のおかげで」


 ポン、と軽くソフィアの頭を撫でると、嬉しそうにソフィアは微笑む。


「そいつはよかった。森に入るのはいいが、奥まで行くんじゃないぞ。一応柵があるから大丈夫だとは思うがな。念のため気をつけて行ってきてくれ」

「うんっ!カイおじちゃん、ありがとう!」


 そう言って、ソフィアは男性に手を振り、私の手を握って森へと歩みだす。

この森の入り口も舗装されていて、よく人が出入りしているのが伺える。

二人のやり取りからしても、この森には危険がないのだろう。


「お姉ちゃん、こっちだよ」


 ソフィアに手を引かれ、薬草がよく取れる場所へ向かう。

数分もしないうちに、その場所にたどり着くと、ソフィアは薬草らしき草を取って私に見せてくる。


「これがミダクドソウ。お母さんに言われてた薬草だよ」


 聞いたこともない薬草の名前だけど、なんだかクローバーの葉っぱに似ている。

葉っぱの周りはギザギザになっているから、私がよく知るクローバーとはちょっと違うけど。

それから二人でミダクドソウを取っていると、昨日の夜に考えていたことをソフィアに聞いてみた。


「ねえソフィア、私が倒れていた場所って覚えてる?」

「うん、覚えてるよ。ここから近いから、行ってみる?」

「うん、お願い」


 ソフィアの案内で、私が倒れていたという場所へ向かう。

数分歩くと、


「ここにわたしが薬草採取してる時に、お姉ちゃんが倒れてるのを発見したんだ。最初はびっくりしたけど、すぐにお願いして、お姉ちゃんをお家に運んでもらったの」

「そうだったのね。ほんとに、助けてくれてありがとね」

「えへへ~」


 お礼と共に、ソフィアの頭を撫でる。

それから私は、自分が倒れていたという場所を調べてみけど、特になにかがあるわけではなかった。


「ソフィア、私が倒れている時、周りに誰か人を見たりしなかった?」

「ううん。わたしが見た時は、倒れてたお姉ちゃん以外はみてないよ」


 ということは、私の考えすぎか?

組織の男も私と同じように転移してきた可能性は本当にないのだろうか。

私は周りを見渡すが、奥には柵があるだけで、特に何かの気配を感じることはなかった。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「あ、ごめんね。なんでもないよ。それより、薬草はどれくらい必要なの?」

「二人で集めたから、もう十分だと思う。そろそろ戻る?」


 ソフィアに言われ、私たちはサンリさんのお店に戻ることにした。

この時、私はもう少し調べるべきだった。

そうすれば、柵の近くにある木の陰に、この世界とは違う服装をした男が隠れていることに気づくことができたのに。

波乱がありそう?

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