1 始まり
その昔、この世界に住む魔王の悪意を封印し、帝国を統一したものが現れた。
それは、この地に国を興し、自らをイガンデール王と名乗った。
王はまず、飢えた人々に食べ物を分け与え、次に清潔な衣服と職を与えた。
そして、彼らに畑を耕せ、水路を作らせた。
次第に発展したこの地は都市となり、国はさらに大きく成長した。
そこで王は、有能なものに爵位を与え、人々をまとめさせた。
平和になったこの地を見た王は満足し、人々に永久の安寧を約束した。
しかし、それに異を唱える者がいた。
当時、王から公爵位を授かっていた男であった。
名をイリル・ラグールといい、彼は人々にこう訴えた。
この国は狂っている。未だ、魔王の悪意は封印されておらず、魔物は我々を今か今かと狙っていると。
しかし、そんなはずはなかった。
辺りを見回しても魔物など一匹も見当たらなかった。
人々は考えた。この男は身の程知らずにも王に嫉妬し、謀反を企んでいるのだと。
そのとき、彼に神罰が下った。
彼の身は短命の呪いで侵され、それはその子にも受け継がれた。
彼が神の意志に逆らったと、人々は王に彼の処罰を求めた。
しかし王は、すでに罰は神が下してくださったと、彼から爵位を剝奪することはなかった。
これは、賢明な王によって成立したイガンデール帝国の歴史の一章である。